第三百五十二話~捉えられぬ姿~
パラメキア兵は孤立していたが、そこに現れたラディールの集団。パラメキア側の小隊長も、それがフィオリス側の主力であることは理解し、戦う気力を無くしていた彼らには最早どうにもすることは出来ない…………けれど、そこまで追い詰められたからこそか、小隊長の言葉に反応すら出来なかった部隊はすがるように武器を構え、ラディール達に最後の抵抗と
「くそがッ、やってやる!」
「あいつら全員殺せば、生きて帰れるんだろうが!」
「あんな若造に、殺されてたまるかよッ!」
パラメキア兵の数はおおよそ二百程。これに対し、ラディール達は二十人もいないという比率。確かに、これだけを聞けばパラメキア兵が勢いづいても変ではない。生きたいという願望は、ここでパラメキア側の力へと傾いた。
これには小隊長は願ってもないことだと、どうにか勝てるかもしれないという算段を立て
「いい目だ、さっきまでとは違う。これだと、簡単には勝たせてはくれなさそうだ」
ラディールは、息を吹き替えしたパラメキア兵の様子に、どこか楽しそうに剣を構える。元々、ラディールは戦闘を楽しめるタイプ。レギブス方面軍のセルゲノフなどと違い、敵が強ければそれだけ力を発揮する。それが指揮官として良いのか悪いのかは別として、ラディールの性格は他の指揮官達も理解しており
「大将、笑ってどうするんです。これは、我々が苦しい立場にあるんですよ」
「そうだけど、まあ悲観的になっても仕方ないからね。それじゃあ、誰もやられないように、全員作戦開始」
『はッ』
ラディール達はパラメキア側に時間は与えないと、即座に全員が剣を構える。両者の距離はまだあり、すぐに接近戦は始まらない。が、この戦いでは銃装隊がパラメキア側にいることで、その尖端はすぐに開かれた。
ただ、フィオリス側はラディールしか動かない。他の指揮官はラディールの後ろに控えたまま、ラディールの様子を見守る。これはパラメキア側は更に好都合だと、先制攻撃を仕掛けていく。
「ッてぇぇぇッ!!!」
距離があろうとお構い無しな銃を用いた先制、パラメキアの銃装隊は射撃でラディール達を狙い、完封する作戦を見せる。だが連続で放たれる銃弾を、ラディール達は端から予想していたと回避する。
銃弾が放たれてから避けるのは難しくとも、放たれる前であれば容易。パラメキア兵がこの状況で銃装隊を使わない理由はなく、それは逆に、パラメキア兵の動きを先読みすることに繋がり……
「残念、それは知ってたよ」
銃の射撃は無限ではなく、その再装填の隙にラディールはフラフラと距離を詰める。その不気味にも見える動きに、パラメキア兵は反応をすることができず……次の時には、体の感覚を奪われていた。
「くそッ、ラディールをここで始末しろッ!奴を押さえなければ――」
「私がどうかしたか」
パラメキア兵の中で、ラディールの重要性を理解している一人の兵が声を上げるが、既にその目の前にラディールはいた。一瞬で、誰の目にも止まらず動いたラディール。それには、パラメキア兵の殆どが驚愕し、数人の戦ったことのある者だけは仲間へと指示を飛ばし
「ラディールから意識を反らすなッ!奴は視界から消えるッ!」
「数で囲め、普通の攻撃では見切られるッ!」
ラディールとの戦闘経験から、パラメキア兵に情報が伝わる。それは、間違いなくラディールの戦い方の特徴であり、自身の力を知っている者の存在にラディールは笑い
「私と戦った人間が、この場に来ていたとは。ますます不利になってくるな」
敵に警戒されれば、それだけ戦い難くなる。しかし、ラディールは不利になったというのに、ますます余裕の笑みを見せ
「それでどこまで、楽しませてくれるのかな……」
その言葉が響き、最前列のパラメキア兵に伝わる時には既に、一人の首にラディールの剣が突き立てられていた…………―
どうも、作者の蒼月です。
ここ最近、投稿ペース落ちて申し訳ありませんm(__)m
どうにかペースを保ちたいですが、中々難しいものです……(悩み中)
本編ですが、思ったよりも進みませんでした。まあ、次回は確実にラディールの戦闘シーンを入れて、その次は少し悩んでいるといった感じです。ただ、一つ一つの戦闘に掛ける時間をあまり長くし過ぎないようには注意していくつもりです。
では、次も読んで頂けると幸いです。




