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第九話 俺の隠れた才能

俺とルナとフレイヤはもう一人魔法道具店の女の子を連れてある洞窟の前に来ていた。


フレイヤが仲間に加わったすぐ後、またしてもすっからかんになってしまった俺は今後の事を考え頭を悩ませていた。懲りずにルナに再び無利子で借金、お金に余裕がないのでまたしばらくはもやし生活。


もやし・・・それは安くてうまい、それに栄養もかなりあると思う。


酒場には貧乏救済の為かどうかは知らないがそんな安くてうまいもやしの料理がたくさんあるのだ。例えば、もやし炒め、茹でもやし、もやしスープ、などこちらに来てお金がないときはだいたいもやしを食べていた。だがしかし、うまいといってもさすがにずっと食べていると飽きてくる、そんな中酒場でお肉の焼ける香ばしい匂いがして来れば誰だってお肉が食べたくなってくる、だが耐えた、不屈の精神で、おいしそうにお肉を食べている周りの奴らに対する怨みを抑え、いつかお金をたくさん手に入れて好きなものが好きなだけ食べられる生活を夢見て頑張ってきてようやくお金を手に入れたのに、またそんな生活に逆戻りとは。


「はぁ~どこかにすごい宝でもないものか」


思わず口からそんな言葉があふれ出た。


「もしかしたらあるかもしれませんよ」


そんな俺の言葉に反応したのは意外にも魔法道具店の女の子だった。


「私、魔法道具にすごく興味があって色々な文献を読みあさっているんですけど、その中にこんなものがあったんです」


言って女の子は古びたボロボロの地図をテーブルの上に広げた、その地図にはよくわからない文字と☓印が書いてあった。


「なんて書いてあるの、こんな文字見たことも無いわよ?」


地図を見ながら、眉間にしわを寄せてルナが聞いた。


「この文字は古代の文字で、要約すると☓印の所に宝を隠したみたいな事が書かれています」


「この文字が読めるの?」


「あ・・はい」


「すごいじゃない!」


「そ・・そんなことないですよ」


照れた表情で両手を胸の前で大げさに横に振って必死で否定している、その姿は大人に褒められた謙虚な子供がうれしながらも否定しているかのようで何とも微笑ましい限りだ。


「それで、☓印の場所はこの近くなのか?」


「はい、この町の北の方のようです・・・なので、私をその場所まで連れて行ってもらいたいんです。お宝が魔法道具でなければみなさんに差し上げます、もし魔法道具でも代わりにそれなりの報酬をお渡ししますので、お願い出来ませんか?」


それはとても魅力的な申し出ではあったが一つ問題があった。彼女はまだ子供だ、まして女の子だ、そんな子を危険な場所に連れて行くわけにはいかない。


「分かった、お宝は俺達が見つけてやるから君はここで待ってなさい、子供が危険な事をするもんじゃない」


こう言う俺に対して、彼女は少しうつむいて恥ずかしそうに、


「私・・・これでも、18歳ですけど・・・」


「・・・・え!?」「・・・・うそ!」


俺とルナはそろって驚いた、年上だと、正直言って全然18歳には見えなかった、どうみても俺より年下に見える。まさかこんな子が18歳とは異世界はやっぱりすごいなと感じさせられました。いやぁ、素晴らしい。



各々の準備を整えて俺達は町の入口で合流した。


フレイヤさんの武器は槍、それから回復系の魔法などが使えるらしく『回復はまかせてください』とのことだ。やはりシスターさんはこうでなくては。


魔法道具店の女の子・・・名前はティオ、武器は杖を持っており、服装もいかにも魔法使いといったものではなく普通の服装だったが防御性能は優れているらしく、攻撃魔法から支援魔法などが使えるらしい。魔法・・少女・・・いやいや年上だ、魔法お姉さん?


