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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第九章~動き始める者達~
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第三百十八話~出会う者達~

 焦り、焦燥、そんな感覚なのだろうか。ヴァンセルトは、沸き上がるそれらの気持ちに足を急かされ、気がつけば皇室の前に立っていた。皇室へ続く扉の前には、皇帝直属近衛兵二人が黄金の鎧を纏いハルバードを構え、扉を塞ぐようにハルバードを交差させる。


「陛下に急ぎの知らせで来た、ここを通せ」


「ヴァンセルト卿、ただいま皇帝陛下は朝食を終え、朝の日誌をつける時間です。御用があれば、事前に連絡を通していただくよう願います」


「急ぎだと言っているッ!ロイヤルガードとして、ここを通すように命令する」


「……しかし……」


「くそッ……」


 ヴァンセルトも理解している。今、何故これ程までに警戒をしているか。本来なら、ロイヤルガードであれば無条件で通ることが可能だ。しかし、皇帝が何かを行っている時には、その警戒体勢は最大まで引き上げられ、ヴァンセルトといえど簡単には通れないようにしている。

 ここに来て、この厳重な警備が仇となったと、自らの敷いた規則にヴァンセルトを眉をひそめ、これをどうするべきかと思考する。


 けれど、悩み始めたその時、その厳重な警備を行っていた扉は内から開かれ


「どうしたのだ~何かあったのか?」


 扉の内から姿を見せたのは、まだまだ幼き一人の子供。皇室から出てきたその子供に、近衛兵は慌てて頭を下げ、右腕を前へと突き出し最敬礼の構えを取る。そして、慌てる近衛とは対照的に、ヴァンセルトは最高のチャンスだと、目の前の子供に感謝し


「おはようございます、シャディール皇帝陛下。お務めの最中に、お騒がせして申し訳ありません。この度は、急ぎの要件で伺いました。どうか、これより謁見の間に来ていただきたいのですが」


 ヴァンセルトは、まだ年齢も二桁にいくかどうかというような子供相手に、頭を下げて礼をする。そしてその子供に対し、ヴァンセルトは皇帝陛下・・・・と名を呼んだ。その事実を、おそらく普通の人ならば信じないだろう……。

 だが、皇帝と呼ばれたシャディールは、ヴァンセルトに無垢な子供特有の笑顔を見せ


「よいぞ、他でもないヴァンセルトの頼みだ。これを最優先でする、いいかお前達?」


「はッ!承知致しました、シャディール皇帝陛下ッ!」


 皇室の警護を行っていた二人、ヴァンセルト相手でも引かなかった彼らは、その子供の指示には迷いなく従う。それが、この子供の地位を証明できるものであり……


「それでヴァンセルト、一体どうしたというのだ?」


「はッ、昨日城に、ある手紙が届きまして。そして今、この城にフィオリスの代表が…………」


 ヴァンセルトは皇帝と呼ばれるシャディールに事情を話し始め、パラメキア皇帝は今の事態を知るのであった…………。






 リーナ達が部屋で待つように指示されてから暫くの時間が流れ、そろそろ頃合いではないかと六人は気を引き締めていた。そして、その時を告げる合図として、部屋の外からこの部屋へと向かう足音が近づき、それは大きくなる。実際には、別に大した足音ではないが、精神を研ぎ澄まし、集中力を高めていた六人は、その音に気づけたのだ。

 足音は部屋の前で止まり、合わせるように次は扉が開かれる。遂に来たかと、リーナ達六人は席を立ち、姿を見せたヴァンセルトに視線を向ける。


「お待たせして申し訳ない。陛下が、謁見の間でお待ちしておられる。これより案内しよう」


「えぇ、お願いしますわ」


 互いに、戦場とはまるで別人のように、ヴァンセルトもリーナも言葉を綺麗にしている。これは互いに、国の代表という意識の強さだろう。正直、リーナなどは内心で面倒だとも思っているが、これは国の為にも必要なことだ。故に、ここは気を抜けないと意識し


「ではこちらに」


 ヴァンセルトが部屋の外から、謁見の間を案内するために進み始める。そしてリーナ達六人もその後に続き、謁見の間まで緊張を高めながら先へと足を進めた…………。




 進む道は、このパラメキアの強さを象徴していた。一体、どれ程の金銀が使われているか分からない品々の数々。磨きあげられた大理石の床。黄金の鎧を纏い、武器を構えて凱旋かの如く左右に並ぶ精鋭の兵士達。

 どの兵達からも、一切の動く様子も息遣いも聞こえない。けれど、確かに兜で隠されたその奥から覗く動かぬ瞳に、セヴラン達は敵として捉えられ、その押し潰すような空気に息が詰まりそうになる。が、その程度でセヴランの気持ちは潰れず、目の前に来た謁見の間への大扉の先からが本番と意気込み


「フィオリス王国代表、シャディール皇帝陛下への謁見を認められた。前へッ!」


 一人の近衛の掛け声で、大扉が開かれる。流石に、この瞬間はセヴラン達も皆気後れしそうになり、パラメキア皇帝との交渉だと息を飲む。

 そして…………


「よく参った、前に進むがいいぞ」


『……………………???』


 謁見の間にもうけられた高い玉座には、皇帝の名に似つかない子供が一人堂々と構え、セヴラン達の頭には揃って疑問符が溢れ出した…………

どうも、作者の蒼月です。

さてさて、新キャラ登場ですよ~皇帝を名乗る子供、一体誰なのでしょうか。ちなみに、この小説の始めにつけてあるEX回では、パラメキア皇帝には違う名前がある筈です。

これらのことも含め、次回からも進めていきますよ~


では、次も読んで頂けると幸いです。

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