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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第十章~散りゆく命~
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第三百七十三話~逃れられぬ戦士~

 ヴァンセルトとバーンズは互いに攻防を続けるが、それは決着を知らない。いくら互いに英雄と言われる存在だとしても、その英雄同士の戦いというものは常人の理解を越え、二人の間に他の人間は入る余地すらなかった。


「そろそろ、私の剣を返してもらいたいものだな」


「はッ、てめぇが勝手に投げたんだろうが。誰が寄越すかよッ!」


 ヴァンセルトは、バーンズに対し投擲した本来の自身の武器が地面に突き刺さったまま、回収することが出来ていない。それは、バーンズがその得物を手にさせまいと妨害するように、ヴァンセルトと剣の間に位置取りをして戦っている為。バーンズとしても、ヴァンセルトに大剣を手に取られるというのは正直面倒な為に、妨害するように戦っていた。

 ヴァンセルトやバーンズ、他にもセヴランのやリーナの剣など、彼らが使う武器はただの鉄の塊ではない。特殊な素材を用いた一級品であり、故にその激しい戦いにも長い間耐えられるのだ。現に今、ヴァンセルトが拾い振るうただの剣では、一撃ともたずに折れるか粉砕する。いちいち攻撃の度に壊れていては、その武器が勿体なく戦いも余計な手間が掛かる。

 バーンズがヴァンセルトに大剣を拾わせたくない理由はこれだ。今のヴァンセルトは、その戦闘力を充分に発揮出来ない。少しでも楽に戦うならば、このままがいいと妨害を続ける方針を取り……


「まあいい。さて、ならお前はどれだけ集中していられるかな」


 ヴァンセルトは、バーンズが剣を取らせないことに対し、困るでもなく焦るでもなく、冷静に拳を構えた。バーンズは、確かにヴァンセルトがこの程度で楽に戦える相手ではないと理解し、むしろ不利な状況を自ら作っている可能性も考える。故に、バーンズは大剣を低く構え、互いにじりじりと距離を詰め…………


「「ッ!!!」」


 次の瞬間、二人は同時に地を蹴り飛び出す。同時に飛び出た二人は、迷い無く正面の敵へと突っ込む。先に攻撃を加える必要があると、バーンズは大剣を、ヴァンセルトは拳を振るう。

 大剣と拳、同時に振るわれたそれは、先に敵へと届くのは拳だ。圧倒的な取り回しの良さがあり、それが拳の最も大きな利点とも言える。この攻撃の初速の差はどうにもならず、ヴァンセルトの拳がバーンズの胸を捉えた…………。


「……ほう」


 しかし、ヴァンセルトは拳の振るう角度を変える。その瞳は捉えていた、バーンズが下から切り上げようと振るう動きを見せた腕を、攻撃ではなく防御に使おうとしていたことに。

 バーンズは、剣を振るうように動きを偽装し、実際にはヴァンセルトの拳を自身の左腕で受けようとしていた。そうすれば、たとえ初速が早くとも武器の重さがない拳だけであれば、左腕の粉砕程度で拳を受け止めれただろう。けれどそれを、ヴァンセルトには直前で見抜かれた。それがなければ、左腕を犠牲に片手でも大剣をヴァンセルトへと打ち込み致命傷を狙えたと、心の内で舌打ちをする。

 バーンズは予定変更と、考えるより先に腕を動かす。軌道が変わった拳を受け止めるように、身を回し剣を強引に下から切り上げる。大剣の刃の腹を盾のようにして、尋常ではない破壊力を伴ったヴァンセルトの拳を受け止めた。


「厄介だな」


「お前さんが言うなよ」


 互いに再び距離を少し取り、再び刹那の時を駆ける攻防を続けた…………。




 どれだけ目を凝らそうと、意識を集中させようと、その攻撃の全てを見切れないヴァンセルトとバーンズの戦いに、セヴランは呆れそうになりながらも目を釘付けにされる。


「だいぶ、回復はしてきたが……まだ、戦うことは無理か……」


「無理しないで。ここで死なれても、正直困るだけよ」


「分かってる……」


 セヴランとリーナ、そしてラディールの三人は、二人の戦いの余波で飛ばされずに耐えられる数少ない面子だ。二人の攻防のお陰で、パラメキア兵達の多くは吹き飛ばされ、三人のいる位置には誰も近づいてこれない。皮肉にも、敵のお陰で一時的に安全地帯を手にいれていたのだ。ただ、そこから下がることも出来ないまま、三人はひたすらその場で耐え、体力の回復に務める。負傷の酷かったセヴランも、どうにか身体強化の再生力強化によって峠は越えた。後は、今後のことをどうするかを決める必要があったが……


「これ、どうしたもんか……バウル達もバラバラになっただろうし、下手に集めたら囲まれるからな……」


「しかし、このまま私達がバラバラのままでは、いずれ各個撃破される……さて、困ったものだ」


「どうします、ラディール大将。先に、他の連中だけでも撤退させますか。今なら、どうにか間に合うでしょう」


「さて、それも一つの案だ。だけど、それを敵が許してくれるかどうか」


「……五分ってところでしょうか」


「あまり、期待の出来る賭けではないな」


「仕方ないですけどね……」


 ラディールとセヴランは、この状況をどうにかして覆す必要がある。撤退か、攻勢か、どちらにしても、今のセヴラン達に出来ることはあまりに少なく、ヴァンセルトを抑え込むバーンズの結果に頼らざるを得ない状況に落ち合っていた…………

どうも、作者の蒼月です。

さてさて、そろそろこの戦いも一区切りつきそうなところまでは来ているんですが、やっぱセヴラン達が弱く見えるんですよね……これ、弱くはないんですよ?強いんですよ?ただ、そこで暴れてる化け物二人が強すぎるだけで…………


しかし、インフレが激しいという言葉はバトル系ではよく言われることですが、まあ私の作品の場合予定通りではあるんですけどね。物語、それもこれだけではない全ての物語を繋げた中で、既に最強の力を100として数値で決め、出てくるキャラの強さは数値で管理してますので(まあ、その数字1個の差による実力の差は少し大きいですけど)。


話を進めつつ、化け物同士の戦いもどうにか決着を着けさせないといけませんね。


では、次も読んで頂けると幸いです。

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