第百十七話 突入①
基礎的な身体能力は師匠から、技術的な部分は陛下から訓練してもらう事で強くなれた。
「本当に一人で行くつもりか?」
夜の闇の中、俺を背中に乗せ空を飛ぶドラゴンの様な生き物、姿を変化させたリアが心配そうに聞いてくる。
「ああ、その為に鍛えてもらったんだ」
「じゃが・・・」
「大丈夫、いざとなったら全力で逃げるから。確実に逃げ切る為の足の速さは得た、今の俺には逃げられない戦闘なんか存在しないね」
はっはっはっと自慢げに胸を張る。
「確かに以前に比べたら速くなった、前はとんでもなく遅かったからのう」
はっはっはっとリアはふざける。
お互い笑っているがお互いそこに不安が混じる。
いつもと違い途切れ途切れになる会話もそれが原因だろう。
会話の切れ間、ふと見上げた空は真っ黒、月の光も見えない。すると突然頬に冷たい感覚、どうやら雨まで降ってきた。
「雨じゃな」
「ああ雨だな」
いきなりの雨、いつもなら気分は若干下がるのだが今回は逆。
「潜入にはうってつけだな」
俺はこれからこの悪天候に紛れて空から姫様達のいる街に潜入する。
♢
街の上空、リアが姿を真似ている獰猛な生き物が相変わらずそこらを飛び交っている。
目は良いが嗅覚はそこまで、と言うリアの情報通り俺を乗せたリアが近くを飛んでも匂いでバレることはない、雨と暗さのおかげで視界も悪い、これなら上手く潜入出来そうだ。
潜入方法は空からのダイブ、激しく地面に叩きつけられて一回死ぬ事になるが仕方ない。
「行くよ」
覚悟を決めた。
「うむ、行ってこい」
そして俺の体は急降下を始めた。
死にはしない、痛みもさほど感じない、なのにだ・・・なんかめちゃくちゃ怖い。
死ぬまでにあれこれ考える時間があるせいで死に方を想像してしまう、どんなグロいものになるのかと考えて背筋が冷たくなる。
ひどい想像を膨らませている間に街の様子が見える距離まで落ちてきていた。
あともう少し、もう少しで地面に激しく叩きつけられる。
王城の一番背の高い塔の頂上と同じくらいの距離、そこまで落ちてきたところで俺はひと足早く致命傷を負った。
原因は見えない何か、おそらく結界だろう。そこに凄まじい勢いで突撃した。
「・・・なんの、これしき!」
身体から一つの魔力を選び手に集める、それは師匠の刀が今の俺の体の如く魔力と化したもの。
身体のうちより流れ出し一つに集めることで元の形を形成する。
手に無事作り上げられた刀を持てる力を出し切って見えない壁に突き刺そうと試みる、そこから火花の様に光が弾け下から見ればまるで花火、明らかに目立って俺の潜入作戦は初っ端で躓いてしまったがもう中に入れれば後はどうにでもなると半ばやけくそ気味に力一杯押し込んでやると突然バキバキとガラスにヒビが入るような音が、いけると察し今度は魔剣も呼んで突き刺す、更に激しく音が上がりついに割れる音が辺りに響いた。