第七十一話~力を持ちし者達は無双する~
セヴランとリーナがレギブス軍戦列に突撃をした頃、遅れて戦列に到着したバーンズ達も攻撃を開始した。
「二人に遅れをとるなよ!」
バーンズの掛け声とともに、バウルと特別遊撃隊の剣士達は後衛のエメリィや弓兵を守るように左右に広く展開をしていった。
中でも、先頭を進むのはバーンズとバウルの二人で
「お前さん、俺様に着いてこれるか?」
「当たり前だろ、気にせず突っ込んでくれ!」
「それは心強いなッ!」
バーンズとバウルは走る速度を上げ、向かってくるレギブスの軍勢に突撃をする。レギブス軍の隊列は、先行したセヴランとリーナの攻撃で崩壊しており、まばらに散った部隊単位で目についた敵から攻撃をしようと動いていた。そんな統率など感じられない部隊は二人の敵ではなく
「止められるかなッ!」
「邪魔だぁぁぁ!!!」
バーンズは大剣で軽々と凪ぎ払い、敵をまとめて吹き飛ばす。バウルも負けずと大剣を敵に叩きつけ、鉄の塊で敵の体を粉砕させる。
二人の攻撃にレギブスの兵達も反撃を試みるも
「あ、あいつらを止め――――――ッ!」
「うぁぁぁあぁぁぁァァッッッ!!!!」
「た、助け――――――いやぁァぁッ!」
バーンズとバウルを取り囲もうと近づいた部隊は、無数の炎の弾丸と矢の雨に体を貫かれた。
バーンズ達の背後、後衛であるエメリィ達は前衛の援護としてその力を振るっていた。
「さあ、みんな頑張るわよ~」
後衛の指揮を執るエメリィは、力の入らないおっとりとした声で後衛に声を掛ける。それは余裕から来るものなのだろうが、真面目なギーブはため息を吐き
「敵右翼は私と魔導師エメリィを主軸に魔術師で攻撃を担当。敵左翼は弓兵で抑え込むように。味方に当てないように距離を確認するようにッ!」
ギーブの指揮で後衛部隊はそれぞれ攻勢に移ってゆく。
咄嗟に部隊に指揮を出したギーブに、エメリィは微笑み
「貴方って真面目なのね、私は指揮とか苦手だから助かるわ~」
エメリィののほほんとした態度に、ギーブは先が思いやられたが
「はぁ……では、指揮は私が。貴方は攻撃に専念してください」
「えぇ、そうさしてもらうわ」
エメリィとギーブ、そしてギーブの部下の魔術師組は杖を掲げ
『ファイアボールッ!』
基礎魔法でありながら、敵一人を殺すには充分すぎるファイアボール。その火球を無数に展開させ、敵の群衆へと放っていった。
「はぁ…………まだまだ敵はいるな」
「仕方ないでしょ、嘆くにはまだ早いわよ」
レギブスの兵士に囲まれるセヴランとリーナ、二人の周囲には五十を超える骸が出来上がっていた。
二人は、通常の兵士が十人程をを殺すのに掛かる時間で五十人という数の兵士を斬り捨てていた。異様な速さで動き回る二人をレギブスの兵士達は捉えることが出来ず、包囲こそできども反撃をするには至らなかった。
セヴランは愚痴を口にはしていたが、まだまだ余裕と笑い
「リーナ、このままじゃキリがない……速度は上げれるか?」
セヴランの計算では、このまま戦闘を続けても数で押されれば足止めは叶わず、後方に控えるラムス達の元まで突破されると想定していた。故に、更に敵を釘付けにする必要があり、リーナもそれを理解し
「余裕よ、あなたこそ体がもつかしら?」
リーナは小さく笑い、姿勢を落とし加速をする体勢を作る。セヴランもリーナの言葉に笑い返し
「気遣いどうも、俺のことは気にするな。…………それじゃあ、行くぞッ!」
セヴランの言葉を合図とし、二人は爆発的な加速で敵目掛け突っ込んだ。
セヴランは足裏で雷を発生させ、大地から反発するように地面スレスレを飛んだ。そして、セヴランの加速の動き反応が出来ず、もたつく敵の首に正確に一太刀を入れる。兵士の首を断ち切る際、骨に剣が食い込みセヴランの速度は一瞬落ちるが、着地と同時に再びの加速で速度を落とすことにセヴランは対処する。連続の加速はセヴランの体に強烈な痛みをもたらすが
「はあぁぁぁぁッ!!!!」
味方の首が二つ撥ね飛ばされた光景に遅れながら反応するレギブス兵。しかし、味方の姿に目を捕らわれた無防備を晒す兵士の腕と足を斬りつける。
一人一人に時間は掛けず、たとえ攻撃が致命傷とならずともセヴランは止まらない。次々と首、腕、足と失えば致命傷となる部位への攻撃を放ち続けた。
リーナは強化したその肉体を最大限使いこなす。年相応の細い足、しかし魔力で強化された脚力で踏み込まれた氷の大地はその表面を砕け散らす。
