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第百六話 語らい

「結界に変わった魔力が引っ掛かったので来てみればまさかあなただったとは」


この村を取り囲む結界はフレイヤさんによるものらしい。

元々謎めいた人であったが実力はかなりのものだった、彼女ならこんな結界を張れてもおかしくない。


「無事で何よりです、フレイヤさん」


仲間だった人物の顔を見るとやはり安心する。

しかし向こうからすれば少し複雑なのかもしれない。


「そちらも、と言いたいところですが・・・・」


無事であるはずないと知っているのだろう。

こうして以前と同じ様に話しかけてくる死んだはずの仲間になんと言えばいいか困っている様子。


「あはは・・・無事ではありませんでしたけど今は一応生きてます」


苦笑いで返す。


「何があったのか聞いても?」


ティオにしたのと同じように説明する、さすがのフレイヤさんもすぐに受け入れるのは難しいようだ。


「死者が復活、それに不死という特性まで得て・・・そんな事を可能にする道具と人物の存在・・・」


俯いてぶつぶつと呟いて結局納得いく答えが出なかったのか顔を上げても曇ったままの表情をしている。


「その方のお名前は?」


「レ━━━━」


その人の名を口にしようとして止めた。

師匠があの場所に行き着くまでの経緯をある時思い出したように語っていたのを思い出したからだ。




少しも老いることのない姿に圧倒的な強さ、魔族がまだ猛威を振るっている時その力は人々の希望の象徴とされ敬われていたが魔族が退いてから徐々に見られ方も変わっていった。

平和になればなるほど彼女は周囲から浮いていく。

彼女と全く関係の無いところで生きる者にとっては変わらぬまま英雄ではあったが近くに生きる人間は違う、その力が余計な災いを生むのではと、一番魔族の恨みを買っているせいでその復讐に巻き込まれるかもと思わずにはいられない。


「何処か別の場所に行ってもらえたら」


そんな心無い声が不意に聞こえることもあった。

もちろんそんな人間ばかりではなかったがそれもまた師匠が人の前から消えた一つの要因なんだと思う。




不老不死である者として避けられない事だと注意喚起のつもりで教えてくれたのだろうがそれを思い出し名前を出すのは躊躇われる。

師匠がつい最近まで存在していたなんて知られれば英雄から厄介者にされた師匠は最後化け物に変えられるかもしれない、それは嫌だった。もちろんフレイヤさんやアレウスに限ってそれはないと思うが万が一の為、どこで誰が聞いているか分からないし。


「よく分からない凄い人です、それしか言えません」


「それは・・・・いえ、詮索はやめましょう。分からないのであれば仕方ありません」


一応納得してくれたので話を元に戻す。


「これじゃあ無理ってどういうことですか?」


魔剣と魔刀、先ほどこれでは無理と言われた。


「魔力を吸収出来る、それは素晴らしい能力であるのは間違いありません。ですがそれを扱うあなたはそれで得た魔力を上手に転用出来ますか? 魔力を奪って弱体化を狙いたいのだとしてもあなたに敵の魔族を仕留める決意は出来ているのですか? 魔力を減らして動けなくしても時間が経てば回復する、そうなる前に殺せますか? 言葉を交わした事のある相手の命を奪えますか?」


「それは・・」


すぐには言葉が出ない。

ここに至るまでに既に魔族は殺している、出来る出来ないで言えば出来るはずなのだが俺が殺した魔族は言葉も聞かず暴力を振るい向こうから先に剣を向けてくるような俺から見れば明らかな悪だった。

だがこれから相手にするであろう姫様とは言葉を交わし内面を知ってしまっている、惨劇を起こした張本人だからといって同じように殺せるのか少し自信が無い。

そんな内面を見透かしての言葉だったのだろう。


「多分今のあなたには無理でしょう。もう少し時間を置いてからでも良いのでは?」


「それでも行きます。出来る出来ないじゃなくてやるんです」


やれないでは駄目なんだ。

自分から始まった事を終わらせる為に。




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