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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第四章~目覚めし騎士~
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第六十話~魔法と剣~

 セヴランの視線の先、城門上に生まれた空へ昇る滝はファームド達を打ち上げるとその勢いを弱め、滝の中からマリーンがその姿を現した。セヴランは躊躇なく剣を引き抜きマリーンにその刃を向けたが、同時に額には冷たい滴が流れていた。しかし、それが再び降り始めた雨によるものなのか、マリーンに対する恐怖からくるものかはセヴランには分からなかった。


 ……大陸に名を馳せた天才魔導師マリーン、その実力は確かだろうな……魔導師相手に接近戦を挑めるとは思えないが、逃げることも不可能、ならば!


 セヴランの魔力は完全には回復しておらず、まだ魔法は使えない。剣の腕で言えば、セヴランは一般の兵士よりは上だがそれでも人間の領域からは脱していない。しかし、目の前にいる敵は人間の域を超越したような化け物であり、セヴランが魔法を使用せずに生き残れる可能性はなかった。それでもセヴランはここで引くという考えはなかった。

 城門上にいたファームド達数人はやられたが、防壁上には撤退の指示を受けて後退する第二大隊と特別遊撃隊が残っており、戦う仲間を残して先に逃げるなどという判断はセヴランには思い浮かびもしなかった。

 セヴランは痛む体を何とか立たせ、剣を構えつつ踏み込む体勢を作る。命こそは助かっていたものの、自分の背の数倍のある高さから落ちたためセヴランも重症と言わざるおえない状態であった。体が痛みに支配されそうになりながらも何とか正気を保ち、マリーンへの攻撃のために足を踏み込み、攻撃に移ろうとしたその時――――――


「待ちなさいセヴラン!」


 セヴランは踏み込んだ足を止め、後ろからの制止させる声に振り向いた。そこには装備を整え、戦闘態勢のリーナ、バーンズ、エメリィの三人が構えており、リーナはセヴランの隣まで躍り出た。


「なんだリーナ、まさか引けなんて言わないよな。あいつはこれ以上進ますわけには――――」


「今のあなたにあれの相手は無理よ」


 リーナの冷たく、重い…………そして冷酷な一言はセヴランに事実として突き刺さる。

 言われずともセヴランは理解していた。目の前の化け物はセヴランの手には負えないものであり、戦えば命を落とすであろうことを…………返せる言葉などなかった。


「セヴラン、ファームド達はまだ生きてるわね?」


 リーナが見渡す視界の先には、ついさっきまで城門上にいたファームド達が血を流しながら倒れており


「確かに厳密には死んではないが、地面に叩きつけられて重症だ……どのみち、もう助からない…………」


 そう、ファームド達には微かにではあったが息はあるのだ。しかしおそらく、今の基地――更に王都にいる医師でさえ助けることが不可能なのは目に見えており、これは死んだこととほぼ同じことであった。だからこそ、セヴランは一矢報いる為にもマリーンに挑もうとしていたが――――――リーナの瞳からは、諦めを感じることは出来なかった。

 リーナはここまで現状を荒らされたことからマリーンを睨み付け、その顔を歪めると


「バーンズッ!あいつの足止めをしててッ!」


「了解ッ!」


 リーナの怒号に応え、バーンズは獲物である大剣を構えマリーンへと迷いなく突撃する。


「セヴランッ!あなたは私と共にファームド達をここに集めるわよ!」


「は?もう、ファームドは助からないだろ――――――」


「早くッ!!!」


「――――ッ!」


 セヴランはリーナの怒りの形相に圧され、一歩後ずさってしまった。リーナにどんな考えがあるのかは分からなかったが、ファームド達の時間が残されていないことは理解していたため、急ぎファームド達負傷兵を集める為にセヴランは走り出した。


「あら~せっかく待ってあげたのに無視はひどいわね」


 走り出したセヴランは、時が止まってしまったかのような感覚に襲われた。視線をマリーンに向けると、マリーンは空に浮いていた。正確には、足元に目に見える風の流れを生み出し、風の上に立っていた。マリーンは徐々に高度を下げ地面に降り立つと


「はあぁぁぁぁ!!!!」


 一瞬でマリーンの眼前まで迫り大剣を振りかぶったバーンズが、その無防備な頭を目掛けて大剣を降りおろすが


「邪魔よ」


 マリーンは右手の杖の先を地面を軽く突き次の瞬間、バーンズは突如地面から生えた鋭い岩に体を穿たれ、簡単に吹き飛ばされた。しかし、マリーンの行動はバーンズだけに向けられたものではなかった。

 マリーンの周囲には幾つもの炎の火球が生まれた。それは模擬戦でギーブらも使った、魔法としては基礎の初級魔法であるファイアボールであったが、ギーブらのものとは比較にならない程の熱を放ち、雨の中だというのに勢いを弱めるどころか触れた雨粒はたちまち蒸発をしていた。人間に当たれば命がないことは一目で分かった。生まれた火球は、一直線にセヴラン目掛けて飛び


 「――――――避けられなッ!!」


 セヴランは走っていたが、火球の通る道筋は丁度セヴランの顔などの急所を的確に狙った軌道であり、今さら止まればそれこそ狙い打ちにされるだけが故に止まることは出来なかった。セヴランは致命傷を回避するためにも体を捻り攻撃に構えたが…………




 炎の光球は二つに断ち斬られた。




「やらせねぇよ、お前さんの相手は俺様だろッ!」




 セヴランの前には大剣を降り下ろして魔法を叩き斬った、フィオリス王国最強である将軍バーンズの、その勇ましくも仲間に絶対の安心を与える背中姿があった。

どうも、作者の蒼月です。

一つ言っておきたいことが………………


前回、ファームド達の表現を肉塊としましたが、あれは本来間違いでした!スミマセンm(__)m


あれを訂正するのが本来なんでしょうが、まあ間違えたならそれにあわせて未来を修正するのが私のやり方なんで(つまり、本来この戦闘はなかった模様)今後も、楽しく物語を作っていきたいと思いましたね。


あと、毎日更新できる作家さんは凄いですね、私には無理なので尊敬しますよ本当に。(1日投稿しなかったらブックマークが減ってて悲しかった《小並感》)


では、次も読んでいただけると幸いです。

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