セヴランよりも早く、刹那の時で距離を駆けるリーナはレギブスの兵士達に迫り、体を回転させながら次々と敵の胴体に斬撃をお見舞いする。リーナに反撃しようとレギブスの兵士達は剣を振るうが
「遅いわね、もっと早く動きなさい!」
リーナは向けられた剣を見切り、スレスレの位置を避けながら剣を振り上げ、向けられた剣を持つ手首を撥ね飛ばす。
手首を失った兵士は悲鳴をあげ、後退りながら痛みで叫ぶが
「うるさいわね、黙って」
リーナは後退る兵士との距離を開けさせず、悲鳴を黙らすためにその首を一撃で斬り落とす。リーナは返り血で至るところを紅く染めつつ
「さあ、次は誰が私と踊ってくれるのかしら?」
リーナは余裕の笑みでレギブスの兵士に語り掛ける。その姿は獲物を前にする猛獣であり、レギブスの兵達は死の恐怖で動くこともままならなかった。
セヴランとリーナが雑兵相手に無双をしている頃、二人の攻撃の難を逃れ第三防壁へと向かうレギブスの兵を向かえたのは、剣術の腕ではセヴランやリーナをも凌ぐバーンズ、バウルを始めとした兵士の壁であった。
レギブスの兵士程数がいるわけでもなく、壁と表すにはあまりにも少ない人数だったが、レギブスの兵士達からすれば突破は容易ではない難攻不落の壁と同義であった。
奥へと進むレギブスの兵をバーンズはことごとく吹き飛ばし
「どうした?かかってこないのか?」
バーンズは目の前まで進んできた勇敢なレギブスの兵達に思考する時間を与える。バーンズの前方、すなわちレギブスの兵達の立つ方向には同じレギブスの兵達がバーンズによって地に寝かされていた。彼らは誰もが体を区の字に曲げられており、立ち上がることは不可能であった。そんな仲間の姿を見て躊躇しながらも、レギブスの兵達はバーンズへの攻撃を選択した。
バーンズは突撃してくる五人に対し、残念だと吐きつつ己よりも長い特大剣を肩に担ぎ構える。
……敵はロングソードが三人に槍が二人、三撃で終わらすか。
バーンズは一瞬で己の行動を決め、冷静に行動を取る。一番目にロングソードを降り下ろそうと突撃してくる敵に、大剣を横に降りきり先に刃が敵の腹に叩きつけられる。超重である大剣を受けた敵は体を曲げながら吹き飛ばされる。その際、後ろにいた敵を一人巻き込み、同時に二人を無力化する。
重量のある大剣をバーンズは抑え込むが、攻撃を終えたバーンズの隙を狙い槍を構える二人がその穂先を向ける。バーンズといえど、振り切った大剣を抑え込みながらもう一度攻撃をするなどという芸当は不可能であった。故に、バーンズはその動きを止めなかった
「おうりゃあぁぁぁぁッ!!!」
バーンズは左足を軸とし、振り切った大剣に振り回されるように回転した。姿勢を落としながら回転したバーンズの大剣は、突撃をしてきた二人の槍兵の足を横から凪いだ。足を強烈な一撃で払われた二人は勢いよく地に倒れ、頭を打ち付け気絶した。
だが、残る一人はバーンズに、隙の大きい攻撃は効かないと突きの攻撃を狙い一直線に飛び込んでくる。
「あ、やべ……これはマズイな」
流石のバーンズも生身で四人をほぼ同時に無力化したが、五人目には完全な隙を見せてしまい、僅かな焦りを見せた。
最悪、腕の筋肉で受け止めようと大剣から手を放したその時――――――――レギブスの兵士が脳天から叩き潰された。
「まったく、油断すんなよな」
バーンズに迫ったレギブスの兵を、バウルは一撃で叩き潰した。脳天から割るという技量にバーンズは感心しながら
「いい腕だな、後は敬語でも使ってくれたら俺様は感激するとこだが」
「ふん……戦場で年なんて関係ないだろ。同じ仲間だ」
バウルの言葉にバーンズはニヤリと笑い
「いいねぇ、ここ最近の若いのは大人しい奴が多いが、それぐらい言ってくれなきゃな」
バーンズとバウルは背を合わせ
「それじゃあ、次の敵を潰すぞッ!」
「言われなくても分かってるよッ!」
二人は大剣を構え、迫り来る敵の波に猛進して行った。
セヴラン達がレギブスの雑兵に無双をしていた丁度この時、レギブスの正規兵がこの短時間で準備を終え、遂に第二防壁区間へと進軍した。
どうも、作者の蒼月です。
またまた戦闘が長くなってしまいました。なんか、戦闘シーンは書くのが楽しくてついつい文が増えてしまいます。(反省、反省……)
まあ、無双は好きじゃないのでこれぐらいにしときます。
では、次も読んでいただけると幸いです。




