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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第三章~始まりの国境~
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第三十四話~死を覚悟し者達の猛攻~

「自分で言ったはいいが、これは相当キツいな……」


 敵に囲まれていた第一大隊の歩兵を助けたセヴランは周囲を見渡し、辺り一面敵という状況に苦笑する。


 ……でも、やるしかねぇよな!


 セヴランは口元を笑わせ、剣を掲げる。


「第一大隊!私が中央を切り開く、騎兵を中心について来い!」


『了解ッ!』


 言葉と同時、セヴランは凍る大地の上を駆けた。追撃の為に隊列の伸びきったレギブスの先頭の兵からセヴランと戦闘が開始した。

 セヴランは雷の魔方で高速での移動を行い、敵が反応するよりも早く敵三人の背後に回り込み、その首を斬り落とす。突然三人の首が落ちるという事態にレギブスの兵は動揺し、足が完全に止まる。


「はあぁぁぁぁッ!!!」


 三人の首を落とすと止まらず、次の目標に突撃する。レギブスの兵は足は止めたものの、そこからの切り替えは早かった。


「敵は死に損ないの部隊に過ぎん!数で囲んで叩くんだ、ここで奴を討ち取れば報償を出すぞ!」


『うおぉぉぉぉ!!!!』


 突撃するの姿をレギブスの兵は捉えれることは不可能である、しかしレギブスの兵は肉壁となり迫り、セヴランの動ける範囲は制限されてゆく。


「その程度かぁぁぁ!!!」


 セヴランは迫るレギブスの壁に正面から挑む。向けられる攻撃をすべてかわしきり、一人の首を鎧の隙間から剣で貫く。貫くと即座に剣を引き抜き、次の敵への攻撃を狙う。

 しかし、次の敵に振り向くと既に敵の刃が降り下ろされていた。


 ……まだまだッ!!


 セヴランは体への負担を気にせず、あり得ない程の加速で攻撃をかわす。攻撃をかわし敵の背後に滑り込み、鎧のない足の関節を剣で後ろから叩き割る。

 更に、地面スレスレを目にも止まらぬ早さで駆け、敵二人の足を断ち斬った。


「――――――ッ!?」


「ぐはぁぁぁっ!!」

「な、なんで…………」


 セヴランが三人の敵を無力化すると同時に矢の雨が降り注いだ。レギブスの兵は味方の存在を気にせず、セヴランめがけ矢を放ちつづける。


「無茶苦茶だなッ!」


 セヴランはとっさに氷の障壁を作り出し矢を防ぐが、そのすべてを防げた訳でなくいくつかを体に受けた。


 ……このままでは――――――――!?


「いけえぇぇぇぇ!!!!」


 セヴランが視線を向けた先、矢を受けることを恐れず突撃する騎兵の姿があった。騎兵は矢を正面から受け、いくらか脱落するが敵弓兵の部隊に切り込んでゆく。


「無茶するな、だが助かるッ!」


 騎兵が切り開いた道を無駄にすることなく、セヴランも弓兵に迫る。騎兵の突撃によりレギブスの弓兵は槍で体を貫かれ、馬に踏み潰されその攻撃力を失う。

 セヴランは弓兵を騎兵に任せ、更に後続の敵へと突撃する。


 ……まだだ……まダ………


 セヴランはレギブスの兵を一人、また一人と削ってゆく。しかし、セヴランの体への魔方による負担は尋常ではなく常人ならば痛みで動くことすらままならない程になっていた。


「――――――ッ!」


 セヴランは迫る剣への回避が遅れた、体を回し致命傷はかわしつつ攻撃してきた敵の首にめがけ剣を振り抜く。剣は敵の首に食い込み動きを止められるが、セヴランは力任せに剣を引き抜き次の獲物を狙う。


 ……力なき民を襲う敵……殺す……殺シテヤル…………


 冷静な思考を失いつつも、セヴランは敵への突撃を止めることはしない。更に速度を上げ、敵の首、腕、足へとその刃を放つ。


「な、なんなんだよ、こいつ!」

「ば、化け物じゃねぇか!」

「死ね!死ねぇぇぇ!」


 レギブスの兵がセヴランを囲むように突撃する。しかし、セヴランは今さら動じることはない。

 突撃してくる一人目の攻撃をかわし、背後から背を斬りつける。斬りつけると同時、瞬時に次の敵に視線を向ける。既に敵は二人が剣を振り上げており、受けに回るのは無謀であった。

 故に、セヴランは頭で考えるよりも先に動いた。地面を蹴り、体を縦に回転させながら敵に自ら間合いを詰める。回転しながら迫るといった常識から外れた動きをするセヴランに対応出来ず、レギブスの兵は剣を弾かれる。しかし、セヴランの攻撃は止まらない。敵二人の剣を弾き横を過ぎると氷の足場を空中に作り出し、足場を蹴り空中での方向転換をする。速度と質量から蹴った壁は砕け散るが、セヴランは速度を得て敵の背後から剣で串刺しにする。


