第百七十話 探索part②
予定外な事もあったし今日はこの辺にしといて戻ろうかな、おっとその前に一応釘を刺しておかないと。
「おい、もし見つかって捕まっても俺の事は話すなよ。出してやったんだからそれくらいはしろよ」
「おう、言うに決まってんだろ」
「‥‥‥言うなよっ!」
何なんだこいつ!? 偶然とはいえ出してやったのに恩を仇で返すような真似を‥‥人に感謝する心は無いのか。
憤る俺を無視してそいつはストレッチ中、何かやらかす気満々。
「これ壊せ」
そうやって差し出してきたのは俺の腕にも付いているよく分からない機械。
武器持ってんだから壊せんだろ?という事なのだろうがこちらにそこまでしてやる義理はない、して欲しいなら誠意を見せろという話。
「ふざけんな、何で俺がそんな事!」
「叫ぶぞ」
「やってみろよ、そしたらお前捕まって脱獄の罪でえらい目に合うぞ」
「おーーーい!!」
叫びやがった。
「止めろ止めろ、やめて下さい!」
慌てて口を押さえる。
「正気かっ!?」
「やれって言ったのはお前だろうが」
「分かった! じゃあそれは壊す、だから約束しろ。その装置を壊したらここで俺と会った事は忘れる、誰にも話さない。いいな?」
「あー分かった分かった」
こくりと頷いたのを確認して手についた装置を斬って落とした。
これでようやくこいつともおさらば‥‥‥。
「まあ嘘だけどな」
こいつ‥‥‥。
「ここまでしてやったのに感謝の言葉一言もよこさずふざけた事言いやがって。人の親切を裏切るような真似いい加減にしとかないと痛い目見るぞ」
「裏切る、これが? お前馬鹿か、裏切るってのは騙した相手を死に追いやって成り立つんだよ。こんなのはただの悪戯だろうが、これくらいの事でギャーギャー喚くなよ鬱陶しい」
「鬱陶しい‥‥‥はいはいそうですか、もう結構好きにしろ。お前なんかに構ってられるか、じゃあな」
どうせ何をしてやったって無意味、こいつの口に蓋はできない。だったら構うだけ時間の無駄だ。
こいつが捕まり全部喋ったとしても俺は牢の中で知らん振りをしておけば多少警備がきつくなるくらいで済むだろう、24時間監視されるんじゃないのなら大丈夫。
もう好きにさせよう。
「何言ってんだ、お前もついて来るんだよ」
「ふざけんな誰がお前なんかに!」
「俺たちの目的は同じだ、だったら足引っ張り合うより協力したほうが賢い選択だろ? 何探してるか知らないがお前も行きたいんだろう、北側に?」
「何でそれを!?」
「何でだろうな?」
クククと不適な笑みを浮かべている。まるでここに至るまでのこちらの動きを全て見ていたかの様。
そこで思い出した、こいつはまるで俺が現れることを知っていたかの様に牢の小窓の前で待機していた。
「お前の事だけじゃなく俺はここの構造にだって詳しい、何ならお前の探し物を手伝ってやってもいいんだぜ。どうする?」