114.【考察】:『期待』と『予想』(2020.10.03)
いつもご覧いただきまして、誠にありがとうございます。中村尚裕です。
秋がいよいよ深まってきた風情を感じますね。ただ日中はまだ半袖が似合う気候、皆様もご体調にはお気を付け下さいませ。
さて私、ここのところ改めて考察したことが数々ありまして。
その一つが「『期待』を裏切るな。『予想』を裏切れ」と申すもの。
これ、過去の活動報告(2019.12.21)でも考察していたのですが。
この時は『期待』というものに『方向性の一致』を、『予想』というものに『範囲の超越』を、それぞれ見ていたのですね。
改めて考察してみて、ここをもうちょっと掘り下げてみますと。
・『期待』は物語が描くJOYの方向性を示して得る『信頼感』→序盤から徐々に“育てる”もの
・『予想』とは観客が(作品とは関係なく)持つ『先入観』→『想定外』を提示して“超越する”もの
という認識が。
ここで『期待』というのは『観客が作者に寄せる信頼』と私は考えております。
具体的には、「この作者なら、この程度の波乱は(大体の方向性を保ちつつ)収拾して(オチに導いて)くれる」という(いい意味での)先入観。
逆に『予想』というのは、『観客の先入観』、あるいは『成り行きで観客が抱く展開予想』と申しますか。
で、これが何の効果をもたらすかと言えば。
『期待』に沿う『信頼感』というのは、観客を惹き付ける役割を果たす――と私は考えます。
物語冒頭から「この程度の波乱は収拾していくので、どうぞ安心して下さい」と 観客を気持ちよく物語に没入させる(満足度に心配を抱かせない)効果ですね。
『予想』は、逆に『波乱の始末の悪さ』を想起させて観客をハラハラさせる役割を果たす――と私は考えます。
ミス・リードも相当しますが、どんでん返しに繋がる展開もまたこの『予想』を醸成する役割を担いますね。
この両者、さながらクルマの両輪とも申すべき関係性では――と、私は考えておりまして。
『波乱』を収拾する姿勢(と方向性)が『信頼』を呼び、今度はより大きな『期待』に化けていく――と申しますのがその概略。
具体的には、
1.冒頭で小さな『波乱』を魅せ、小さく『予想』を超えることで、最初の『信頼』を醸成する
(この際、物語のJOYを小規模なりと提示するのが望ましい)
2.観客の中で、作者に対する『信頼』が、『波乱』収拾の方向性と合わせて『期待』となる
3.少しだけ規模の大きな『波乱』を提示する
4.観客に『成り行きの展開』を『予想』させる
5.『想定外』を提示し、『期待』の方向性を外さず『予想』を超える
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と、このような流れを考えてみました。
これは完全ではないにしろ、要点として
・『期待』は展開の数々を通して育てるもの
・『予想』は『想定外』を提示することで裏切るもの
・物語展開は『期待』を育てていくにつれて、振れ幅を大きく取れるようになっていく
ということが言えそうです。
よろしければまたお付き合い下さいませ。
それでは引き続き、よろしくお願いいたします。