 ……やはり、カーリー大将には及ばない雑魚か


 模擬戦ではカーリーは対応出来たものの、これを対処できる一般の兵などはおらず、レギブスの兵は簡単にその命を奪われてゆく。

 セヴランが次の獲物と視線を向けると、レギブスの兵はセヴラン達を包囲していた。セヴランや騎兵、歩兵はレギブスの兵を幾つも削ってはいたが、レギブス側は犠牲を払いつつも遂に包囲を完成させ、第一大隊は再び窮地に陥った。


「まだま――――ッ!」


 セヴランは包囲を崩す為に動こうとしたが


 ……体の限界か!!


 セヴランの体はいたるところから出血し、魔力の消耗も合わせ動ける状態ではなくなっていた。痛みを無視し、敵の排除を優先したためセヴランの体はとうの昔に限界は超えていた。それでも、止まることは死を意味したため限界まで体を酷使していたのだ。


 ……まだだ、まだ……ここさえ潰せば!


 セヴランは体にむち打ち、次の攻撃の為に第一大隊に指示を飛ばす。


「騎兵!あと少しでいい、時間を稼げ!」


『了解ッ!』


 騎兵はその機動力と突破力を生かし敵の部隊を突破してゆく。しかし、これは一時的な攻勢にしかならない、それを理解していたためセヴランは剣を構え詠唱を始める


「雷鳴至るところところに我はあり、天をも引き裂き裁きの雷よ、我剣に宿りて敵を討ち滅ぼす刃となれ!」


 詠唱とともにセヴランの剣に雷が宿る、初めは小さな光がやがて大きい輝きとなり、剣に稲妻がほとばしる。


「騎兵!後退しろッ!」


 セヴランの言葉で騎兵は即座に後退する。レギブスの兵は、ここぞとばかりにセヴラン達めがけ突撃してくるが


「切り裂け、雷光一閃ッ!」


 セヴランはレギブスの兵に向け、剣を横に振り切る。剣が降られると、剣から稲妻が迸りレギブスの兵達が吹き飛ばされる。先頭の者は稲妻に鎧を貫かれ、その後ろの兵は稲妻の衝撃波で殆どの者が吹き飛ばされた。


「はぁ……はぁ……はぁ…………」


 大規模魔方を発動し、剣に付与さしていた魔力もかなりの量を消費し、体の限界も迎えていたセヴランは剣を地に突き立て片膝を地につける。

 レギブスの兵は追撃部隊のその殆どを戦闘不能にされ後退を余儀なくされた。しかし、セヴラン達第一大隊はそれ以上に元の消耗も合わせ戦闘は継続不能になっていた。両者がにらみ合いの状態になるかといったその時、第一大隊に一つの朗報が入る。


「第四大隊は撤退完了ッ!」


 第四大隊の撤退完了という報に第一大隊は役目を果たせたのであった。すぐさまセヴランは怒号を放ち


「第一大隊!負傷兵を優先して基地内まで後退しろッ!これ以上誰もやられるなよッ!」


 第一大隊は撤退を開始し、セヴランもレギブスの兵へ睨みを効かせ、後退する第一大隊への追撃を許さない。レギブス側は何人もの兵を一人で討ち取ったセヴランに対する警戒から追撃に移る事が出来ず、黙って第一大隊の撤退を見逃すこととなった。




 第一大隊の撤退がほぼ完了した頃、騎兵の一人がセヴランの元に駆け寄り


「セヴラン隊長も早く退却を!」


 セヴランも充分な活躍をし、後退の時間稼ぎは完了していた。騎兵の言うとおり撤退するのが普通ではあったが、セヴランは首を振り


「いや、俺は……まだやることがある……俺を聖獣のところに運んで……くれないか?」


 騎兵はセヴランの言葉に初めは否定しようとした。しかし、セヴランのボロボロになろうとも戦い抜くという固い意思を見せる姿に、民を守る為に戦うということがどういうことかを理解した。故に、騎兵ただ頷きセヴランを聖獣の元に送り届けるため戦場を駆けた。

どうも、作者の蒼月です。

結構書いたつもりが短くてビックリ、モチベーションがとても大事と痛感させられております。

今後も戦闘が続くので、これ以上質を落とさないように(元から低いのはどうか見逃してください(;´д`))頑張っていく所存です。


第一大隊の撤退が完了したものの、第二大隊の撤退に聖獣と解決すべき問題の多いセヴラン達、彼らの今後はどうなるのか。


では、次も読んでいただけると幸いです。

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