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第百十八話 突入②

障壁を取り除き遂に内部へ到達・・・・の前にもう一問題。

中に入る為のあれこれで空飛ぶ獰猛な生き物にすっかり存在を認識された俺はまるで水槽に投げ込まれた芋虫の如く腹を空かせた奴らを引き寄せていた。

空中ではろくに身動きが取れない、アニメやゲームには空中で華麗に戦う描写はあるがこの俺は重力には抗えない、出来るのは武器を構え待ち受けながら落ちるだけ。

大挙する猛獣に餌となる生き物の意地を見せてやると意気込んだその時、敵の群れの中に飛び込む一つの影。

リアだ、リアが数十体もの群れにたった一体で向かっていった。


「止めろっ! 今すぐ逃げろっ!」


しかしその声は数々の咆哮によって掻き消される。

くそっ! なら俺の魔法で敵の注意をこちらに引きつけてやろうと声を出そうとした直前、猛獣の群れの真ん中で激しい光と雷鳴が轟いた。

黒煙を上げ落ちて行く猛獣達、その中心にはいつもの姿に戻ったリアがいる。

微かな光を纏い、そこから蛇の様な雷光が無数に暗闇へと散って行く。

リアは俺の方に視線を向け生やした羽を羽ばたかせ一瞬で落ちる落ちる俺に追いつき手を握る。


「すまん、目立ってしもうた」


特に怪我はなさそうだ。


「いや、助かったよ。でも、あんな危険な真似もうしないで欲しい。俺は死んでも大丈夫だけどリアは違う、無茶だけはしないでくれ」


すごく助かったのだが同時にとても怖かった。


「無茶などしておらん、あの程度わしの相手にもならんわ」


リアも魔族、力の制限がなくなり俺が知るよりも遥かに強くなっている。


「此処まできたらわしもおぬしについて行くぞ」


人気の少なそうな場所を探しているのかキョロキョロと下を確認している。


「ちょっ待って! 俺は一人で良いからリアは安全な場所に━━━━」


「うるさい! 話は下に着いてからじゃ。舌を噛みたくなければ黙っておれ、全速力で降りるぞ!」


「え!? えぇぇぇっ・・・!!」


ビュウっと風を切って灯りのない暗がりへと飛び込んで行く。




俺たちは無事地面まで辿り着き近くにあった廃屋に身を隠した。

そこでひそひそ声でお互いの主張を言い合っている。


「ダメだ、これは俺が一人でやると決めた事、ついてくるな」


「初っ端からあんな醜態を晒しておいてよく言う」


「仕方ないだろ、見えなかったんだから」


「この先またああいう仕掛けがあったらどうする? 一人でどうにか出来るものじゃなければ?」


「俺は一人じゃない、俺の中には師匠の力が━━━━━」


「馬鹿者! 力があるからと言っても一人は一人じゃろうが! 力じゃ解決できない事柄にはどう対処する? 頭の方は一般人と変わらんじゃろうが」


「それはどうしようもない・・・」


「どうしようもなくはない。わしとおぬし、二つの頭があれば知力は二人の合計となり一般人を遥かに超えた値となる、こうやって人間は足りない部分を補い合ってきたのじゃろうが!」


魔法のある世界で俺の有する知識などあまり役に立ちそうがない、つまり俺の知力はほぼゼロ、合計したとてなのだがリアの知識があれば助かる場面もあるかもしれない。


「でもだめだ、こんな無茶に突き合わせるわけにはいかない帰れ!」


「断る」


「頼むから言う事を聞いてくれ」


「わしの知る仲間とは困難を共に協力して乗り越える対等な存在と思っておったのだが、違うか?」


攻め立てるような口調、リアは怒っているようだ。


「仲間と言うたのは口だけか? 心の内では足手まといだと馬鹿にしておったのか?」


「そんなはず・・・」


「力を得たから見下しておるのか? 自分より弱いからもう仲間じゃないと言うのか?」


「違う、仲間だから危険な目に合わせたくないんだ! 俺は死なないから大丈夫だけどリアは違うだろ」


「ではおぬしは仮にわしが不死身として目の前で酷たらしい扱いを受けていても死なないから気にしないと言うのか?」


そんなはずない、すぐさま助けるに決まってるのだがここで「ああ」と答えれば怒って帰ってくれるかもしれない、リアの安全を考えるならそれが一番。


「・・・ああ、気にしない」


少しだけ躊躇してしまったがどうにか必要な言葉を口から出せた。

心が激しく痛み辛いが冷たい表情を無理して作って突き放す。


「下手くそ」


「え?」


「下手くそと言っておる。あんまりにも下手くそ過ぎる演技のせいで余計心配になってきたわ」


「ちょっと待て! 今のは演技なんかじゃ━━━━」


「━━━やかましい! わしがどうしようとわしの勝手、それによくよく考えれば生きた年月も魔族であるわしの方が長いはずじゃ、というわけでそっちがわしの言葉に従え、年長者じゃぞ敬え!」


その後何を言っても聞く耳持たず、敵地でいつまでも悠長に言い合いをしているわけにもいかず結局諦めた。




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