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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第四章~目覚めし騎士~
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第六十二話~未来ある兵士~

 セヴラン達は、二人……たった二人、むしろ一人と一匹と言うほうが正しいか、マリーンと聖獣に挟まれたまま動きを取れずにいた。


「どうするの、セヴラン」


 聖獣が地面の中から現れたことに絶句していたリーナは冷静さを取り戻し、現最高指揮官であるセヴランに次の動きを求めた。それにセヴランは応える為、頭の中で高速で作戦を練りだし、冷徹な瞳は作戦を告げる。


「エメリィ、マリーンを一人で相手出来るか?」


「え、えぇ。技量なら私のほうが上だし、決着をつけたいから望むところよ」


 エメリィは敬語を使っていたセヴランが、いきなり呼び捨てで名を呼んだ豹変ぶりに僅かに戸惑ったが、すぐに気を引き締めセヴランの問に応えた。これにより、セヴランの作戦は固まり


「では作戦を伝える!敵マリーンの相手はエメリィ、お前に任せた!」


「引き受けたわ」


「次に聖獣の相手だが、リーナ、バーンズ、バウルの三人を先頭に残る部隊で総攻撃をかけるッ!」


「分かったわ」

「いいぜ、やってやろうじゃねぇか」


 リーナとバーンズは聖獣に向け刃を引き抜き、三度目となる戦いに意識を集中させていた。しかし、名を呼ばれるとは想定していなかったバウルは面食らった顔で声を上げ


「セヴラン!なんで俺が――――」


 バウルがセヴランの決めた配置に意見しようとしたが、セヴランはそれを聞くことなく


「バウルとギーブは私の所へ来い!それ以外の者は、これより……作戦開始ッ!!!」


『うおぉぉぉぉ!!!!』


 豪雨は更に激しさを増し、空に走ったいかづちの一閃が戦闘の鐘となり第二防壁からの撤退戦が開始された。




 戦闘は開始されたが、名を呼ばれたバウルとギーブの二人だけははセヴランの元に集まっていた。二人が来るとセヴランは要件を伝えるため、焦りつつも口を動かす


「バウル、この配置に驚きはあるだろうが聞いてほしい。俺も大隊の指揮なんて、正直自信はないんだ。俺一人では今後必ず、どこかで無駄に仲間を死なせてしまう、だから、お前の力を借りたいんだ」


 セヴランは己の気持ちを告げるが、肝心な理由が分からずバウルは聞き返す。


「具体的に、この配置の意味は?」


「お前に力をつけて欲しいんだ。バーンズ達の力は化け物にも匹敵する、そんな戦いを間近で見て欲しいんだ」


 セヴランが求めていたのはバウルの成長であった。バウルの力はこの二週間程を戦い抜いたことだけでも充分なものであった。しかし、セヴランはこの三日間だけで本当の戦いというものを思い知らされた。自分よりも優秀な者や勇敢な者達が簡単にその命を散らし、自分のような新兵が成り行きで人の上にたっていることに恐れを感じていた。故に、自分と同じ仲間に力をつけてもらい、死なない為の成長を求めていたのだ。

 セヴランの想いが伝わったかは分からないが、バウルは肯定も否定もなく振り向き


「分かった、お前には苦労させてるからな。それぐらいはしてやるさ」


 バウルは愛用の大剣を肩に担ぎ、聖獣との最前線へと駆けていった。


「それで、私は何をすれば?」


 バウルとともに呼ばれ、セヴランの言葉を待っていたギーブはバウルに負けてられないと闘志に燃えた瞳を向けた。


 ……ギーブ、口調も丁寧で冷静そうなのに、バウルとはやたらと張り合うよな……いい傾向か


 セヴランはギーブの姿に改めて考えをまとめながら、聖獣とは反対……戦いの最中であるエメリィとマリーンに視線を移し


「お前にはあの二人の姿を見ていて欲しい。同じ魔導師として興味あるだろ?」


 セヴランの言葉にギーブは目を閉じ


「確かに興味は尽きない……けれど、そんな理由だけではないだろう?」


 ギーブはセヴランの考えを見抜き、セヴランは感心の微かな笑いをこぼし


「流石ギーブだな、その通りだ。これは俺の勝手な予想だが、これから戦闘では魔法の力も重要になるはずだ、だからお前にも力をつけて欲しい」


「なるほど……分かった」


 バウルとギーブの二人に説明が済み、セヴランもようやく戦闘の指揮に移る準備が終わった。マリーンはエメリィに任せ、聖獣への対処を優先するためにセヴランは前線へと向かい歩き始め


「まあ、成長する可能性は、俺なんかよりもあいつらの方がよっぽど高いからな…………」


 セヴランは二人を危険な死地に向けた理由の内、本音の部分を小声で自嘲気味に呟いたのだった。




 セヴランにマリーンの相手を任されたエメリィはマリーンと対峙していた。互いに動きはなく、相手を睨み牽制を続けながら、豪雨による雨が地面を穿つ音の中で静寂な戦いが繰り広げられていた。

 マリーンを睨みむエメリィは内心、様々な思考を凝らしていた。


 ……まったく、まさかこんなに早く師匠を相手にすることになるとわねぇ…………


 エメリィは先手をとれるよう、相手に悟られないように超高等技術である無詠唱での術式構築を開始する。しかし、マリーンは家畜でも見るかのような目でエメリィを笑い


「エメリィ、あなた本当にそれでばれてないつもりなのかしら?私をナメるのも大概にしなさい」


「流石ですね師匠、やっぱりを重ねるほど優秀になるんです?年増の技量には驚かされますね」


 エメリィは目に見えた挑発を重ねマリーンを煽ってゆく。普通ならば、こんなものに乗る馬鹿はいないが…………


「エメリィ、やっぱりあなたは躾がなってないわね、もう一度鍛え直してあげるわッ!」


「あんたみたいな屑に言われたくないわね、ここで決着をつけてあげるわよッ!」


 二人は互いの因縁のぶつけ合いの場を得たのだ。水を得た魚の如く、二人は魔法による、人外の境地に至る過去最高の戦いを始めた。

どうも、作者の蒼月です。

前回エメリィとマリーンの戦いを書くみたいなことを言ってましたが…………


また書けませんでした!スミマセンでしたッ!!


いやまあ、最後にチラッと出てきたし大丈夫だよね?(本当、作者調子に乗ってますね)

書きたいことがどんどん増えて大変なことになってるんで、きちんと話の整理をしたいと思う今日この頃

まあ次こそは書けるんで大丈夫……かなぁ……


では、次も読んでいただけると幸いです。

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