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014.“積み上げ志向”と“逆算志向”(2018.05.26)

 いつもご覧いただきまして、誠にありがとうございます。中村尚裕です。


 私、物事の捉え方には色々あるものと考えておりますが。

 今回は出発点から捉える“積み上げ志向”(勝手に命名)と終着点から考える“逆算志向”(勝手に命名)に考えを巡らせてみます。よろしくお付き合いのほどを。


 きっかけは、とある製品をウォッチしていてのこと。

 製品に込められたメーカの設計思想、これが伺い知れるエピソードがあったのです。


 例えばあるメーカ。仮にA社と呼ぶことにしましょう。

 最上級機種の作り込みをまず設定し、下位機種が上位機種の質感を上回ることがないよう、こと細かく注意を払っている姿が窺えます。


 かと思えば別のメーカ。仮にB社と呼ぶことにしましょう。

 こちらは“その時々の全力”を示すことに注力する姿勢が窺えます。

 機種の上下関係は棚に上げ、純粋に費やせるコストを最大限活かして製品の出来栄えを高める方針です。結果的に、下位機種が上位機種よりお買い得に見えようともお構いなしです。


 ではB社の上位機種は下位機種に食われてしまうかというと――必ずしもそうなるとは限らないようです。むしろ同じ価格帯の他社製品からシェアを奪いにかかっているものと、私の眼には映りました。

 またモデル・チェンジの時期さえ来れば、“その時々の全力”で培われた長所は上位機種にも反映されます。


 ここで。


 A社はゴールの姿(最上位機種)をまず定め、そこへ至る過程を逆算で作っていく“逆算志向”。

 B社は出発点から持てるものを積み上げていく“積み上げ志向”。

 と、それぞれ捉えることができます。


 “逆算志向”は、ゴールの姿を予め設定できる場合に有効ですね。ゴールまでの道のりを事務的に定められるので、思わぬ“外れ”を作ってしまう危険がそれだけ減ります。休みどころも設定できます。言い換えるなら、“守りの姿勢”と申せましょうか。


 “積み上げ志向”は、逆にゴールの姿が見えない場合に有効です。“その時々の全力”を積み上げていくわけですから、うまくすれば予想以上のゴールへ到達する可能性も出てきます。また、途中で得られた予想外の収穫や経験を取り入れて、どんどん質を高めていくことも可能です。言い換えるなら、“攻めの姿勢”と申せましょう。


 もちろん、それぞれに短所はあって。


 “逆算志向”は、予め設定したゴール以外を目指すには向いていません。また、途中で予定外の収穫や経験が得られることも少なくなります。


 “積み上げ志向”は、ゴールの姿が必ずしも見えているとは限りません。休みどころが見えにくく、途中で力尽きたり“外れ”を作ったりする危険もあります。


 ではどちらが優れているかというと。

 ――どちらもどちら、と申しますのが私の考え方。

 要するに使い分けですね。


 “逆算志向”は、ビジネスライクに接する場合が向いていそうです。

 基本的にゴールを超えることを求められていないですから、こと事務的に接するには気疲れを最小限に留めることができるでしょう。また、“外れ”を引きにくいのも利点です。


 “積み上げ志向”は、やり直しの利かない一発勝負などが向いていそうです。

 そもそもどこまでやればゴールに到達できるか判らない一発勝負、予想外の収穫も経験も糧にして、ひたすら高みを目指すことができそうです。


 では、作家である自分がどのような姿勢で作品を書いているか――と振り返ってみたなら。

 やはり両者を共に使っていますね。


 まず“逆算志向”の出番。結末やクライマックスをゴールとして定め、そこから逆算して大筋の展開シナリオをまず決めていきます。

 次に“積み上げ志向”の出番。途中途中で盛り上がりそうな要素を追加していったり、最初は詰め切れていなかった細部をアドリブで書いてみたり。すると、予定外の収穫や経験を得られることも多々あります。

 そうすると、逆算で導き出した過程が盛り上がります。盛り上がると、今度はゴールを底上げせねばバランスが取れなくなります。

 なので、次はゴールやクライマックスを底上げします。“積み上げ志向”で得られた収穫や経験も動員すれば、不可能な話とも限りません。

 そうやって肉付けされていったシナリオに従い、今度は細部をアドリブで書くわけです。また“積み上げ志向”の出番ですね。


 こんな過程を経て作品を練り上げていくわけですが。

 これ、生き方にも通じるものがあるようです。


 まず基本姿勢。

 短期的、あるいはビジネスライクに捉えられる目的やゴールに達するためなら“逆算志向”で臨めばよし。

 長期的、あるいは遥か高みを目指すなら“積み上げ志向”で臨めばよし。


 “大外れ”を引かないために“逆算志向”を役立て、予想外の出来事も活かしてしまう試みで“積み上げ志向”を活かす――というわけです。

 どちらか一辺倒では短所ばかりが浮き彫りになりがちですから、ここは使い分ければ面白くなるであろう――というご提案。

 大切なのは、“全て一発で決まるわけではない”“プランは考え直せばそれでいい”くらいの開き直りでありましょう。


 結局は。

 頭ごなしに“どちらかが優れている”と決めつける方が損、という考えです。要は思考を硬直させた方が損を見る、ということになりますが、さていかに。


 よろしければまたお付き合い下さいませ。


 それでは引き続き、よろしくお願いいたします。

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