町を出て何度か魔物に遭遇したが、俺が手を出すまでもなかった・・・・厳密に言えば、俺が倒す前に他の3人がさっさと倒してしまう・・・。


ルナが先陣を切って、フレイヤさんは回復魔法以外にも捕縛系の魔法も使えるらしく魔物から離れた位置で魔法を唱えると魔物は数十秒間ほど麻痺したように動けなくなっていた、ティオは炎を飛ばしたり雷を落としたりなどの魔法で遠距離から敵を攻撃したり、エンチャント系の魔法で味方を支援していた。


そして俺はこんぼうを構え攻撃しようとした時には敵がいなくなっていた。


そんな感じで☓印の所に着くとそこは洞窟だった。


中は薄暗く光る杖を持っていなければ先へ進むのはなかなか大変だっただろう、道は複雑に分かれ、行き止まりの道もいくらかあった、魔物はおっきいアリやコウモリみたいな魔物やオークが徘徊していたが俺たちの連携をもってすれば大して問題はなかった。俺たち四人の連携だからな、俺だってしっかり光る杖を装備して戦っているみんなの辺りを照らしていたんだから役には立っているはずだ。


魔物を倒しつつ洞窟の奥へ突き進んでいくと、ゲームなら絶対にボス戦だろうと言わんばかりのやたら広そうな空間があった。


ティオが「ライト」と唱えると光る玉が上空に飛んでいき、辺り一面を明るく照らしだすとそこには、体長5メートルほどの黒くて、眼がたくさんあり、足が八本ある恐ろしい生き物、そう、クモがいた。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


洞窟内で悲鳴が響き渡る・・・・・・・俺の・・・・。


しかたないだろう、クモがこの世で一番嫌いなのだ、いや、怖いのだ。クモ恐怖症というやつだ。

足が長くて、八本もあって、超素早い。そりゃクモはGを食べてくれる益虫だという事は理解しているが怖いものは怖い、田舎で暮らしている俺は何度家の中でやたらデカいアシダカ軍曹に遭遇し怯えさせられてきたか。


そのクモが今、目の前でアシダカ軍曹よりも何倍もジャイアントになって現れたのだ。

アシダカ総督とでもいうべきかとにかくヤバ過ぎる!


しかし、ここまで盛大に怖がっているのは俺だけだった。ルナとティオは怖がっていたがそれほどではなく、フレイヤにいたっては平然としていた。


恐怖で固まっている俺に「倒すわよ」と言ってクモの方に向かって行くルナの背中を見つつ内心では「無理無理無理ムリムリムリマジ超ムリ」という気持ちしかなかったがその気持ちをなんとか抑え込み突撃しようとしたけどやっぱり無理でした。


