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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第五章~集いし精鋭、特務部隊は動き出す~
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第七十八話~変わった者達~

 月に照らされたサファクイル基地、その最後に残された第三区画の王都側の薄い防壁の前の広間には、残存する全ての兵士が移動の為に集結していた。

 彼らは皆、長距離の移動の為に装備は一部の兵以外は外し、数十のフェザリアンに牽かれた台車に武装の殆どを預け、レイルーン砦に向けての行軍を始めようとしていた。


 残った一万三千二百の兵士、その先導をするのはセヴラン達ブラッドローズの部隊であった。

 セヴラン達は後ろに続く大軍が移動の準備を終えた報告を受け、その先導を開始する。


「全軍、我に続けッ!!!」


 何故かブラッドローズの指揮を執らせれているセヴランは、行軍の指揮までを執らされていた。

 セヴランは仕方ないと諦めていたが、それでも職務は遂行し、レギブス方面軍は重々しく移動を開始した。




「なぁ、なんで俺はブラッドローズの指揮を執らされてるんだ?」


 先頭を進むフェザリアンの台車に乗り、やることも特になく月を見上げていたセヴランは、ふとリーナに質問した。

 それは、現状のセヴランの立ち位置についてだった。

 戦闘を終え、帰還したセヴランはリーナにブラッドローズに入隊することとなったが、何故かその初期配置が総指揮官であったのだ。

 正直なところ、セヴランは意味が理解出来なかった。何故、いきなり総指揮官なのか。だが、ここまで部隊を移動させる準備に追われていたため聞く時間がなく、今ようやく時間が出来たのだ。

 セヴランの問いに、同じく台車に向かい合うように座るリーナは視線を合わせ、穏やかな表情で語り始めた。


「そうね……まず、私達のブラッドローズには総指揮官がいなかったの。いや、私では向かなかったって方が正しいわね。バーンズも前線向きだし、エメリィやキルは勿論無理。私達には、戦闘では活躍出来ても、他人を使える指揮官がいなかったの。だから総指揮官となれる人材を探してたんだけど、当たり前だけど既存の部隊からは引き抜けない、けど私達の部隊や新兵の中にそんな手頃な人材はいない……そんな時に、指揮を執れて既存の部隊に属さない新兵、つまりあなたが現れたのよ」


「俺が……指揮を執れる?なんの間違いだ」


「謙遜しなくてもいいわよ、あなたはどんな形であれ第一大隊を指揮して、更には他の大隊までも指揮してみせた。そして、戦闘能力も充分過ぎる程……これ以上に適任な人材はいないわ」


 リーナの言葉で、セヴランは大体のことは理解した。用は、足りない指揮官の穴を埋める為に自分はここにいるのだと。だが、それは理解しても、気になる点は幾つもあった。


「まあ、俺の所属は元々決まってないから何処でもいいが、俺みたいな奴をいきなり指揮官にしたら、反発とかがあるんじゃないのか?」


 セヴランは人差し指を立て、一つ目の質問と指で表す。

 リーナはこれにあくびをしながら眠気を示しつつも


「う~ん、まぁ……大丈夫じゃないの?それに、何かあっても、あなたならなんのかするでしょ」


 リーナのどうとでもなるといった仕草に、セヴランは苦笑せざるをえず


「適当だな、まったく…………」


「私が気にしても仕方ないことでしょ?私の部隊でもないしね」


「おいおい、お前の部隊だろ?」


「今はあなたが指揮官、だからあなたの部隊、分かった?」


 みごとなまでの証明であった。もはや、セヴランはリーナの意見に突っ込む気力もなく、次の質問と人差し指と中指を立たせ二つ目と表す。


「第一大隊は今は俺の指揮下にあるが、あれはセルゲノフ中佐に任せるとして、俺の持つ特別遊撃隊はどうするんだ?」


 二つの疑問、それはセヴランの本来属する特別遊撃隊の扱いであった。

 特別遊撃隊は、元々は新兵を隊に組み込む余裕がないために急遽作った枠であった。最悪、これが全滅する可能性もあった為、戦闘を終えた後のことは誰も考えてなかった。しかし、今となっては戦闘を乗り越えた一人前の兵士であり、それを泳がしておく程フィオリスの兵力に余裕はない。

 セヴランの次なる問いに、リーナは頬に人差し指を当て少し考え込み、そして


「なら、彼らもブラッドローズに組み込みましょう」


「かなり大胆な発言だな。俺らの部隊は数が減ったと言えど、まだ五十以上を抱える部隊だぞ?」


 部隊の肥大化。それは戦力の増強ともとれるが、少数精鋭の部隊ならば行動の制限となる場合があり、それを気にしたのだったが


「いいわよ、彼らは強いことだし。実戦経験のないうちのに比べたら何倍も使えるわ」


 リーナは、技量こそあれど実戦経験の少ないブラッドローズの仲間を思い、笑みを浮かべずにはいられなかった。

 たとえ同じ新兵だとしても、セヴランと同じで戦い抜く覚悟をしているのだ……今さらであったのだ


「これで暫くはいいでしょう。私達は夜まで待ちましょうか…………」


 リーナは再び月を見上げる。つられて、セヴランも月に視線を奪われ


 ……なんか色々あったが、考えるのは明日からにするべきだな。


 こうして、セヴラン達は台車に揺られ、様々な想いに記憶を巡らせていた。

 つい一ヶ月程前にここを通った時は希望に溢れる新兵の集団であった。それが、既に新兵の多くを失い、しかしかけがえのない仲間をセヴランは得た。

 戦場とは失うだけではない、少なくとも今はそれが分かるとセヴランは考えながら、長かった一日の疲れに取りつかれてその意識を途切れさした。

どうも、作者の蒼月です。

始まりましたよ第五章、プロット的にも中身が固まっていない危険な領域です。

作者は無事、この作品を完成させられるのか!?

(まあ、なんとかがんばっていきます)


では、次も読んでいただけると幸いです。

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