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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第十章~散りゆく命~
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第三百三十四話~天才魔導師の過去~

 ここまでは、リーシャ側も本題へ入るのを少し避けていた節があったが、これ以上は今のセヴランに信用してもらうことも無理だと、今回呼び止めた本題に入る。


「セヴランは、エメリィ様のこれまでを知っている……というより、興味がありますよね?」


「これまで?いや、それは別に……」


「いえ、隠さなくてもいいですよ。セヴランも、キルやエメリィのこれまでのことを知りたそうにしていたことは、既に知っていますから」


 リーシャに対し、別にセヴランはそれを隠そうとしていたわけではない。ただ、リーシャの言葉の意味を勘違いし、このフィオリスでの活動のことかと考えていた。ただ、そこにキルの名前が出てきたことで、それがこの国に来るより前の話だと、セヴランは気づかされる。だとすれば、セヴランは充分に興味がある話題であり……そこまでがリーシャにバレていることに、内心で苦笑し


「なるほど、それなら確かに興味がある内容……というより、俺が求めている情報の一つだな」


「でしょう?だから、それを伝えておきたいの」


「エメリィが、被害者という話か?」


 セヴランは、この話が始まった時のリーシャの言葉を思い出す。その言葉から感じた真剣さから、真面目な話なことは想像できるが、その内容までは想像できず……


「そう、エメリィ様のこと……彼女の、悲惨な歩みを……」


 リーシャは、これから語ることは重いものだと言わんばかりに、一呼吸置いて語り始める。あの自由奔放なリルムでさえ、隣で真面目に座ってだ……。


「エメリィ様は、元はレギブスの生まれ。それは、セヴランも知っていることだと思うけど、そこでのマリーンとの関係は知っている?」


「マリーン、あの七極聖天のか?前にサファクイル基地で戦った時に、知り合いなのは分かってる……後は、今の魔法の体系を確立させた天才、といったあたりのことは」


 マリーンとエメリィの名と言えば、魔法に少しでも関わりのある者ならば、知らない者はいないといっていいほどの有名人だ。今ある魔法の体系を作り、ある意味では今の戦争に大きく手を貸した人物とも言える。無論、魔法の発展自体は悪ではない。しかし、それが戦いに用いられているのも事実である。

 そんな一般的な知識の話ではないと、リーシャは首を振り


「確かにそれもある。けど、エメリィ様が元々孤児だったことは?」


「……初耳だ」


「孤児だったエメリィ様を拾ったのが、マリーンだった。そしてそこから、エメリィ様の才能が目覚めていった……同時に、今に至る最悪な運命も……」


 リーシャは、どこか悲しげに表情を曇らせ、セヴランは口を開けれずに、ただ次の言葉を待った。


「マリーンに引き取られたエメリィ様は、当時マリーンが研究していた魔法に触れた。普通の子供だったらおそらく、何もなかったでしょう。けど、エメリィ様には才能があった。それは、マリーンをも超える才能を。当時のマリーンの術式には、幾つかの問題点が残っていた。それを、エメリィ様はことごとく解決して、マリーンが一人ではなし得なかった魔法の術式体系を確立させた」


 語られてくるエメリィの過去は、聞けばセヴランと多少似ている部分もあり、そして自分以上に輝くエメリィに凄いという感想しか抱けない。セヴランも、リーナを失ってディルムンクに引き取られ、師匠と共に過ごしたのだから。その師匠を超えるということがどれだけ凄いか、セヴランには理解できたのだ。

 ただ、ここから話の流れは変わることとなる……


「けど、そんな歴史に名前を残すようになって少ししてのことよ。マリーンは、唐突にエメリィ様を捨てた……。エメリィ様は、自分の力が足りず、認められなかったのだと考えて、様々な魔法の研究を繰り返した。何回も何回も……そこでできたものは、どれも魔法の歴史を変えるようなものばかり。でも、それでもマリーンはエメリィ様を再び迎えることはなかった…………。エメリィ様は、レギブスから追放されるようにこのフィオリスへと流れて来て、それからはマリーンに自分の実力を認めさせるため、ある種復讐的な感情で、ここまで心を支えて生きてきたの…………そして、それももう、限界が近い」


 この少しの時間で語られた内容は、あまりにも情報量が多すぎる。セヴランは情報を頭で整理するが、全てを納得する時間は足りず


「ちょっと待ってくれ、つまりだ。エメリィはマリーンとの魔法の研究で才能を見せたが、マリーンに捨てられた。それから今まで、マリーンに認めてもらう為に戦ってきた……そういうことで、まずはいいか?」


「えぇ、要約するとそうなります」


「それで、俺に何を求める?見捨てないでというのは、一体……」


「今の話を信じてもらえるのですね?」


「ま、まぁな。まずは信じなきゃ、始まらないしな」


 セヴランの中で、エメリィという存在がこれまでとは違って見えてくるが、今は無理矢理にでも納得するしかない。でないと、今のセヴランに、ブラッドローズをまとめるだけの情報がないのだから。


「なら、後は簡単です。エメリィ様の心を、セヴランに開いてもらいたいのです」


「俺が、エメリィの?」


「はい。今のエメリィ様はブラッドローズ内でも、孤立している状態です。リーナ様に対しては、確かに可愛がってるところはありますが、完全に心を開いているわけではありません。これには、バーンズ様も苦労されているようですので」


「バーンズ……あいつも、やっぱり裏で色々動いているんだな……けど、何故それを俺に?心を開かせるのなら、リーナの方が適任だろう」


 セヴランは、今一番の疑問をリーシャに問いかける。この問題、確かにセヴランが解決する必要がある。しかし、何故それをリーシャがセヴランに頼んだのか。何故、原初の五人の関係者として、セヴランに頼んできたのか、それが分からなかった。

 そのセヴランの疑問符に、リーシャはセヴランの瞳を捉えて答える。


「貴方でなければ、この世界が終わるかもしれないからです」


 そんなリーシャから放たれたのは、またセヴランの悩みを増やす程の、大きな天秤であった…………

どうも、作者の蒼月です。


はい、ここで書くのもあれですが、前回の話でブックマークが100に到達しました!(まあ、減る可能性はありますが……)これも、いつも読んでくださる皆様のお陰です。本当に、ありがとうございますm(__)m


おかげさまで、これからも投稿を続ける心の支えになります。頑張っていきますよ~


と、本編の話にも触れておきますと、この話し合いはあと1、2話かと。そこから戦闘になるかは、正直まだ決めかねていますが、今度の戦闘パートは比較的長いものになるかもしれません。しかも、今度は主人公(達?)であるセヴラン達がいます。前回の回想は、セヴラン達いませんでしたし、本当に久しぶりに主人公の活躍が書けます(活躍するとは言っていない)。楽しみにしていただけたら。


では、次も読んで頂けると幸いです。

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