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020.【試行錯誤】という突破法(2021.07.03)

 いつもご覧いただきまして、誠にありがとうございます。中村尚裕です。


 私、最近とあるお悩みを眼にしました。

 いわく、「新作に関するアイディア出しを重ねても、面白い作品としての全体像が思い描けない」。


 我流では、物語の【面白さ】を構成するのは以下のようなものと捉えております。


『物語の【面白さ】』=『発想の【ワクワク】』×『伝達【技量】』


 何かと申せば。

 『新作に関するアイディア出し』で積み上がるのは、往々にして物語の根幹を構成する『発想の【ワクワク】』でありましょう。

 我流では、【ワクワク】は非常に大切な存在ですが。それをいかに組み合わせ、いかに提示していくか――というのは主として『伝達【技量】』、要は【論理】の問題です。

 いかにして【ワクワク】を配置し、また魅せていくかに関しては、三幕構成や序破急を始めとした【技量】が物を言う場面でありましょう。


 また、【ワクワク】の密度に関する問題もあります。

 よくよく考えてみれば、【ワクワク】を一つ用意したのみでは物語が保つとは限りません。厳密には背骨に相当する大きな【ワクワク】もあるとして、導入であるとか盛り上がりの狭間にできる谷間であるとか、『【ワクワク】が薄くなりがち』な部分ができてくるのもまた確かです。


 ここで。

 物語に込める【ワクワク】を一つに絞らなければならない――という決まりは存在しません。

 大きな【ワクワク】を実力以上に盛り込みすぎて制御し切れなくなった――という場面も確かに見受けられますが、それは【ワクワク】を十把一絡げで同一視していい根拠にはなりません。


 私の見るところ、【ワクワク】にも大中小の規模であるとか、要求に対する向き不向きであるとか、要は【性質】とでも呼ぶべきものが存在します。

 つまりは【ワクワク】も多様なのです。相性も存在すれば、使いどころもそれぞれ存在するという、これは見方ですね。


 ということは。

 我流では、【ワクワク】は一つだけを薄く引き伸ばして使うものではなく、複数を【性質】に合わせて組み合わせ構成して使えばいい――と心得るわけなのです。早い話が使いよう、というわけですね。


 なので。

 盛り上がりの谷間には補強となる『別の【ワクワク】』を用意すればいいことになりますし、また『【ワクワク】の【性質】』を考慮すれば組み合わや構成にも思いが至ると申すもの。


 そんな具合で、私がよく使いますのは『【ワクワク】を実際に組み合わせてみて【試行錯誤】する』思考法。

 『やりたいこと』、つまりは【ワクワク】は多めに用意します。逆に申せば、いくらあっても余分ということはありません。

 これは当初から一発書きで完成形を目指すのではなく、【試行錯誤】を前提、つまりはボツを容認する――という考えから来ています。


 「それではボツになったアイディアがもったいない!」とお思いの向きもありましょうが。

 ボツを恐れて発想を萎縮させてしまうこと――我流ではこちらの方をむしろ恐れます。頭は回した分だけ【鍛え】られます。逆に回さなければ、今度は成長しようがないのです。

 しかもボツは未来永劫役に立たないわけではありません。後述しますが、陰ながらきちんと役立ちます。


 それより私が重視しますのは。

 【試行錯誤】によって突破口を探す【揺さぶり】です。

 単一のアイディアでは、行き詰まりも限界も出てきます。現にお見かけしたお悩みに関しても、手持ちのアイディアで行き詰まるからこそ『(面白い作品としての)全体像が浮かばない』と嘆いているわけです。

 ならば『(物語としての)全体像を描きたい』という状況に対して、【試行錯誤】の数々で【揺さぶり】をかけるという算段。状況を【揺さぶれ】ば、手持ちのアイディアで突破できる局面が見えてくる可能性は上がります。


 具体的には。

 単一のアイディアや【ワクワク】で上手く通らないのであれば、複数の【ワクワク】を組み合わせるまで。

 相性の善し悪し、力量の必要性、そんなものは端から承知の上です。だから【試行錯誤】、要は一発OKなどという幻想を振り払い、ボツを覚悟で様々な組み合わせを試していくのです。

 ここは作品を一回観るだけの【観客】視点からでは思い付きにくい発想ではありましょうけれども、【作者】は【試行錯誤】でより高度な考察を重ねて、より高い力量を示すことができるのです。これを利用しない手こそ、むしろもったいないと私は考えるのですね。


 さらに。

 ボツはただのボツでは終わらせません。ブレインストーミングのきっかけとして、『現場百遍』にも相当する『現場経験の一つ』として、早い話が『発想の足場』になってもらうのです。そうしたなら、ボツは表で語ることはなかろうとも『考証の足跡』として確かな存在感、つまりは【説得力】を醸す役割を果たすようになるわけです。


 こうやって発想の上に発想を築いていったなら、さてどうでしょう。ボツを恐れて足踏みするより、遥かに高度な組み合わせを試すことが可能になる――とは思えてきませんか?


 そんなわけで、行き詰まったと思ったなら【試行錯誤】してみる――という手をご推奨する私なのでありました。


 よろしければまたお付き合いくださいませ。


 それでは引き続き、よろしくお願いいたします。

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