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第百六十九話 探索part①

ただいま独房を抜け出し調査中。

独房に送られるまでの道に複製ミニ魔剣を落としまんまと脱獄、そして当初の目的通り聖剣を探して監獄内をさまよっている。

暫く歩いて抱いた感想はまるで廃墟、かつかつという自分の足音だけが生命の発する唯一の音の様に思える程に静寂に包まれている。

夜とはいえこんなに静かなものだろうか? 刑務所も監獄も入った事などないから分からないけどもうちょっと話し声やら寝息やら歯軋りの音やらの人が出す音があっても良い気がするのだが、それに看守だって見回りしたりしないのか? さっきから誰とも遭遇しないけど。

まあこういう場所は規則に厳しいだろうし就寝時間をきっちり守っているのだろう。扉も頑丈な鉄製で格子じゃないから音も漏れないし魔法的な仕掛けがあって抜け出す心配もないから看守も夜は寝ているのかもしれない。

少しだけ好奇心が湧いて通りかかった扉にある小窓から中の様子を伺うといかにもない男がベットに横たわっている。

ちゃんと生きてる者がいると分かって少し安心。



しかし調査を始めてみたは良いが広い、とにかく広い。

構造は中心に円形のだだっ広い空間があってそこから東に行けば東棟、西が西棟でどちらも一階二階三階吹き抜けで繋がった空間に牢がびっしりと並んでいる。

南に行けば運動場やら作業場、下、つまり地下に行けば独房、上が食堂、北は連れて行かれた闘技場みたいな場所以外はよく分からん。そして監獄の周りには高い高い塀が取り囲んでいる。

まだ行けてない場所もあるがまあ怪しいのは北だろうな。

囚人の目につく場所に良い物なんてあるはずない。

というわけで北側への扉の前付近に来たのだがここにはさすがに看守がいて警備が厳重、二人体制で常時見張っているらしく人が居なくなる瞬間が無い。

さてどうするか? いっそ力尽くでまかり通るか? いや、今はまだ情報が少な過ぎる。

強引に出るのならせめて目当ての物の場所が分かってからにすべきだろう。

だがどうやって情報を得れば良いのだろうか? ここ、食堂やら作業上やら運動場があるというのに入ってから一度も利用させて貰ってない。食事は牢まで持って来られて食べるようになっててそれ以外はずっと閉じ込められてる。

一日中狭い空間の中、気分転換も出来ない。だからだろうな、ヴァイスとかいう奴がやたら突っかかってきたのは。

こんなやり方をしていたらいつか暴動でも起きそうだ。


「今日はこのぐらいにしておくか」


取り敢えず見つからないであろう場所あちらこちらに魔剣を刺してきた、ショートカットをいくつも作成してこれでいつでも移動が出来る、成果としては十分。

本来いるべき独房へと戻り眠りに着く。


次の日の夜、とにかく情報が必要と判断して囚人の話を聞くことに。

方法は牢を回って小窓から中を覗き話が出来そうな相手を見つけ話しかける。ただかなり難航するだろう、捕まるような悪がただで情報をくれるとも思えない、かといって脱獄させてやるなんて事出来ない。つまり運良く何の見返りも求めず情報をくれる心優しい囚人に出会える事を祈るしかない。

そして一牢目、中の囚人は眠っている、起こしてブチ切れられても怖いので断念。

二牢目、眠っている、以下略。

三牢目、眠っている。

 ・

 ・

 ・

二十八牢目、寝てやがる。

 ・

 ・

 ・

 ・

四十二牢目、ちっ(舌打ち)

 ・

 ・

 ・

 ・

いやお前ら良い子かっ!

消灯時間守って眠りにつきやがって!

一日中牢の中でごろごろしてたから俺なんてまだまだ眠気なんてないのにお前らよく眠れるな!

仕方ない時間も時間だしあと最後一つ見て今日は終わりだな。

結局今日は何の成果もなさそうだ。

中を覗く、するとめちゃくちゃ人相の悪い奴と目があってしまった。


「おいテメェ、何やってんだ?」


「み、見回りだ‥‥」


看守のふりをして誤魔化す。


「ここは夜に見回りなんてないしそんな間抜け面した奴いねぇ、吐くならもうちっとましな嘘吐きやがれボケが!」


よし、かーえろ。


「おい、俺をここから出せ。でないと今すぐ大声を上げて駆け付けた奴にテメェの事を全部話す」


「待て止めろ!」


「嫌ならさっさと出せ」


「出来ない」


「おーい看守━━━」


「おい止めろ馬鹿!」


「だったらさっさとしろや」


「だから出来ないんだって。俺は普通の方法で出たわけじゃないから鍵も何も持っちゃいない、だからお前を出すのは無理だ」


「知るかさっさと出せボケっ!」


「話聞いてた!?」


ここでこいつに全部バラされたら一日中監視される羽目になりかねない、取り敢えず振りだけはしておくことに。呼び出した武器で斬りかかって出来ないゴメンでとんずらだ。

何か魔法的なものが反応しても困るので師匠の刀で魔力的な物を吸い上げながら鉄の扉に袈裟斬りを喰らわす。当然こんな奴を出すつもりもないのであくまで振り、全力を出してる風を装うのは結構得意だし。

ガキンと煩い音が夜の静寂を乱すが幸い騒ぎにはなっていないし扉も斬れていない、後はやる事はやったけど駄目だったという体で立ち去るのみ。


「すまないな、入っている奴の危険度のせいかここの扉だけ無駄に頑丈みたいだわ、俺の力じゃ無理━━━」


お前の日頃の行いのせいだと軽い皮肉を口にしているとガチャンという音が、それはまさに猛獣が解き放たれた音、血の気がひいた。


「おっ、開いたか。ごちゃごちゃ言わずに初めからこうしとけボケ」


「‥‥‥うっす」


おいおい開いちゃったよどうするどうするどうする!? 今からでも折に押し込む? 駄目だそれじゃあ結局騒がれてお終い。

いいや放っとこう。どうせ監獄自体からは出れやしない、その内見つかってまた牢屋行きだろうしどうでもいいや。


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