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第百五十ニ話 監獄にて ⑥

何の説明もないまま独房を連れ出された俺は今現在、安っぽい剣一本を手に周囲を壁に囲まれただだっ広い闘技場の様な空間に放置されている。


「これはどういう状況ですか、出してくれるのでは?」


高みからこちらを見物する監獄長に問う。


「出してやるさ。ただし、死体としてでるか生きて出るかはこれからのお前の頑張り次第ではあるがな」


監獄長が手を上げすっとその手を振り下ろす、それをきっかけとして地鳴りのような大きな音が響き渡った。

それは今まさに目の前で開かれる扉の音。

鋼鉄製で恐ろしく分厚い重厚感のある破られない事に重きを置いているであろう扉。

使用目的としては外側からの侵入を防ぐ、又は内側に何かを閉じ込めると言ったところだろうが今回は後者。

ゆっくりと開く扉の内側で物凄い音がする。

おそらく中の何かが入り込んだ光にでも反応して暴れているのだろう。つまりは理性の無い獣、この場所はそういう獣と囚人を戦わせるための場所。

俺が頑張って目の前の敵を倒せられれば生きて出られるという仕組みだろう。


「あのヴァイスとやりあって生きていられたんだ、それなりに期待しているぞ」


ヴァイス・・・それすなわちジャイアニズムの化身。

独房へと連れていかれる時、あいつが看守にそう呼ばれているのを聞いた。

どうやらあいつはこの監獄長に名前を覚えられるくらい腕が立つらしい。顔を思い出しただけで苛ついてくるが今はそれどころでは無い。

ようやく全貌を露わにした敵を相手にどう立ち回るか、それを考えねばならない。


重々しい扉に封じ込められていたのは巨人。

俺の四倍はあろうかという巨躯と手に握られた巨大な鉄塊、どちらも威圧的で常人では前にしただけで普通に絶望してしまう脅威。

しかし深淵でこれより遥かにヤバいのを相手にして来た俺の敵ではない。

緩慢な動きで繰り出される攻撃を巧みにかわして剣で斬りつける。安っぽい剣で不安はあったが使ってみるとちゃんと刃は敵の肌を通る、このまま押し切れると更に攻勢を強めたところで敵に変化が表れる。


「・・・・た、い」


「えっ?」


ただの呻き声だったのかもしれない、だが俺にはそれが言葉のようにも聞こえて手を止めてしまった次の瞬間、鉄塊による一撃が側面から迫る。咄嗟に剣で受けたとは言えその威力は凄まじく体など易々と吹き飛ばされ激しく壁に叩きつけられ身体のあちこちで悲鳴が上がる、どうやら骨やら内臓やらが結構やられてしまったみたいだ。普通の身ならまず間違いなく今ので終わっていた。

叩きつけられた衝撃で瓦礫と化した壁面が身体を覆い良い感じに姿を隠してくれているようで追撃をしてくる気配は無い、なので暫し回復を待つ間考える。

一体今のは何だったのだろう?


「痛い」


あの巨人がそう言っていたように聞こえたが・・。

いや、そうか! 暴れ回っていきなり襲ってきたからてっきり知性がないと思っていたが創作物において巨人というのは敵であることも多いが頼もしい味方である事だってある。

つまり知性があるかも知れない。話し合えば分かり合うことだって可能なはず!

というわけで瓦礫から飛び出し巨人の身体をよじ登り耳の辺りまで向かい周りに聞こえないようにひそひそ声で話しかける。

監獄長も見ているし変な魔法で聞かれているかもしれないし。


「お前もここに捕まってるのか?」


しかし返事は返ってこずただまとわりつく俺を引き剥がそうと暴れ回る。


「お前話せるんだろう? 答えてくれよ!」


だが返事は無くそのかわりにそいつは手にした鉄塊でこちらを叩き落とそうとしてきた。

どうにか飛び降り叩き潰される事態は回避出来たがそいつは自分で自分の身体を叩き首元辺りが陥没、そのまま息絶えた。


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