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第百四十一話 仇 ④

リアによって致命傷としか思えない傷をつけられてもう立ち上がる事など不可能だとばかり思っていた女が斧槍に寄りかかりながらも立ち上がる。

それでも十分あり得ない事なのに更にとんでも無い事に女の体が炎を纏い燃え上がっている。


「・・・あーあ、全部壊れてやがる」


腹部から胸元へと続く裂傷を指でなぞり囁く。


「・・・もう、知らね・・」


突如、苦しげに頭を抑える。


「でもまあ・・お前等を、殺せるなら・・・どうでも良いや」


その言葉の後、女は獣の様な咆哮を上げる、それと同時に女の手にした斧槍が豪炎に包まれさっきまでのよろよろの状態が嘘の様な速度で接近し燃え上がる斧槍を振り下ろす。

女騎士は動けない状態、慌てて俺が受け止めた瞬間の事だ、恐ろしい熱量が体を呑み込んだ。

俺だけが発火し炎に包まれる異常事態、女が原因であるのは明らか。すぐさま距離を取り姫様の魔法によって鎮火。

俺は単純に自身に近づく者を燃やす魔法なのだろうと判断したのだが姫様の表情を見る限り事態はもっと厄介なんだと知らされた。


「呪い持ち・・」


目を見開いた姫様が口にした。


「呪い持ち?」


「魔力とは力の源、その形はあらゆるものに変換できる様に粒子の形をとっています。ですがそうじゃない場合、元々魔力が何らかの形を取ってしまった状態があります。その状態の魔力の事を呪われた魔力と呼びそこから生み出されるものが呪法。あの女は魔力が炎の形を取っているのでしょう」


「魔法とは違うのか?」


「根本は同じです。ただあれは普通の魔力の様に扱いやすいものじゃないんですよ。魔力は体の中で常に生成と排出を行うのですが普通の魔力ならそれは何の問題もなく気付きもしない、でも形が変わった魔力を持っている者は違う、排出の段階で勝手に魔力が担った役割を果たしてしまう。あの女の場合であれば呼吸する様に周囲に炎を撒き散らす、存在するだけで周りに災をもたらす。だから呪いなんて言葉で分類されてる、魔族とは違った形で忌み嫌われる存在」


「何でそんなもんがいきなり!?」


「普通の生活をする為に封印でもしてたんでしょう、でもそれがさっきの私達との戦いで壊れた」


そういえばさっき壊れたとか何とか言ってたな。


「成る程・・・つまりやばいって事か?」


「ええそれはもう、呪法は魔法とは威力が桁違いですから。魔力の編み上げなんて手間を省いた分威力減衰もなければ発動にかかる時間も無い。ただ幸いなのはあの力は女自身の固有の魔力によるものという点、外からの供給はないでしょうから永遠は無い」


「という事はあいつの炎の魔力が切れるまでどうにか凌げと?」


動けない女騎士いる状態であれから逃げ切るのは無理だろう。


「転移はどうですか?」


「いや、転移はあいつらに封じられてるだろ」


アルセリアによって転移は封じられ使えない。出来るのは奴が認めた者という限られた人間だけ。

姫様は知っている筈だが。


「あなたがさっき使った転移の様な技、あれでどうにか出来ませんか?」


さっきのを転移と見たのか。

ただあれはそんな便利なものじゃない、単純に魔剣の場所に一瞬で移動するだけ。

所有者である俺しか使えないし転移ほど離れた場所に移動する事もできない。


「あれじゃ無理だ」


「そうですか・・・ならやはりどうにか耐え凌ぐしかありませんね。見たところ今のあの女は理性が無い、封印が一気に全部壊された事で溢れ出した魔力に理性が呑まれてしまったのでしょう。乱暴に魔力を消費して自身の状態も考慮せずただただ向かってくるでしょうから耐えていればいずれ底を尽きるはず」


「やっぱそれしかないか・・」


近付いただけで燃やしてくる相手、おまけに力も速さもさっきのまんまだし・・。

四対一でようやく互角だった相手が更なる力を得た状態、それをたった一人でどうにかしろというのは無理が過ぎる・・・・いや待て、相手の魔力が無限じゃ無いなら今こそ師匠の刀の出番じゃないか。

打ち合いながら魔力を奪って今度こそ終わらせる。

呼び出した師匠の刀を構えた瞬間の事、俺の隣を風のように速い何かが通り過ぎた。

それは女の目の前で足を止めて黒き刀を二振り。

一振り目は下から上への空を切る紫電一閃、振るった勢いで風を巻き起こし女の纏う炎を払う。

二振り目は女の身体を軽くなぞる様なひと薙、浅い傷が横一直線に刻まれ途端に女は意識を失う。

無駄の無い鮮やかな手並、迷い無く流れる様な一閃で敵を仕留める剣筋は昔と変わっていない。


「どういうつもりだ? まさかとは思うが助けてくれたのか?」


「勘違いしないで、私は()()仲間を助けに来ただけ。あのまま戦わせてたら危なかったでしょうから」


そう言って一瞬で女を無力化した人物、ルナは俺の方に目線を向けた。




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