ユウタは恐怖で怯えている。


クモはこちらに気付くと八本の足を動かしこちらに向かってくる。大きい分そこまで素早くはなかったがやっぱり怖い。


ルナは向かってくるクモの側面に瞬時に回り込み剣で足に斬りかかり足を一つ切断した。


俺はそれを見ていた。

見ていただけなのにクモはターゲットを俺に絞りこちらに向かって来る、


「嫌だぁぁーーーー 来ないでぇーーーーー!!!!」


しかし止まらない。長い足を振り回してきて直撃をくらい俺は吹っ飛ばされ壁に叩きつけられた。


「何やってんの!?」


すこし心配そうにルナがこっちに目をやり言う。


大丈夫じゃない、けっこう痛かった。しかし歯を食いしばり立ち上がった直後に痛みが瞬時に消えて行った。


「大丈夫ですか?」


フレイヤが回復魔法を使ってくれていたのだ。本当にありがとうございます・・・。


「やってくれたな! もう許さねぇ!」


と強気に言ってはみたが近づくつもりは毛頭ありません。

遠くから魔法ヌメヌメを辺りにまき散らした。


クモはヌメヌメに足がとられてうまく身動きが取れなくなった。

こうなればこっちのもの、


「みんな今だ、トドメを刺すんだ!」


やる事はやったと後は人任せにする。だって近づけないもん。そして何とかクモを討伐することに成功した。


「クモなんかもう二度と見たくない・・・」


そう呟きながら座り込む俺にルナは、


「このタイプの魔物ならそこらへんにいっぱいいるでしょ」


と無慈悲な言葉をかけてくる。フレイヤも、


「そうですねぇ~」


と笑顔で同意する。


そうかぁ~いっぱいいるのかぁ~・・・・・はぁ・・・。


まぁいいや、それより今は、


「宝、宝はどこだ?」


ボスみたいな奴を倒したんだこの近くにあるに違いないと、辺りを見回してみる。


すると、奥の方にこれみよがしに大きい宝箱が置いてあった。


「開けるぞ・・・」


言って箱を開け中にあったものを取り出した。


それは剣だった、ロングソートほどの長さで全体的に色がどす黒く禍々しさを放っていた。


その剣をみつめていたフレイヤが急に何かを思い出したかのように、


「それは、魔剣ですね」


・・・魔剣!? 魔剣と言えばゲームの終盤あたりで手に入り、すさまじい性能を兼ね備えた武器の事か? こんな所で手に入るとは・・・。


「これは、すごい武器なんですか?」


「いえ、まず魔剣は通常の剣とは違うので装備できる人がほとんどいませんし、装備できたとしても能力は発揮されない、それは人を拒むものですから」


フレイヤに続けてティオがさらに不穏な事を教えてくれる。


「持っているだけで呪われるという話です」


・・・・何それイラネ。


「しかし何故この様な場所に?」


フレイヤさんが難しい顔で考え込んでいる。


「危険な物なら持っていたくないだろうし廃棄されたのでは?」


「わざわざ地図を残しておまけにこんな宝箱に入れてですか?」


「呪いとかあるなら雑に扱うのも怖いでしょうし手放して何かあった時また取りに来れる様にとかじゃないです?」


呪われた品とかを捨ててえらい目に合ったなんて話は聞いた事がある。この世界にその類の話があるかは知らないが。


「‥‥‥そうしておきましょう、深く考えても意味もありませんし。どうせその剣には大した力は無い、放って置いても問題ないでしょう」


俺は魔剣を丁重に宝箱の中に戻し、「さぁ、帰ろう」と転移魔法陣を地面に置き町に帰還した。


魔法道具店に戻ったらティオが報酬としてのお金を用意してくれたが、結局何も見つからなかったことになんとなくの申し訳なさを感じほとんど受け取らなかった。


ティオは落ち込んでいるかと思いきや、そんな姿は全然見せずいつものような表情で、


「今回は残念でしたけどきっとどこかにすごい魔法道具があるはずなんです。私いつか旅に出てもっといろんな魔法道具を見てみたいんです、でもそんな勇気も力もなくて、それで、その・・・もし皆さんがよろしければなんですけど私をパーティーに入れてもらえませんか? 私強くなりたいんです」


と力強い眼差しで頼みこんできた。

そんなの答えは決まってる。


「いいに決まってるだろ、俺たちはもう仲間なんだから!」




ティオが仲間になった。




翌朝、宿屋で目を覚ました俺は驚愕した。


いつのまにか、俺の荷物袋のなかに黒くて禍々しいあの魔剣が入っていた。


どういう事か訳が分からずしばらくあたふたして、すぐに魔法道具店に向かって、ティオに聞いてみた。


ティオの話によると、魔剣はほとんどの人が装備する事は出来ないが、装備できる人が持っただけでも呪われるという事だった。つまり俺は魔剣が装備できたという事だ、普通ならなんかカッコいいんだがこの魔剣はなんの役にも立たない・・・むしろ迷惑でしかない、この剣を手に入れてからお金を落としたり、外に出た瞬間に雨が降ってきたりなど地味に嫌なことが続いた。


フレイヤさんに呪いを解いてもらおうと頼んでみても、「ムリです」と笑顔で断られた。


ごみの日に捨ててやってもすぐに戻ってきた、心霊番組でよく見る呪いの人形かなにかのように。


しかし慣れとは恐ろしいものだ、何度か地味な不幸にあっているとだんだんと慣れてきて呪いとかもうどうでもよくなっていた。




ユウタは呪われた。


第九話 END


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