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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第十章~散りゆく命~
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第三百五十一話~敵軍の将~

 ラディール達が基地から戦場へと向かい始めた頃、セヴラン達も通信機から響く言葉で状況を理解していた。自軍の最高戦力が出るということであり、少なくともこの襲撃による効果が認められなかったということだ。この作戦が開始されるということは、ブラッドローズは急ぎ集結する必要があり、敵の波をようやく乗り越えたセヴランとリーナ、バウルにモースの四人は森を駆け


「まったく、こりゃいくらなんでも早すぎねえか?もう戻ることになるなんてよ」


「仕方ないだろう。ヴァンセルトに手の内を読まれた上で利用された……むしろ、ラディール大将の指示がなければ、俺達があのまま包囲されて逃げれなかったかもしれないからな」


 セヴラン達は、森で部隊が包囲されてから即座に撤退を選んだ訳ではなく、後退気味にその場で留まっていた。そもそもセヴラン達が敵陣に切り込んだ理由は敵の注意を引くためのものであり、即座に下がれば敵の追撃を促したかも知れない。故に、セヴランは撤退の判断を下さず留まったが、ラディールは躊躇なく次の作戦に移した。次の作戦へと移行する指示が下れば、それまでに受けている作戦は破棄される。セヴランもその指示通り、こうして撤退に移ったという訳だ。

 敵から逃れても、森を駆け抜ける為に集中は切らせれないが、比較的気を休めれる状況でリーナは脱力し


「でも、どうするつもりなのかしら。いくら主力を集めたところで、あのヴァンセルト達相手じゃあねぇ」


「どうでしょう。この作戦にはブラッドローズのほぼ全部隊も投入します。であれば、敵戦力を少数精鋭で削ることが目的では」


 リーナの疑問に、モースは現状比較的考えやすい案を上げるが、それにはセヴランとバウルは違うだろうと


「俺がラディールだとすりゃ、ここでヴァンセルトに仕掛けない手はねぇがな」


「同感だ。そもそも、まともに戦って勝てないならば、頭を潰す必要がある。わざわざ主力を集結させる理由が、敵戦力を削るに止まるとは思えないな」


 バウルはラディールと似た思考から、セヴランは指揮官としての考え方から答えを導く。モースの意見が間違っている訳ではない。部隊の損耗を抑え、敵と長期に渡って戦うならばモースの考えは正しい。けれど、戦力差があるパラメキアとの戦いで長期戦は無謀、短期決戦で作戦は立てているのだ。

 短期決戦であるならばどうするか、その答えがセヴランとバウルの意見そのものであり、リーナとモースも納得するように首を縦に振り


「それなら、早く皆のところへ戻ってあげましょう……さっきの撤退支援で、誰かやられているかもしれないわ」


「そうだな……急ぐぞッ」


 四人は更に走る速度を上げ、木々の間を縫うように駆けていった…………。




 森の中央を走る街道部分で、撤退をすることが出来ず取り残されたパラメキアの部隊が幾つかあった。彼らは、もとより囮に使われることを理解していた。仲間の部隊が包囲を仕掛けるまでの間、敵部隊を釘付けにする役割を任され、それは途中までは順調であった。ただ、そこには上層部の誤算があったのか、仲間の包囲作戦は失敗に終わった。理由は分からないが、次の突撃作戦への指示が来ないことがそれを証明している。

 小さな部隊をまとめているパラメキア軍の小隊長は、苦い顔を浮かべ仲間へ指示を出す。


「どうにかここを下がるぞッ!敵の攻撃は止んでいる、仲間の攻撃が成功している証拠だ、この隙を逃すなッ!」


 鼓舞するように力強く、小隊長は声を張り上げる。しかし、それに続く声には気力がない……というより、もはや返答すらない。仲間の気力が失われている理由は単純、自分達が死の間際に立たされ、希望がほぼ残されていないことを理解しているからだ。どんなに小隊長が声を上げようと、仲間の攻撃が成功はしていないことは空気で広がっている。気休めの言葉では心を支えれず、囮役である自分達の助かる未来が想像出来ないのだ。

 こればかりは、小隊長だけでどうにかできる問題ではない。ロイヤルガード程の存在であれば別であったかもしれないが……そんなありもしない仮定を話しても仕方なく、小隊長はまだ諦めないと剣を掲げ


「さぁ、ここを抜ければヴァンセルト卿に全てを繋げられる。そうすれば、我らの勝ちだッ!」


「でも、そうはさせないよ」


「ッ!?」


 小隊長はその耳に仲間ではない者の声が届いたことを、少し遅れて理解する。今、自分達に語りかける人間が何者か、それを考えることは本能が拒み、しかし視線と剣は反射敵に声の方へと向けた。

 そこに居たのは、仲間を数十人をつれた比較的若い騎士。鎧を身に纏い、どこかにこやかに笑う青年とも言えるそれは、その手に持つ刃を自分達へ向けていた。これが意味するのは、少なくとも敵が自ら攻めてきたということであり


「パラメキアの好きなようにはさせない、私達がいる限りはね」


 フィオリス兵の青年……方面軍大将ラディールは、パラメキア兵へとその前のめりに駆けた。

どうも、作者の蒼月です。

また1日空いて申し訳ないですm(__)m


はいはい、やっとラディールの戦闘シーンが始まります。ついでに、パラメキア側のモブの戦いも見れるかな?

セヴラン達も合流しようとしてますし、部隊戦の方も今後、進めていきたいと考えています。頑張っていきたいところです……


では、次も読んで頂けると幸いです。

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