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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第九章~動き始める者達~
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第二百八十七話~深まる謎~

「そうじゃ、ある程度理解も早いようで助かるわい。お主の想像通り、王家の者を殺していった者の実力は相当じゃろうて。…………先にこっちの話をすると、順序は変わるが、ディルムンクはある戦いで姿を消した。それ以降、ディルムンクの部下でもあり、才能溢れ実力も高かったバーンズが将軍の座には着いたが…………そこからは今言った通りじゃな。バーンズも敵を探すが、始めに王を暗殺されてからは後手に回るばかりでな……それで十年前程だったか、急に手紙で指示が来るようになってな。バーンズも、もう相当に疲れていたからの、それでその手紙の指示に従いブラッドローズの設立も含め、今に至っておる」


「…………端から聞けば、バーンズの行動は信じられないものでしょうね。何者かも分からない指示を信じ、軍を動かしているというんですから……」


「確かに、儂としてもあまり考えたくはないが、これは事実じゃからな。そうでもせんと、このフィオリスを維持できんかった……」


 ホウルダーの視線は自然と下に落ち、力を失うように声が弱ったものになってゆく。その様子からも、セヴランはフィオリスという国が、これまで一本の糸で支えられているような現状なのだと再認識させられ


「私が聞いた政府がないというのも、つまりは王家の者がいないからと……そういうことですか」


「あぁ、そうじゃ。被害に合ったのは文官もじゃが、主には王家の者がおらんからの。税の実質的な徴収は軍が行い、後は残っておる我ら文官で仕事を行う。これで、もう何年もこの国はやっておる訳じゃ。国民に知れたら、この国は崩壊するじゃろうなぁ」


 ホウルダーは、もうどうにもならないと考えているからなのか、あまり危機感といった感情はセヴランには見えなかった。無論、そんな危機感を今知ったばかりのセヴランが偉そうに言えるか訳もないため、特に何かを口にはしないが…………。


「成る程、政府がないという意味は理解出来ました。しかし、一体何者なのでしょうね、王家の者を暗殺した者は……」


「さぁのぉ、ディルムンクが生きていたとか言っておったが、そのディルムンクは何か知らんのか?」


「師匠ですか?師匠は、この世界に終焉が迫っているから、パラメキアやレギブスを味方につけ、共に竜と戦って欲しいとしか……」


「ほう、竜と来たか!確かに、手紙の指示に終焉だの何だのとバーンズは言っておったが……それがまさか伝説の竜とはな。成る程、興味深い……」


 セヴランから聞かされた竜の一言に、ホウルダーは疑うこともなく信じた。いくらディルムンクの言葉とは言え、そこまで鵜呑みに出来るのかと、セヴランはホウルダーやバーンズのこれまでの態度から、自らの師匠が本当に英雄なのだなと何度目か分からない衝撃を受ける。

 そんなセヴランをよそに、ホウルダーは何やら席を立ち上がると自身の机だろうか、引き出しを漁り何かを探し始める。それが何かは分からなかったが、リーナは相変わらず気にする素振りを見せない為、待っていたら良いかと瞼を閉じて気を休める……。


 そして音だけを拾っていたセヴランは、ホウルダーの見つけたという一言で目を開けると、ホウルダーは一冊の本を机へと持ってきた。その本は、見るからに古いもので、中には羊皮紙も挟まれているようなものであった。

 その表紙からは、セヴランは何の本かは分からず


「ホウルダー殿、これは?」


「これは、ディルムンクが消えてから増えていた謎の本じゃ。中は、竜の事柄などの文献があってな。一体誰が、何のために置いていったかは謎じゃったが、ディルムンクが生きていて更に竜と戦う等と言ったということは、ここにある情報は基調なものになるな」


「……まさか、師匠が置いていったと?」


「さぁの、じゃが関係者の可能性はあるじゃろう。元々、この国で更に儂の所にこんな物をわざわざ運ぶ……これを、パラメキアやレギブスの密偵がするとも考えれんからの」


「……確かにそうですが……師匠の協力者と言えば、ソフィアさんか。確かに、彼女ならばここに侵入して物を届けるぐらいは雑作もない、か…………でもおかしい……ならなんで師匠達は中央騎士団の壊滅を知らなかった?辻褄が合わないな……」


 そう、ホウルダーの予想は殆ど正しかった。けれど、それでは説明がいかない点がセヴランの中にはあった。あの時――ディルムンクと会った時には、バーンズが怒りを見せた時の会話を思い起こすが、その流れ的にディルムンクが姿を消したのは国王の暗殺されるより前。その後、どういうやり取りが二人に合ったかは分からないが、バーンズが暗殺を止められず中央騎士団が壊滅――――ここまでの流れは予想通りだが、そこで本当に本を届けたのがディルムンク達であるとするならば、それは知っていてもおかしくない。


 ……まぁ、師匠が直接知らないといったわけでもないし、俺の考えすぎなのか……


 そんなやり取りを得て、最低限必要な話は終えたと判断したのか、リーナは席を立ち上がり


「じゃあセヴラン、話したいことはまだあるでしょうけど、今夜はここまでにしておきなさい。多分、このままだと朝まで話しかねないし」


 セヴランは確かに、一度興味がある話を始めたら、熱が上がり時間を忘れるタイプだ。だからこそ、リーナは釘をさしたわけであり、それは正解であった。セヴランも、リーナの言葉で夜に押し掛けて迷惑を掛けたことも思いだし


「ホウルダー殿、今日は夜分に失礼しました。また今度、詳しくお話ができたらと思います」


「儂はいつでも構わないぞ、暇ではないが暇じゃからの。いつでも歓迎しよう。……リーナ様も、爺はいつでも相手致しますぞ」


「はいはい、じゃあホウ爺、また遊びに来るからね~」




   ――――――ドォォォォォォォン――――――




 聞こえた音を表すとしたら、そういう感じだろうか。二人が部屋から去ろうとした時、夜のフィオリス王都に強烈な爆発音が響き、静かな夜がざわめき始めるのだった…………

どうも、作者の蒼月です。

さてさて、戦いがないと書いた前回から、急な展開になってきました。王都まで襲撃されようもんなら、いよいよフィオリスも終わりですね……


さて、一体今度は何がフィオリスを襲うのか……


では、次も読んで頂けると幸いです。

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