第二十七話~帝国最強の騎士達~
パラメキア帝国軍、レギブス方面攻略軍指令部テント内にとある三人の姿がある。三人は皆、紅き色に細部に金の装飾の施された服を身に纏い、悠然とした姿で机を囲み話す姿は単なる武人とは思えない威圧感を醸し出している。
そんな空気の中、一人の兵士が息を荒げながらテントの中に駆け込み一度敬礼をすると
「ヴァンセルト卿!伝令がっ!」
兵士が呼んだのはテント内の三人の中の一人、パラメキア帝国皇帝の近衛騎士、帝国最強と吟われるロイヤルガードの一人ヴァンセルト。彼は手足にのみ紅の色で統一された金属製の防具を身に着け紅の服に身を包み、巨大な大剣とも言える大きさの剣を携える姿は正に武人の王道ともいえる姿である。
ヴァンセルトは落ち着けという風に手をかざしながら
「それで、何があった」
兵士は一呼吸おき、息を整えると
「ヴァンセルト卿が落としたフィオリスのアイゼンファルツ基地に駐屯していた部隊が奇襲を受け後退、アイゼンファルツが敵の手に戻りました!」
手にいれた領土を奪い返されたという兵士の言葉に隣の二人は驚愕といった顔をするが、ヴァンセルトは冷静に
「敵の情報はあるか」
「はッ!交戦した兵の証言によると敵は百名程の少数の部隊だったとのことです、なおその部隊の指揮官はバーンズとの報告もあります」
ヴァンセルトはバーンズという単語に状況を理解する。
「分かった、では駐屯部隊は引き続き国境で待機させておけ。こちらからの進行は不要だ」
「了解であります!」
敬礼とともに兵士は勢いよくテントを飛び出す。兵士の後ろ姿を見送った後、ヴァンセルトは再び机の地図に視線を戻す。地図の隣には先程の兵士が置いていった一枚の紙が増えていた。ヴァンセルトが紙を手に取ると、隣で話を聞いていた二人の内の一人が言葉をつくる。
「まさか、あの国にここまでの力が残っているとは、正直意外です」
言葉をつくったのはヴァンセルトと同じ紅き衣装に身を包むロイヤルガードの一人であるリノーム。若くして親の領地を引き継ぎ、元々高い剣技を才能で腐らすことなく努力で更に磨きをかけ、ロイヤルガードまで登り詰めた正義感溢れる若き騎士。
彼の言葉にヴァンセルトは頷き
「バーンズがここまで早く動くとはな、あの基地を落とすまでは良かったが流石に駐屯の為だけに兵を割くことが出来なかったからな、私の落ち度だ」
ヴァンセルトは自らの詰めの甘さと反省をする。しかし、今回の作戦においてヴァンセルトはほぼ一人で基地を落とした功績を考えると落ち度などはないが、この場においてそれを言うことの出来る人物はいない。
ヴァンセルトが眺めている紙が気になったのか、テント内の残る一人が声をかける。
「ヴァンセルト卿、その紙は」
声をかけたのはこの場唯一の女性、ヴァンセルトやリノームと同じ紅の服を身に纏い、桃色のショートヘアーが特徴のロイヤルガードの一人であるリターシャ。戦場には似つかない美しい容姿、しかしひとたび戦場に出れば個の武勇と指揮した軍を勝利に導くことから戦女神と呼ばれている。リターシャは二人のズボン形式の服とは違い短いスカートを着用しており、その足から覗くスタイルの良さからも彼女の軍に属する男の兵士達からは女神と呼ばれていた。リノームと同じ年であり、彼女は家こそ名家でないものの豊富な知識を活用し文官として名を上げ、剣技も血の滲むような努力で腕を磨き、リノームとともにロイヤルガードとなった若き騎士である。
ヴァンセルトはリターシャの言葉に口元を笑わせ
「あの兵が置いていったこの紙によると、私の部下を退けたのはバーンズではないようだ」
ヴァンセルトの言葉に二人は眉をひそめる。リノームは疑問を言葉に変え
「では、誰が」
「銀髪に赤目の少女、なんでも目で捉えられない速度で動くらしいな。ある兵士の証言だと気がつくと目の前にいる……だそうだ」
そんな少女の話は聞いたことがないとリノームは頭を抱え悩み始める。そんなリノームの様子を気にすることもなく、リターシャは
「バーンズ並みに強い人物があの国にはまだいる……と、そういうことですね」
リターシャの言葉にヴァンセルトは「あぁ」と肯定し
「暫くの間はフィオリスに構ってやることは出来んな、バーンズと同じ実力と考えるならば、下手をすれば七極聖天を相手にするよりも面倒だからな」
三人は机の上の地図、現状の勢力図が書き込まれた地図を眺める。広大なパラメキアとレギブスの中間地点にはいくつもの丸印がつけられており、その中でも最も大きく印の入った箇所が現在三人のいるパラメキアとレギブスの最前線であり激戦地でもあった。
「落とした基地を奪い返されたのは痛手だが、我々は失ったものはない。今はレギブスに集中する時だ、いけるな」
ヴァンセルトの言葉にリノームとリターシャは表情が変わる。今までの平和な空間での姿ではなく、戦場を駆ける騎士の表情に。
リノームは剣の柄が組み合わさった様な己の身ほどある剣を手に取り、リターシャも腰に差している二本の剣を確認する。
ヴァンセルトもまたその巨大な剣を手に取り
「では、我々も行くとするか」
『了解』
テント入り口の幕をくぐり、帝国最強のロイヤルガード達は戦場へと向かっていく……。
どうも、作者の蒼月です。
今回本編進んでないんですよね、すみません次の話は進みます。
ところで、リターシャマジで可愛いんですよ!(本当にこの作者何言ってるんですかね……)
ヒロインのリーナより可愛いと確信しております!(もうヒロイン交代しろよって話ですね)
なんか今回の後書き、色々すみません……
では、次も読んでいただけると幸いです。




