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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第九章~動き始める者達~
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第三百十一話~束の間の遊び~

 ヴァンセルトの元に召集の伝令が掛かる数時間前、まだ太陽が空の頂点から少し落ちかけた昼時、パラメキア帝都内に潜入していたセヴラン達はこの半日で得た情報を共有するために、一度目の合流を果たしていた。

 パラメキア帝都でも、一流の料理を提供する店。食事を行える店の雰囲気も落ち着いており、帝都の中心に近い区域にあるここは、外周部側に比べて人口密度も下がり、比較的静かな場所だ。そして、食事を行えるのは店内だけでなく、テラスとして作られた店の外側部分もあり、そこの椅子にセヴランとリーナは既に座っていた。


 二人の服は、ローブを脱いだ朝の状態であり、傍目からはお嬢様と執事に見える。まあ、セヴランは執事を演じている関係上、リーナが座っている隣でセヴランは立ち続けているが……。

 そんな二人の元へ、二人の人影が近付いてくる。二人とも、リーナ同様に高貴な者に見せる為にある程度の服を着た、バウルとギーブであった。彼らは、リーナの元へと近付くと、普段ではあり得ない程綺麗なお辞儀を行い


「どうも、ちょっと遅れましたかね」


「いえ、貴方達は二番目よ。まさか、キル達より早いとは、思ってなかったわ」


「そりゃどうも。んじゃ、座らせてもらいますぜ」


 バウルとギーブは、周囲から怪しまれない為にも、リーナと同じ席に掛ける。セヴランは、正直二人が口喧嘩でもしてないかと心配だったが


 ……なんだ、やればできるもんだな。二人が組んでも問題ないなら、今後の作戦も楽になるんだがなぁ……。


 セヴランは、二人がこの諜報活動に問題なく参加できていることから、口喧嘩も我慢出来ているのだろうと予測する。これならば、今後も二人を組ませる作戦が立てれるなと、そんな甘い考えを抱いていた……。




「すみません、ティムを二つお願いします」


 バウルとギーブは、店に来て何も頼まない客は怪しい為に、一応の注文を行う。ここで頼んだのは、どの国でも取り扱っているような一般的な紅茶だが、頼まないよりはましだろう。そしてそれは、ほどなくして二人の元に店員から運ばれ、リーナと並ぶ格好としても相応しいものになった。だが、ここからも問題行動で、セヴランはいましがた二人に抱いていた甘い考えを打ち砕かれるのだった。


 二人は、何故か机に運ばれてきた紅茶を口にしない。一体それが何故なのか、リーナとセヴランは疑問であったが、すぐに分かることとなる。


「バウル、飲まなくていいのですか?」


「おめぇこそ、遠慮せずに飲んでいいんだぜ?」


 二人は互いに、相手の目と紅茶を視界に捉えていた。そして、セヴランの目には、二人が手に隠していた何かを、捉えてしまったのだ。何か、赤く見えるそれ……少なくとも、ろくなものではないと感じるが


 ……こいつら、まさかその手に持ってる何かを、紅茶にでも突っ込むつもりか?


 セヴランはリーナの指示があるまでは、今は大きく動けない。故に仕方ないと、半目で二人の動きを確認していた。そして次の瞬間


「「あ、彼処にヴァンセルトがッ――って何!?」」


 ……仲良しか。


 二人の完全な息の合った、完璧なタイミングでの意識反らし。その陽動に互いに引っ掛かりつつ、しかし手に持っていた何かの投入に成功はする。二人は、ヴァンセルトがいるなどという嘘に驚き合うが、相手の紅茶に目標物を入れたことに満足し


「あースミマセン、勘違いでしたー」


「おう、俺の方も勘違いだったみてえだなー」


 ……白々しいな~こいつら馬鹿なのか。


 二人の、やってやったと言わんばかりに微妙に笑う表情に、セヴランは込み上げてきた笑いを堪えながら、ただ観戦している。

 と、満足から二人同時に紅茶を口に含み…………まったく同じタイミングで、二人は悶え始めた。


「ぐッ……てめぇ……何を……」


「あなた、こそ……一体……」


「…………フフッ……」


 二人の馬鹿なやり取りに、セヴランは遂に笑いを抑えきれずに吹いてしまう。ご令嬢の周囲に、机に突っ伏して悶える男二人に笑いを堪えようとする執事、周囲から見たら怪しすぎるだろ、とはセヴランも思うが、二人の行動があまりにも面白いのだから仕方ない。少ししてから、セヴランは笑いを抑え込み、執事の役に返り


「貴方達、楽しむのはいいけど、ほどほどにしときなさいよ。怪しまれたらどうするのよ」


 珍しく、リーナがまともな正論を述べたことに三人は冷静になるが、それはあることを意味していた。


「さて、これでキル達も到着ね……」


 リーナが警告にも近い正論を述べたのは、今到着した最も真面目な二人組が来るからだ。このパラメキア帝都への潜入を任された残る二人、キルとモース……今回の作戦のメンバー六人が揃い、ようやく真面目な雰囲気へと戻る。


「……遅れて申し訳ありません。状態収集に、少し手間を掛けすぎました……」


「別に構わないわよ、キル。それじゃあ早速、情報の共有から行いましょうか」

どうも、作者の蒼月です。

えっとまず、昨日は投稿できずに申し訳ありませんでしたm(__)m

だいぶ、これから仕事の方が忙しくなってくるので、小説を書く時間が減っていく予定です……。

ですがまあ、可能な限りはこれまで通り、毎日上げれるようにはしていきます。まあ、無理な時もあるでしょうけどね。


さて、内容としては繋ぎの回ですが、ほんわかしたバカをできるのも大事だと思うのです。それがないと、平和の尊さはキャラ達が理解できませんしね。(でも、私が日常パートを書くのが絶望的に苦手なのは理解してますけどね!)


では、次も読んで頂けると幸いです。

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