第百十五話 特訓①
「俺、姫様たちを止めに行きます」
決意を新たにした俺は師匠の力を使って争いを止めに再びあの二人が待ち受ける場所へと向かう事にした。
旅立ちの前、お世話になった陛下の所に決意表明とお礼を兼ねてやって来た。
「色々と有難うございました」
「本気で言っているのですか?」
「もちろん本気です」
完膚なきまでに敗北してすぐ同じ相手に再び挑もうというのだ、心配そうにされるのも仕方ない。だがこの力があれば負けない筈だ。
「勝てませんよ」
「・・・え?」」
「だから今のあなたでは彼女達には及びません。言ったでしょう、現在あの者たちは私よりも強い、なのに私にすら勝てないあなたが向かってどうなるかはお分かりでしょう?」
「でも、俺死なないですし、もしかしたら・・・」
陛下は大きく溜息を吐く。
「不死身である事にあまり驕りを持たない方が良いかと。それは確かに相手にすれば恐ろしい能力ではありますが大前提として本人の実力があってこそ真価を発揮する、はっきり言わせてもらうと今のあなたにそれは無い」
「でもっ━━━━━」
「そんなに焦ってもどうにもなりませんよ」
焦るのは仕方ない、こうしてる間にまた一人俺のせいで死んでいるかもしれないんだ。現状では厳しいから様子を見ようとはどうしたって思えない。
それでもと頑なな意志を見せるが理由は言えない。
責められるのが怖くて逃げている情けなさとこんな平和な場所にいる申し訳なさが罪悪感へと変わりじっとしていれば心を焼いてくる、だからたとえ無謀でも足を止められない。
結果として自分が苦しい思いをするほうが幾分もマシなのだ。
どうあっても止まることをしようとしない姿に呆れたのか、それとも何か悟ったのか分からないが陛下がとある提案をした。
「十日だけ我慢してください」
十日、そのくらいとは言えない長さだ。
その間に一体何人死ぬだろうと考えてしまう。
「止めたいと口だけでなく心の底から願うのならそれくらい我慢なさい、その十日で無意味な特攻をほんの僅かでしょうが可能性のあるものくらいには押し上げて見せます」
そして最後に忠告する。
「期間が期間だけに厳しいものになりますが」
強くなる絶好の機会、それに何より余計な事を考えずに済む。
あの師匠のイカれた特訓を経験している身からすれば厳しいと言っても大したことはなさそうだが陛下の強さは身をもって知っている、その陛下が指導してくれるのなら為になるに決まっている。
俺はその申し出を受け入れた。