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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第十章~散りゆく命~
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第三百五十話~動く指揮官~

 ブラッドローズの活躍により、銃装隊部隊の撤退は順調に進んでいた。被害は皆無とはいかないが、それでもパラメキア軍に包囲をされたことを考慮すれば、奇跡的な成果だろう。

 ラディールはここまでの結果に満足げに頷き、笑みをその心の内が謎な笑みを浮かべ


「流石はヴァンセルト、この程度じゃ有利は揺らがないか」


「ナイル大将でさえ、ヴァンセルトには常に一手遅れていましたから……あの男の限界というものがどこにあるのか、気になるところですな」


「そんな限界、見たくはないけどね」


 ラディールの隣に立つ指揮官は、ヴァンセルトの実力を知る故に今回の遅れは仕方ないと、遠間しにラディールを支える発言をする。ラディールはこの程度で落ち込むようなたまではないが、一応支えることは必要だという配慮だ。

 ラディールも、部下が自分のことを気に掛けてくれていることには感謝し、自分はそれに応える義務があると


「さて、森での襲撃による戦果はいまいち。セヴラン達が頑張ってくれているからどうにかなったが、敵戦力は未だ無傷に等しい。今のままで敵に基地に取りつかれてはどうにもならない。まだどうにか敵を削る必要がある……さて、何か案がある者はいるか?」


 ラディールは周囲にいる十数人の指揮官へと言葉を向ける。ラディールの中にも考えはあるが、まずは人の意見を集めてから総合して考える。一人で暴走する可能性を無くすものであり、ラディールから意見を述べては後の者が発言し難くなることも考慮したもの。これで、二人の指揮官達が意見を出し


「やはり、奇策は捨て基本的な戦いをするべきかと。このまま小手先の作戦を用意しようと、ヴァンセルトには見抜かれるでしょう。見抜かれるだけならばまだしも、今回のように利用までされてはたまったものではありません」


「いや、だからこその奇策でいくべきでは?確かに、小手先の作戦で通じないのは分かっている。けれど、まともに戦って、あのパラメキア相手に勝つことは不可能。みすみす部隊を全滅させる訳にもいかないでしょう」


 意見は大きく二つに分かれる、作戦を続行するか否か。ある意味当然ではあるが、フィオリス軍も意見を完全にまとめれている訳ではない。こうして意見も分かれ、下手をすれば対立が起こる。そんな無駄なことを許す状況ではなくとも、人間というのは難しい生き物だ。

 だから、ラディールという全てをまとめる者は、最終的な意見を総合し


「やるなら、敵大将との一騎討ち。または、それに準じた代表同士の戦いか。ロイヤルガードを押さえれば、こっちは勝つ可能性が見えてくる。ただ、逆に言えばそれで負ければ全てが終わる……これは賭けだね」


「賭けではありますが、現実的な意見ですな」


「ナイル大将も、その道を選ばれましたから」


「うん、ナイル大将は最後までロイヤルガードを抑えてくれた。だからこそ、前は部隊の撤退ができたからね。私も、そうあるべきなのだろう」


 ラディールは、パラメキア方面軍前大将、ナイルの姿を瞼に浮かべる。最後まで背を向けることなく、ロイヤルガードと渡り合い部隊を守った。ラディールは副官として最後までナイルと共に戦うつもりでいたが、ナイルに殴り飛ばされ撤退部隊の指揮を任された。それがなければ、ラディールは今ここに居なかったであろう。

 そしてナイルが消え、自分が大将となり、今こうして仲間の命を背負っている。今ならば、ナイルの気持ちも理解できると口元を笑わせ、遂に腰の剣を引き抜いた。


「さぁて、どっちの意見も採用しよう。部隊はこの基地で防戦に徹し、動ける人間は私と共に、敵陣へ切り込もう。ヴァンセルトがつれれば上々。最低でも、千人程は崩したいかな~」


「なかなかに、我らの大将は無茶なことを言ってくれます」


「常識の枠に囚われない我々の戦い方、存分に見せる好機でしょう」


「ならば、ここにいる全員は出陣で異論ないですね」


 ラディールの作戦、それを周囲にいた指揮官達は理解していた。それぞれが剣を引き抜き、通信機を出したラディールが部隊全体へ作戦開始を告げ


「それじゃあ皆、予定より早いけどこっちから仕掛ける。各中隊長以上の者は城門から出撃、残る全部隊は基地に敵を一人たりとも通さないように。仮に私達が全滅した場合、そこからは残っている誰かに指揮権を移す。厳しい戦いだけど、死んでも負けないようにね」


 ラディールの通信が終えると同時、基地内部から雄叫びの如く戦士達の咆哮が連鎖する。まだまだ心は折れていないなと、仲間のやる気に基地を任せ


「さてと…………全員、用意はいいな」


 ここまでにこやかにしていたラディールは、何かが切り替わったように、その瞳から光を消す。続く指揮官達も、そのラディールに劣らない目になり、城門上の集団は戦士として戦場に立った。


「セヴラン達が森の中腹で待っている。そこまで走り、合流後は次の作戦に移行する。いいかッ」


『はッ!』


 ラディールは城門から飛び降り、残る者達続く。現最高戦力の一角が、戦場の中央へと駆け始めたのだった…………

どうも、作者の蒼月です。

はい、どんどん話を進めていきますよ~これで、フィオリス側の戦力が集まり、パラメキアも無視をできない状態へ。ここでヴァンセルトがどう動くか、これで事態は大きく変化するので。


ラディール、彼の実力ももう少しで見れるかと。このフィオリスは個の戦力が強いという解説がこれまでに何度もあったと思いますが、それを見れるかと。モブ(?)とは言え、この世界では主人公無双で終わり、などということがないことを見せてくれるでしょう……


では、次も読んで頂けると幸いです。

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