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第百四話 自責

転移してきたのは俺にとって始まりの場所、その入り口付近。


「戻って、来た」


故郷を懐かしむティオは気持ちが抑えられないのかすぐに村の中へと向かって駆け出したがアレウスによって阻まれた。


「待て待て、一見問題は無さそうでも用心するに越したことはない。外から様子を確認して安全だと分かってからでいいだろ?」


「でもっ・・」


珍しく聞き分けのないティオはお姉さんに(たしな)められて「分かりました」と引き下がる。

そんな気持ちを理解してかアレウスが大きな手をティオの頭に乗せて「すぐに確認して戻って来るからちょっとだけ待ってな」と駆け出した。

どうやら村の周りを一周して敵がいないか見て来るつもりらしい、俺にはここで皆んなを守るようにと一人で行ってしまった。

しばらく待機時間、ただ待っているだけと言うのもなんなので落ち着かない様子のティオと話でもして気を紛らわせてみようと試みる。


「えーと、大丈夫?」


「大丈夫です」


「そう、よかった!」


「・・・・」


落ち込む女の子を元気付けるなど俺に出来るはずなくすぐに会話は途切れる。

居た堪れない空気、なんて無謀な事をしてしまったんだろうと後悔していると向こうから話しかけてくれた。しかしそれは友達が交わすような笑顔弾ける会話ではない。


「私、魔族という存在を甘く見てました」


弱々しい切り出し。


「書物には確かに危険な存在だと記されていましたがそれがどれ程なのか分かってませんでした」


打ちのめされた人間の出す声、そんな風にも聞こえた。


「だから初め襲って来た時すぐ逃げるんじゃなくて周りの多くの人達と同じように抵抗する事に決めたんです、リアちゃんが止めるのも聞かずに」


リアはどちらかと言えば向こう側、その力も十分理解していたのだろう。


「一瞬でした。まさしく手も足も出ない状態で結局最後は散り散りになって逃げるしか出来ませんでした。けど私足が遅くて追いつかれて・・・」


「それであいつに捕まってたと?」


「いえ、その時はリアちゃんが助けてくれてどうにか大丈夫でした」


「そっか、それでその後リアは?」


二人で行動していたなら一緒に捕まっていてもおかしくないがそうでは無かった、リアだけ別の場所に連れていかれたのかもしれないと考え心当たりは無いか聞きたかったのだがどうやらその考えは間違っていたようだ。

ティオは突然「ごめんなさい」と謝罪を口にする。


「私、逃げる事に必死で気付いた時には近くにリアちゃんの姿はありませんでした・・・」


逸れたらしい。

命の危険があったんだ、そんなの仕方なくティオが謝る必要は無い。


「きっと無事でいるさ、あれでも魔王の娘だしなんかすごい道具持ってたろ、絶対無事に決まってる、あまり気にしなくて━━━━」


「━━━でも私リアちゃんを探すこともせず自分の家族の所に行っちゃったんです。助けられておいて見捨てたんです」


その後村に辿り着いたがそこにもすぐに魔族の手が及び次は両親を、見捨てるというよりは促される形ではあったが置いていく事になってしまったらしい。


「たくさん、見捨ててきたんです」


心の痛みを唇を噛んで堪える、出会ってからずっとどこか陰のあるような気がしていたがようやく原因が分かった。


尚更なんと言葉をかければ良いのか分からなくなって「気にするな」とか「大丈夫」とか薄っぺらい言葉しか出てこなかった。




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