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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第四章~目覚めし騎士~
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第六十六話~光の一撃~

 エメリィとマリーンが会話を終え激戦に移り始めた頃、セヴラン達四人は意見を固め、対聖獣戦を始めようとしていた。


 会議を終えたバウルは聖獣を取り囲む部隊のうち、特別遊撃隊の元へと戻ると一人の兵が気づくと振り向き


「隊長、またセヴラン隊長の無茶振りですか?」


 バウルに話し掛けた兵士は、セヴランの本来指揮する第一小隊の一人であり、セヴランの戦いを、新兵ながら戦場を生きぬいてきた強者でもあった。

 現在は第一から、統合され第四小隊まで減った全ての部隊を指揮するバウルの部下でもあるため、バウルはいつも通りの砕けた口調で、愚痴に近いため息をつきつつ


「そうだよ、またお前達にも働いてもらうってよ……」


「おっと、それは厄介だ。他の奴らにも知らせます?」


「いや、あいつが適当にするだろう」


「了~解っと」


 セヴランは新兵の中でも特異であった。初日から大将であったカーリーに挑み、急遽新設された部隊の指揮官を任され、ここに来てからは大隊の指揮官だ。とても新兵のする出世ではなかった。そんなここまでの流れを、同じ小隊員として見てきた二人……いや、二人に限らず、特別遊撃隊の面子は階級などを気にすることなく、同じ仲間として戦っていた。故に、規律を重視する軍隊では珍しい光景を、バウル達は無意識のうちに作り上げていた。そして、そんなセヴランの無茶振りに付き合わされるのは、彼らにとって今更な出来事であった。




 会議を終わらせたセヴランは、聖獣を挟みつつ城門の正面に構え、己の立てた作戦に自信が持てないまま戦場に立ち、しかし不安を理性で押さえつけて考えないようにしていた。

 そんな不安を抱えることを見抜いてか、隣で剣の刃を確認するリーナが的確にセヴランの不安を突き


「セヴラン、いいのかしら?私達だけでも足止めは出来るのよ」


 リーナの言葉に即答出来ず若干の間を作るが、セヴランは剣を引き抜きつつ


「駄目だ、二日前の戦闘でも分かったろ。俺達だけでも足止めは出来るが、それじゃあ駄目だ……敵の狙いが門の破壊なら、ここで奴は潰さないとな」


「そう、ならいいわ…………」


「――――――?」


 セヴランは、リーナの最後の言葉の意味が分からなかったが、今は目の前に集中すべきと意識を切り換える。

 そしてちょうど、見計らったかのようにセヴランの元に、戦闘中の第二大隊の伝令兵から情報が伝わる。


「伝令ッ!既に最前列の部隊に重症者多数、戦列の交代に乱れが生じ始めましたッ!」


 伝令は事態の悪化を伝えるものだった。セヴラン達の会議はそう長い時間のものではなかったが、それでも一般の兵士は聖獣相手の戦闘に慣れているはずもなく、あっという間に負傷者を出す羽目になっていた。

 だが、ここまではセヴランの想定内であり、セヴランは冷静に聖獣を眺め


「伝令助かる、戻ってくれて構わない」


「はッ!」


 伝令兵は戦闘をつづける部隊へと駆けていく。どの部隊も戦闘を続け、守りを重視していても聖獣相手に長くは続かない。

 故に、セヴランは剣を引き抜き構え、遂にその咆哮をあげる。


「第二大隊並びに特別遊撃隊全軍ッ!我々はここまで追い詰められているが、これは何の為の戦いか!今も、この第三防壁を越えた先ではレイルーン砦に市民の避難が行われている。しかし、ここで聖獣の突破を許せば、多くの民に被害が及ぶ……それだけはなんとしても阻止するッ!最前衛は引き続き三人が引き受ける、諸君は彼らと共に総攻撃に転じろッ!敵に攻撃の隙を与えるなッ!!!」



『了解ッ!!!』

『うおぉぉぉぁ!!!!』


 全軍は剣士による近接戦、弓兵による狙撃を開始した。もちろん、聖獣も黙ってやられるだけではないのが普通だが


「さぁ、相手をしてもらうわよッ!」


「――――――ッ!」


 リーナは他の者達に聖獣の攻撃が及ばないよう、最速で攻撃を叩き込む。爆発的な加速で聖獣の顔面に一直線に飛び、後ろへと流れながらすれ違い様に回転しながら複数回斬撃を加えた。圧倒的な生命力を持つ聖獣にとって、有象無象である一般兵の攻撃など効かないも同然のため、危険と判断するリーナに狙いを定める。

 後ろへ通り抜けたリーナに振り向くため、攻防一体である旋回で体を回しリーナへ爪を向ける。しかし、リーナは向けられた爪に笑みを浮かべる。


「――――――ウガァァッ!」


 リーナの笑みからか、聖獣は雄叫びをあげながらその場を跳躍し大隊の包囲から逃れた。


「うっしゃぁ!このまま押し込めッ!」

「びびって逃げやがったぜ!」

「ざまあみやがれッ!」


 聖獣が後退する姿に兵士達は勢いづき、士気を最高まで高めていた。その光景はセヴラン達の勝利かのように見えたが


「…………なんでここで後退する…………聖獣に逃げる理由なんかないはず、城門を壊すのが目的なら…………」


 セヴランは、聖獣の行動に謎を感じていた。そして、自分の言葉に疑問は更に膨れ上がり


「まて、本当に城門を壊すのが目的なら逃げる訳がないんだ…………なんで逃げた……逃げたのは目的があった、いや、終えたから?だが、それなら聖獣の慌てた様子もおかしい…………」


 聖獣の行動に何一つ納得がいかないまま、しかし何故か背中に嫌な汗が流れ


「全軍後退ッ!急いで城門から離れろッ!!!」


 セヴランは唐突に叫んだ。自身でも何故叫んだかは分からなかったが、過去の修行の経験の勘から無意識に判断したものだった。しかし、セヴランの唐突な意味不明な命令に誰しもが困惑し、誰も逃げる様子を見せなかった。


「頼む!早く後退をッ!」


 それでもセヴランの言葉は届かない。誰もセヴランの言葉に動けずにいたが


「ほら、さっさと後退しなさいッ!」


 最前列で戦闘をしていたリーナは、セヴランの言葉に疑問を持たず後退の指示に従っていた。それは、セヴランの言うことに基本間違いはないという信頼からだったが、それが流れを変えることとなる。


「ほら!お嬢もああ言ってる訳だ、早く後退しろッ!」


 最前列で大隊指揮を執っていたバーンズも、リーナと同じく全軍に後退を促した。そして、特別遊撃隊にいたバウルもその一人となり


「おら野郎ども、あのセヴランが言うんだ。面倒事に巻き込まれる前にとっとと逃げるぞッ!」


 こうした三人の同調の末、全軍は急ぎ城門前から左右に散るように後退を開始した。


 そして遂に、セヴランの不安は現れ





 ――巨大な破砕音、第一防壁の城門が突破された時と同じそれが響き渡り、後退する第二大隊の一部を巻き込んだ光の一撃が残っていた二つの城門を貫き、破壊した――


どうも、作者の蒼月です。

今回は話もすすめれたのですが、少し戦闘の描写が雑になって申し訳ありませんm(__)m

本当ならばもっと描きたいのですが、これ以上ここで時間を潰す訳にもいかないので、これでよかったかなと


では、次も読んでいただけると幸いです。

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