第四百九十一話~諦めを許されぬ存在~
煙に包まれ、ロイヤルガードから逃れたセヴラン。いや、逃がされたというべきか。一瞬で森まで撤退させられ、木々の茂みに隠れるように地面に降りたセヴランは、音を立てないよう気を使いながらも周囲に苛立ちを見せた視線を向ける。その瞳を仲間に向けるのは初めてだったか、ブラッドローズの隊員達やモースまでもが、完全に恐怖を持ってしまった。
「何故、戻ってきた……」
どす黒く、重たく響く声。そこに含まれる苛立ちとは、単純に一つではない。複雑に幾つもの感情と思惑が絡み合った、面倒なもの。それを向けられてしまったモースは、自分がこの事態を生み出したのだから責任を負うのは仕方ないと、セヴランに答え始める。
「セヴラン、今フィオリスはお前を失う訳にはいかない」
「民が死ぬ方が、問題だ……お前は、これ以上事態を、悪化させたいのか……」
「違う。だが、お前が死ぬことで事態が悪化するのも確かじゃないか」
「それを……お前が、決めると?」
「あぁ、民を守るためにも、お前を失う訳にはいかないと言っているんだ」
セヴランの言葉は、あまりにもキレが悪い。それもその筈、圧力こそ感じるが、セヴランはその身がボロボロだ。腕を失い、片目は見えず、血を流し、およそ生きているとは言えない様。そこまでセヴランに責務を押し付けておきながら、今更勝手な話だとも思う。
「セヴランは、ラディール大将と共に、その首を差し出すことでことを収めようとした。この国の全力を必要とする戦いでは、フィオリスに勝ち目などあり得ない。だから昔の戦い方として、決闘に近い方法を……だけれど、単にそれをロイヤルガードが認めるとは思えない。だから、命を賭けて抵抗することで、フィオリスの価値を認めさせようとした。違うか?」
ここまでのモースの予想。ラディールからの情報も合わせ、モースの中ではこれは確信に近かった。そしてそれにセヴランは頷くことも答えることもなく、モースが話を続けるしかない。
「でもセヴラン、それで命を賭けたとしても、ロイヤルガードが――パラメキアが、フィオリスの民に手を出さないという保証はない。むしろ、フィオリスの護り手とも言える存在を失えば、フィオリスの発言力は失われる。そうなってしまえば、誰が残されたフィオリスを守る?民を残して、責任を放棄して死ぬことが、軍人に許されるとでも思っているのか」
「モースッ……」
明らかな敵意、それも仕方もない。これはあまりに無責任、そして酷い物言いだ。こんな言い方をされてしまえば、ブラッドローズの人間であれば答えることは出来ないだろう。セヴランも様々な苦悩をし、悩み抜いた末に出した答えがこれなのだろう。それをセヴランを失えないという理由だけで止める、これがどれだけ愚かなことなのか、モース自身には分からない。
だけれども、モースにとってそれが正しいと思ってしまったのだから、やるしかないのだ。普通の軍隊ならばあり得ないだろうが、指揮系統が複雑かつ曖昧なブラッドローズ故に起こりうること。これが今後どう未来を変えるのか、それは今この場にいる者で知る者は、誰も居なかった…………。
セヴランとモース達の間には、相当な溝があると言える。今ここで対立していても意味はない。危険な状況に変わりはなく、早くこの状況を立て直す必要がある。
そんな焦りが大きくなる中、風圧が森の内へと襲い掛かり、煙が切り裂かれてしまったことが視界に映る。大した時間も稼げず、ロイヤルガードが動き出したことを確認。それにはセヴランも争っている暇がないことを納得してか、砕けていた氷の腕を再生させ
「モース、リノームを止めろ……ヴァンセルトは、俺がやる……」
「え、あぁ……任せろ」
セヴランはどうにかブラッドローズも率い、ロイヤルガードと戦い抜く道を選択せざるを得なくなってしまったのだった…………
どうも、作者の蒼月です。
今回はあまり内容が進んでません、申し訳ないです。ただ、ここでの最終戦に近いので、こういった会話も必要なので書いております。
もっと内容をきちんとまとめられるよう、頑張りたいです……
では、次も読んで頂けると幸いです。




