第三十九話~目覚め~
「――――――なぜだ!」
音、何も無い空間にそれはこだまする。
「――――どうしてこうなるんだ!」
……なんだ、これ……男の声?…………
セヴランは何も無い空間、闇の中で目を覚ます。己を見ることも出来ず、光は無い虚無。
ただ響く音にセヴランは耳を傾ける。
「……こんなことなら……いっそ……全てを…………」
……これは誰かの記憶なのか?
セヴランの問いに答える声はない。ただ、言葉は続けられる。
「そうだ、憎め!全てを憎めばいい!その時こそ、お前は解放され――――」
……別の声か、なんなんだこれ
男二人の会話が虚無に響く、しかしこれが何を意味するのかはセヴランには理解出来なかった。
「人を滅ぼすなんて!そんな事私には……」
虚無に新たな女性の声が生まれる。
……今度は女?それに滅ぼすってなんの事だ?
言葉の意味するところはセヴランには分からない。しかし、虚無の中で意識だけの状態の為、話を聞く他選択肢はなかった。
「もう嫌ッ!こんなこと……無駄に死ぬだけの戦いなんて!」
……泣いてる……のか?
女性の声からは悲痛な悲しみが溢れ出していた。しかし、声だけのそれにセヴランは何も出来ることはない。
……いったい、これは何だ?夢なのか?
答えのない問いに、新しい男の声が生まれる。
「確かに……人間は何度でも過ちを繰り返すかもしれない……だが!その度に俺達みたいな馬鹿が現れるさ!」
「…………人間はいつもそうやって口先では立派なものです…………ですが、私も馬鹿なのでしようか、貴方達を信じたいと思うのです……」
……こいつらは、いったい…………
会話の意味を考えるより先、闇に光が差し込みセヴランは永き虚無から目覚めてゆく…………。
「こ……こは……?」
目を開けると広がっていたのは、薄暗い天井であった。
「目をさましたんですね!先生ッ!セヴランさんが…………」
体は横にされており、体が言うことを聞かず視線だけを動かす。セヴランの近くには、同じようにベッドに寝かされた負傷兵が並んでおり、この場がサファクイル基地内救護棟であると理解する。
セヴランはゆっくりと体を起こし、周囲の状況を確認していく。
「ああ、まだ寝てないと駄目ですよぉ」
若い、まだ少女と呼べる程の年頃であろう救護兵は頬を膨らませながらセヴランに注意を促してくる。
「そうも言ってられないだろう、俺はどのくらい寝てたんだ?」
「えっと~、貴方が担ぎ込まれてからだからそんなに時間は経ってないけど」
少女の言葉を聞きながら近くの窓に視線を向けると、既に日が落ちつつあり戦闘を開始してから半日近くが終わろうとしていた。
「こうしちゃ……いられないな」
セヴランがベッドから起き上がろうとすると、少女は慌てて手で制し
「だ~か~ら~、今はまだ安静にしててください!」
セヴランは少女の迫力に押され、諦めのため息を吐きつつ
……戦況はどうなったんだ、それにあの夢は…………
戦闘の結果、謎の声、気になることは幾つかあったが、動けないのでは仕方がないと再び横になろうとしたが、今度は別の人物それを止められた。部屋の扉が開かれ、銀の髪を夕日に照らされながらリーナが現れたのだ。
「あら、思ったより元気そうね」
「再開そうそう辛辣だな、外はどうなんだ、リーナ」
リーナの安定の態度に苦笑しつつも対応し、昔と変わらない構図であった。リーナはセヴランの寝るベッドに腰かけると、足と腕を組み
「そうね、とりあえずは均衡状態かな。聖獣が動けないみたいだから、とりあえずは防げてる状態ね」
「その言い方だと、あんま芳しく無さそうだな」
リーナはセヴランの言葉に頷き
「そうね、このままだと持つのはあと数日でしょう。貴方も会議に出てもらうわよ」
リーナの発言に救護兵の少女は見過ごせないと
「ちよっと、彼はまだ負傷してるんですよ!まだ動くなん――――って、ちよっと!何立ち上がっているんですか!」
少女がリーナに止めるよう促すうちにセヴランはベッドから完全に起き上がっていた。
セヴランは体の痛みを我慢しつつ、隣に置かれていた剣を手に取り
「すまないな、治療は助かったよ。それじゃあ、いくかリーナ」
「えぇ、そうね」
二人は再び戦場に戻るため部屋の扉を開き、戦いに戻っていった。
どうも、作者の蒼月です。
またまた短くなってしまったぞ本編、気を付けてもどうにもならないんですよね~これ
そして出てきた謎の声、これが意味するところとは!(書くことが思い付かなかった字数稼ぎですハイ)
では、次も読んでいただけると幸いです。




