第三百十六話~偶然の導き~
ヴァンセルトに先導されながら、リーナ達六人はパラメキア城の敷地を歩く。ただ、事態が理解出来ていないのだろう、周囲のパラメキア兵達からは懐疑と敵意の視線を向けられながら、その歩みを進め
「で、こっからどうするんだ。ヴァンセルトが、まさかここまで素直に入れてくれるのは予想外だったな……もう少し手こずる予定だったのにな」
「そうね……普通、こんな唐突な訪問を許すのはどうかと思うけど……やられたわね」
セヴランとリーナは、パラメキア側の態度に目論みが外れたと今後の話を決める必要に迫られていた。今回、リーナ達が交渉の席で切れるカードとして、二度にわたるパラメキア側の襲撃があった。パラメキアは話すことも出来ない野蛮な国、とでも言えば、少しは優位を確保できると踏んでいた。けれど、その目論みはヴァンセルトの対応で崩れ去ることとなった。ならば、次はとのことだったが……
「ヴァンセルト卿、これは珍しい客人ですね」
「私達も、呼んでいただければ来ましたのに」
『――――――ッ!』
広い城の敷地、その正面の庭ともいえる場所から、城の巨大な入り口へと近づいた六人に、二人の人物が姿を見せる。ヴァンセルト同様、その紅い姿は悪魔のようにもリーナ達には見え……
「リノーム、リターシャ、よく来てくれたな。感謝する」
「いえ、お呼びとあらば何処だろうと駆けつけますよ」
「間に合ったようでなによりです」
何故か、そこにはロイヤルガードが三人揃っていたのだ。無論、ここはパラメキア帝国なのだから、ロイヤルガードがいてもなんら不思議ではないだろう。しかし、ロイヤルガードが三人ともいることは、事前の情報収集を行っていたキルなどからしてみれば信じがたかった。
「……何故、奴等がここに……奴等はまだ、自分の領地にいる筈では……」
キルが思わず溢してしまった呟きに、セヴランやリーナ、そしてこれにはモースにバウル、ギーブさえも信じられないと驚愕し
「信じられないものを見ている……そういった顔だな。なに、驚くこともないさ。私のところに召集が来た時点で、私が彼らを呼んだのだ。文官が私を呼ぶほどの事態ならば、同じ文官である彼らを呼ぶことはなんらおかしくはあるまい」
ヴァンセルトはこの事態を、ある程度昨日の時点で予測していた。だからこそ、前もって呼んだわけだが……
……馬鹿な、だとしてもすぐに彼らを呼べるものか……もし、本当にヴァンセルトが呼んだとすれば、それはヴァンセルトに連絡がいくより先に二人を呼んでいたってことじゃないか。だとすれば、初めからこっちの動きを悟られていたのか……
セヴランは、ヴァンセルトの言葉は真実ではないと考える。その根拠として、少なくともヴァンセルトに召集が来た時点で連絡を飛ばしたとしても、二人に連絡が届きここに来るには時間が足りないのだ。最低でも、ヴァンセルトと同じぐらいの時間にはここへ向かう必要がある。
……ヴァンセルトめ、一体どこまで先を読んでいるんだ……
セヴランは、今後の話し合いもすんなり進むことはない強敵だと再認識し、警戒を強めるのだった…………。
と、セヴランからは警戒を強められたが、正直ヴァンセルトもこれは想定外だった。確かに、二人を呼んだのは彼で間違いない。しかし、それは召集を掛けられる前、の話なのだ。
……まったく、こんな形で使いが役に立つとはな。今後も、情報収集でもやらせておくかな。
ヴァンセルトが二人を早く召集できたように思えるが、具体的に言えば違う。実際には、ヴァンセルトが二人に元々召集を掛けていたようなものだ。リノームとリターシャの二人に、ヴァンセルトはある頼みごとをしていた。
その内容は、ここ最近帝都内で活動している不穏分子の調査依頼だ。本来なら、帝国軍内に存在する諜報部隊にでも任せればいいかもしれないが、可能ならば最も信頼を寄せれる者に任せたいものだ。幸いにも、今のロイヤルガードは暇が与えられていた為、丁度ヴァンセルトは二人に任せていたのだ。わざわざ、二人を一旦帝都から外に出して領地に戻ったように見せ掛ける偽装工作まで行い、細心の注意を払って行動させていた。まさかそれが、このような形で役に立つのは考えていなかったのだ。
セヴラン達がこの帝都、それも城へと侵入し、皇帝への手紙も皇帝へと伝えることもままならず、こうして主導権を握られているのは最悪の状況だ。しかし、この二人がここにいることは救いであり…………ヴァンセルトは、リーナ達六人には見えないよう体で隠しつつ、手で時間を稼ぐよう合図を送った。それに、二人も頷くことはないが、その意味を汲み取り
「さぁ、では行こうか。パラメキア城へようこそ、皇帝陛下もお待ちしておられる」
ヴァンセルトは勝手に皇帝陛下の名を使ったことに罪の意識を覚えながら、厄介な客を城へと迎え入れた。
どうも、作者の蒼月です。
さてさて、ロイヤルガードが三人とも揃ってしまいましたね~これで、既にセヴラン達の作戦はだいぶ辛いものとなっています。
なにせ、最悪は武力行使という手段があったものが、これで不可能になりましたからね。そんなことは考えていないにしても、手段が減るのは痛いものです。
しかし、ヴァンセルト達が辛いのも事実。皇帝陛下に手紙のことを告げられずにいるうちに、彼らは来てしまった。皇帝陛下の身の安全を確保しながら、彼らをどうするかを皇帝と決めなくてはならない。今のヴァンセルトは、相当冷や汗かいて焦ってますからね~
では、次も読んで頂けると幸いです。




