大谷さん
ポスン
俺は昼休憩の時間に体育館で一人でバスケのシュート練習をしていた。
周りでは友達とバスケをしたりドッジボールで盛り上がっているなかで一人でシュート練習をする。
いつもはこうと一緒にやるのだが、今日は夏の大会前らしく、バスケットボール部のミーティングでいない。まぁ一応あいつはエース候補で一年生で唯一試合に出てるので当たり前だろう。
仕方ないので俺は一人で
俺はいつも通りスリーポイントライン外からシュートを放つ。ボールは放物線状に放たれてリングに当たることのなくゴールに吸い込まれていく。
それを繰り返し、何回もシュートを打ち続けていた。そしてカゴからボールがなくなったところで一旦休む。
息を吐くと一気に疲労感が湧いてくる。俺の周りには誰もいつもは近づかない。シュートのペースが早いのはもちろんなんだが俺が撃ち始めるとそこのコートはみんな違うコートで遊び始める。
理由は簡単でレベルが違いすぎるのだ。
ボールを拾いカゴに入れる。
そしてまた撃ち始めようと狙いを定めシュートを撃つ。
すると同じようにシュートを放つとリングにリングにあたり落ちる。
床に落ちると思ったがショートカットの女子が跳ね返ったボールをリバウンドでとり、落ち着いてバックボードに当てゴールを決める。
「……」
俺はあっけに取られていた。
するとその女子はこっちを見てから自分がシュートを決めたボールをパスで返してきた。
それを受け取るとディフェンスの構えを取る。なるほど1or1か。
「って、なんでだよ。」
俺が突っ込むと女子が笑う。
「いや〜私も女子バスケットボール部だから、いつも羽川くんと松井くんが1or1やってるの見てたんだよ。早紀と愛とで。」
「へぇ〜」
そう言われるのはちょっと驚く。
「お前もかけてたのか?」
俺が言うと苦笑する。
俺とこうと1or1はいつのまにか見学者が出るほど有名なものだった。実力はやっぱりこうのほうがうまいが俺は3Pシューターでこうがセンターなのでときどき勝ったりするので賭け事が観客では行われていた。
しかしっその女子は苦笑して
「違うよ。私も3Pシューターだから参考にしてるだけ〜。」
「あまり参考にならないとおもうけどなぁ。」
俺はため息をつく。
「んでなにか用か大谷さん。」
すると驚いたようにしている。
「知ってたんだ?」
「知らない方がおかしいだろ。」
クラスのムードメイカー的役割でありながら成績はトップクラス。そして男子からも人気があるクラスメイトの一人だ。
しかも杉谷さんとも仲が良くいつも俺の席が空いた時に座っているので知らない訳がない。
「へぇ〜。知っててくれたんだ。それで早紀から告白されてどうだった。」
「嬉しかったが驚きの方が多かったな。ってかお前らだろ罰ゲームに告白とかいったの。」
「冗談だったんだけど、早紀が話聞いていなくて。」
「それであんな公開処刑を行ったと。」
「ごめんね。」
それは俺にあやまってきた。
「本当はもっと普通の告白をさせようとしたんだけど。」
「告白することは変わりないのかよ……」
「もちろん!!」
「でも思いっきりふったけどな。」
「そういえばどうして断ったの?好きな人がいるとか?」
「違うよ。杉谷さんはほとんど話したことないやつから告白されたらどう思う。」
「あ〜なるほど!!」
と手を一回叩く。
「たしかにそれは困るね。」
「だろ。」
話が早くて助かる。
「つまり初めてだったから断っただけで、気はあるんだ。」
その一言にキョトンとしてしまう。
「……なんでそうなる。」
「だって今ほとんど話したことない女の子やつから告白されたらって言っていたから、その時は気になってなかったけど今は気になってるんじゃないの?」
大谷さんはじっと俺を見る。
正直言って正解だった。
あれから一週間が経つけどそれ以降杉谷さんと話す機会が増えた。
今のところ休み時間はこうと話すか杉谷さんと話すかのどちらかだった。
帰ってからは用事がなかったら夜8時から12時まで話すのが日課になってるし弁当を二人で食べようって誘ってきたり色々あった。まぁ断ったけど
つまりほとんどの時間話しているのだ。
しかも自分が好きと言ってくれた女の子だから意識してしまう。
すると自然と可愛い仕草を見つけたり、話してないと落ち着かなくなってくる。
結論
俺はリア充には勝てなかったよ。
「少し後悔してる。」
俺が言うと大谷さんは意外そうに俺を見る。
「えっと、それって。」
「あぁ。そういうことだ。」
すると入り口の方から声が聞こえる。
「美緒。ここにいたの?」
クラスメイトのツインテールの女の子が言う。
「ごめん。ちょっと待ってて。」
するとこっちを見て
「じゃあねー。」
「あぁ、またな。」
俺が言うと大谷さんは走り去って行く。
でもひとつだけ疑問だ。
何しにきたんだろう?