第四百九十五話~目覚めを待つ鍵~
ヴァンセルトはこれまでに内衝撃を受けていた。セヴランに遅れを取ったなどということではなく、純粋にセヴランに対して驚愕や畏怖、そしてなにより感動という気持ちを得たからだ。その表情は笑みが垣間見え、気付く者はいないだろうがヴァンセルトは待ちわびていたのだ。この時を、自らを超えてくれる存在が現れることを……。
客観的事実からして、ヴァンセルトは強い。並ぶ者はほぼいないとされる、まさに大陸最強。その名声に恥じぬ功績を上げ、誰よりも戦い抜いてきた。だが、その強さには限界があった。ある存在に勝てず、ヴァンセルトは多くのものを失ってしまった……。故に、舞い降りた一縷の望みに全てを賭けてきた。己の持つ全てを投じ、今ようやく最後の欠片が目の前に姿を見せようとしている。この時をどれだけ待ちわびたか、思い返すことさえ出来はしない。
けれども、まだ完成には至ってはいない。今のままでは終焉には抗えない。鍵を目覚めさせる、それは今の自分に与えられている役目。それの重要さと厄介さを理解しているからこそ、ヴァンセルトは乾いた笑いがつい溢れてしまった……。
「ッ!」
ヴァンセルトを氷の剣で貫いたセヴランだったが、そこに勝利を確信出来るような手応えがない。むしろ、目の前で見えた光景はセヴランを絶望させるには充分過ぎるものだ……。
音を鳴らして粉砕する氷剣、ヴァンセルトは腹筋を使い氷を砕いて見せたのだ。幾ら氷とは言え、セヴランの魔法によって作り上げている氷。その強度は鋼鉄の武器と何ら変わりない。それを腹筋だけで砕くのだ、セヴランが絶望しそうになっても仕方ないだろう。ヴァンセルトは氷を砕いたかと思うと、そのまま目の前にいたセヴランを蹴り飛ばす。
完全に防御を捨ててしまっていたセヴランはこれを完璧に受けてしまい、圧倒的威力の前になす術なく後ろへと吹き飛ばされる。何度も地面へと叩きつけられ、その度跳ね上がりまた地面へと……この繰り返しが幾度かあり、その上高速で転がり続けるセヴランに、跳躍して来たヴァンセルトが上から踏みつけてきた。
セヴランを足場にして地面を滑り、暫くしてようやく止まる。そしてその頃になると、セヴランの姿は見るも無惨な姿へと変わり果てていた。
「まだ息がある……流石のしぶとさだな、だが」
ヴァンセルトは大剣を柄にもなく逆手に持ち替え、セヴランを串刺しにせんと振り下ろす。今のセヴランでは何の反応も出来はしない、だからこそ誰かが守るしかなく……
「うおおおぉぉおおぉぉッ!!!!」
鬼の形相で剣を降り構え、そこにはモースが突撃を行うのだった。
どうも、作者の蒼月です。
投稿遅れ、期限が過ぎてしまい申し訳ありませんでしたm(__)m
投稿ペースは上げることは難しいので、維持する方向で努力をしていきます。また、内容も早く進めれるように、次の文章量を戻せるように頑張りたいと思います……
では、次も読んで頂けると幸いです。




