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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第十章~散りゆく命~
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第四百八十六話~敗北への道~

 部隊について説明するまでもなくラディールの理解を得られたモースは、刻一刻と変化する戦場の状況に冷や汗を垂らす。正直、モースが出てきたのが正解か間違いかと問われれば、モースも間違いだと答えるだろう。理由として、そもそも攻撃能力の低さだ。

 銃の破壊力、確かにそれは有用ではあるが絶対数が少ない。そもそも、ブラッドローズとパラメキア軍だけで数百倍は戦力差があるというのに、銃のみの攻撃に限定してしまっては、実際に動ける人数はもっと少なくなる。今も、ブラッドローズで前線まで出てきているのは百人程度でしかない。更にそこから再装填の為の下がる部隊に、前線と装填の間を繋ぐ中間の部隊、これだけ部隊を細分化してしまえば、一度に前線に立てるのは三十人程まで減ってしまうのだ。まあ、ブラッドローズであれば三十人でも相当な戦力であることは間違いないが、それでも戦場全体の割合から考えれば焼け石に水に過ぎない。

 この絶望的な状況、この命令無視をしてまでもセヴランを助けることが必要だとしたモースだが、これだけでは決定打に欠けることは分かっていた。


 ……今のままの速度だと、セヴランを助けることまでは出来ない。やはり、誰かを切り込ませる必要がある……けど、それをすれば犠牲が増えるのは確実か……


 どっちの選択肢を取ろうとも、モースからしてみれば最悪の一言だ。セヴランも、部隊も、どちらも失うわけにはいかない。それを両立する術があれば良かったが、そんなものはモースは持ち合わせていなかった。刻々と過ぎる時間は徐々に焦燥感へと切り替わっていき、モースは無線で求められていた指揮も遅れが出始める。


「ッ!、後退急げッ、装填を急がせろ。今なら後ろから詰めれば隊列を維持出来るッ!」


『し、しかし、それでは次の装填までの負担が』


「言ってられるかそんなことッ、何としてもセヴランは失えない、これは絶対だッ!」


『り、了解ッ』


 モースの指示からことの重要性を理解している隊員は、即座に通信を終わらせ行動に戻る。今回の作戦指示自体は、ここに出てくるまでに既に全て終わらせてある。モースがすることは、変化する戦場で対応した指示を出すことに過ぎない。故に、今は指揮に専念し、比較的頭を働かせれるが…………


「モース、ブラッドローズをどう動かすつもりだ。セヴランはここで死ぬつもりだぞ。そうでもしなければ、これは止められない」


「それが一体何の役に、それこそセヴランを失えば止められないでしょうッ!」


「その程度のこと、セヴランが理解していないとでも思っているのか?ブラッドローズは、もう少し優秀な連中の集まりかと思っていたんだがな」


「ッ……」


 モースの考え程度なら、セヴランは既に想定済みと言わんばかりのラディール。モースも自分なりには思考を巡らせているつもりだが、それを無意味と否定されれば苛立ちも覚える。しかし、この場においてはそれは正しいのだろうと自分に納得させるしかなく、ラディールの続けられる言葉に耳を向ける。


「そもそも、ここでの戦いは現状の戦力では敗北する。だが、徹底抗戦したところで、全滅させられるのが精々。もしそうなった時、王家もなく、軍も失い、残された民に安全が約束されるだろうか」


「それは――いや……」


「確証などないだろう。今必要なのは、フィオリスが敗北しようと、民を守れる方法だ。そうなった時、取れる選択肢は限られている。分からないか?」


「…………」


 モースは思考する、セヴランは一体何を考えているのか。一体何故、ラディールと二人で残ったのか。戦うのなら、戦力を分ける意味はない。モースが考えたように、銃のみを使い消耗を抑えた戦いだってできた筈だ。それに気づかないセヴランではあるまい。ならば一体…………思考は巡らせ、加速し、答えへの道筋を探す。


 ……何が、一体何があるんだ。戦力?戦術?そんなものじゃない。あいつは、俺が簡単には想像しない先まで考えているの……なら考えろ、俺が考えないようなこと…………くそッ、何なんだ。これがどう民を守ることに繋が――


 加速していた思考の内、何かが引っ掛かった。それが何か、すぐには出てこない。しかし、その違和感は確実なものであった。


「ラディール大将、一ついいですか……」


「何だ」


「貴方ならここの戦い、どう終わらせますか」


「……無理だな。戦いが始まった時点で――」


「やはり、貴方も自己犠牲ですか」


「…………」


 ラディールの言葉に表れたその遅れを、モースは感じ取った。少なくとも、ラディールとセヴランは同じ気持ちを持っているのだろう。そこに答えがあり、確信に至る。


 それを言葉にするかどうかは、少し迷った。けれど、言葉にする必要があると強く思い


「二人は、自らが国の意思として戦い、死ぬことによって降伏の材料としようとしているのですね」

どうも、作者の蒼月です。

また投稿が3日という期限を過ぎてしまい、誠に申し訳ありませんでしたm(__)m


そろそろ、この章も終盤なので早くまとめられるよう努力していきます。


では、次も読んで頂けると幸いです。

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