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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第四章~目覚めし騎士~
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第五十話~三日~

 被害状況が各将官に伝えられた後、暫く各々で意見をまとめる時間が設けられ、それぞれ様々な意見をまとめあげた状態で会議が次の段階へと進もうとしていた。


「それじゃあ、そろそろ意見もまとまった頃でしょうし、まずはセルゲノフいいかしら?」


 リーナは周囲の確認をしつつ、時間が来たとセルゲノフに視線を送る。セルゲノフも準備は終わっており、各将官へと伝えるべき判断を告げた。


「では、私からの意見ですが……サファクイル基地を放棄、レイルーン砦まで後退するべきだと判断します」


 セルゲノフの言葉に部屋の中がざわめきだす。それもそのはず、この基地を放棄するというのは国土の一部を手放すということであり、農耕地帯を多く占めるこの地域を失えばフィオリス王国の食料事情は他国と同様に立ち行かなくなる。この事実に一人の将官が手を挙げ


「セルゲノフ中佐、この基地を失えば今度こそこのフィオリスは終わりです!五年前の進行を食い止めきれず、国土の一部を失って得たのは食料事情の悪化だけではありませんか。五年前の惨劇を、再び繰り返すおつもりですか!」


 将官の意見は正しかった。サファクイル基地は五年前のレギブス進行を受けて作られた基地である。その前線基地を失えば敵の更なる進行を許すことになり、今まで以上に防衛は困難を極めることとなる。

 しかし、この程度のことはこの場にいる者なら誰でも分かることであり、セルゲノフは冷静に答えを返した。


「過去の失敗は勿論分かっているとも。ならばこそ私は知りたいが、敵防衛をどの部隊で行うつもりなのだ?」


「そ、それは……第二大隊と第四大隊を前衛、第三大隊を後衛に回すしか……」


 セルゲノフの質問に将官は言葉の力が弱まる。その理由は簡単であった。


「カーリー大将を含む精鋭の第一大隊の壊滅を受けて、お前はその作戦を立てるのか?」


 そう、セルゲノフの指摘は的確に問題点を突いていた。全力で防ぎきれなかった敵を更に少ない数で守り抜くなど不可能なのだ。無論、数日程度であれば今の戦力で凌ぐことは出来るであろうが、今回は小競り合いではなく戦争の為、長期間守り抜く必要があるのだ。

 将官はセルゲノフに反論することは出来なかった。セルゲノフも想定の範囲内と特に気にした様子はしないが、将官は頭を下げ


「勝手な発言、申し訳ありませんでした…………」


「いや、当たり前のことを確認するのは大切だからな。それじゃあ姫、何か意見があるのですね」


 セルゲノフは将官との会話をまとめると、次はリーナの瞳の変化を確実に捉え言葉を向ける。将官が下がるとリーナは鋭い視線でセルゲノフを睨み


「貴方の意見は正しいわね。レイルーン砦への後退は問題ないわ、ただ一つ気になるのは…………周辺の村の住人の避難はどうするつもりかしら?」


 リーナの瞳に捉えられ、セルゲノフは答えを出さざるおえない。しかし、その言葉はリーナ……そして、セヴランに怒りを覚えさせるものだった。


「可能な限りは避難誘導をするつもりです。しかし、一部の村は間に合わないかと」


 セルゲノフは瞳を閉じたまま淡々と答えた。同時、リーナは机を拳で殴り付け


「つまりは見捨てるのね?」


「…………………………」


 セルゲノフは答えることは出来なかった。だが、これはセルゲノフでなくとも答えることは出来ないのだ。

 周辺は農耕地帯であり、大規模な村が幾つものある。その人数はこの基地に所属する兵士の何十倍にもあがり、一度に避難を行えば混乱は避けられず、更には避難をする場所もあまり残されていない。敵の進行を防ぎつつ、大量の民間人の避難、とても全員を避難させる程の余裕はフィオリス、レギブス方面軍には残されていなかった。

 セルゲノフにとってもこの判断は容易にくだせるものではなかった、けれども残された兵士の命を預かる身としてこれは最善の策である。しかし、このセルゲノフの判断は予想外の方向に転がっていくこととなる。


「駄目よ、民は全員救うわ……たとえ、どれだけ兵士が死のうとね」


「で、ですが姫!あなただって分かっている筈です、これ以上の進行を食い止めるのには限界があります。我々が突破されれば、それこそ民の犠牲を増やすことに繋がりますぞ!」


「分かっているわよ、だけどこれは絶対よ。いい?これは命令よ。嫌なら私を今ここで殺してでも止めたらいいわ」


 リーナは言葉とともに剣を鞘から僅かに引き抜き、その光る刃と笑う口元から歯を覗かせ敵対の意志を向けた。もちろんリーナもセルゲノフとこと構えるつもりはなく、セルゲノフもまた国の姫に刃を向けることなどするはずもなかった。

 セルゲノフはため息をつき、お手上げと両手を挙げると


「では、姫には何か妙案でもあるのですか?」


 その時、リーナはまた違った笑みを浮かべたのだ。その姿は周囲から見れば不気味な笑みで剣を構えるという酷い構図であったが、セヴランはリーナのこの表情が何を意味するかを経験則経験則的に理解しており


 ……これは、また無茶苦茶を言うな…………


 セヴランの嫌な予感は今までもよく当たり、今回も例外ではなかった。


「あと三日…………」


「え?」


「あと三日を凌ぐわよ、すべてはそこからね」


 リーナが告げた三日という日数、これが何を意味するかはバーンズとエメリィしか知らないため、皆が疑問を抱えた困惑の表情を見せる。しかし、リーナはそれに答えることなく、この日の会議は終わりを迎えたのだった。

 

どうも、作者の蒼月です。

会議の描写とかどう書いたら人に上手く伝わるのか、コレガワカラナイ

ここ最近話があんま動かないですけど、暫くは戦闘のない日常(?)パートなのでお許し下さいm(__)m

では、次も読んでいただけると幸いです。

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