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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第二章~旧トワロ街道攻防戦~
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第十四話 ~日差し~

 空では太陽が登りきり昼を過ぎた頃、フィオリス軍訓練兵舎の一室では自由な時間を与えられていた。


「なあなあ。」


 窓際の席で日の光を浴びながら外を眺めているセヴランにシンが声をかける。


「なんだ?」


 セヴランは壁に持たれかけていた体を起こし、視線をシンに向け


「少し疑問だったんだけどよ、お前の魔法って氷を作れるのか?」


「う~ん、まあそうだな、少し違うけどそれがどうかしたのか?」


「いや、なんで模擬戦の時地面を凍らせたのかなって思って。」


「あぁ、あれは……」


セヴランの元に足音が迫り、セヴランは言いかけた言葉を止めた。


「俺も聞かせてくれるか」


 セヴランの前に模擬戦で初めにカーリーに挑んだ大男が迫る。


「俺はバウルだ、同じ剣士としてお前の戦いは気になってな、話を聞かせてもらえるか」


「別にいいが、それじゃあ――」


「待ってくれないか」


 セヴランの言葉は新たに生まれた言葉に再び止められる。


「僕達も聞かせてもらいたいな。」


 バウルの隣に、魔術師のグループ四人が並ぶ。


「僕はギーブ、魔法を使うものとして、あまり詳しくない氷や雷の魔法には興味があるんだ」


 セヴランは周りを囲まれ


「分かった分かった、説明するから慌てないでくれ。」


 セヴランは一度ため息をつき、 体を周囲に向け直すと


「まず、俺が使う雷属性の魔法、あれは加速魔法じゃない」


 セヴランの言葉にギーブ達四人から疑問と驚きの声が漏れる。


「なら、あれはなんだったんだ?早くなったように見えた……というかみえなかったんだが」


「俺の雷の魔法、二つの雷の魔力をぶつけると爆発するように反発し合う、その反発で俺自身を飛ばしているんだ」


 セヴランの言葉にシンとバウルは驚きの表情を見せ、ギーブ達は会話を始める。


「それで、氷の魔法と何の関係があるんだ?」


 シンはどういうことか分からないといった表情で質問する。


「今言ったように、加速するには二つの雷の魔力を必要とする。一つは俺の体に直接流せばいいが、もう一つをどこに流すかが問題なんだ」


 セヴランは腕を組み背を再び壁に持たれかけさせ


「そこで、俺が研究していた氷の魔法と組み合わせることを思い付いたんだ。普通の地面にまで魔力を流せるほど俺の魔術師としての力はない、けれど自分で生み出した氷の大地なら魔力を流すことができるってな。俺の体の雷と大地の雷それぞれが反発して、擬似的に高速で移動出来るようになる。氷の大地はその為のものなんだ」


「そんな魔法、どれ程の魔力を……」


 ギーブが信じられないといった風に驚愕する。セヴランは腰の剣を僅かに刀身が見えるように引き抜き


「残念ながら俺の魔力はかなり少ない、多分ギーブ達と比べたら俺が一番少ないだろうな」


 セヴランは肩を落とし、ため息をつき


「だからこの剣に魔力の術式を施してるんだ、普段は剣に魔力を溜めて戦闘でいつでも使えるようにな」


「なるほど……」


 ギーブは納得したと頷き


「そんな魔法を使ってたら体はどうなんだ?」


 続けてバウルが質問をする


「この魔法は体に直接魔力を流すことになる、だから体に良くないのは確かだな、繰り返し使い続ければ体は魔力に耐えられず内側から傷つく。それに、雷のを発現させて反発させるわけだがその力は足に集中する、足も筋肉は切れるし下手をすれば骨も折れる。更に、爆発的な早さで動く故にこれも体への負担が大きいな」


「おいおい、それって大丈夫なのかよ?」


 シンが心配をするが、セヴランは小さく笑い


「さっきの模擬戦の時点で足の筋肉と骨、内臓を軽く痛めた。長い間この魔法を使いこなせるように修行したから俺はなんとか耐えれるが、これは真似しないほうがいいぞ」


 セヴランは笑うが周りは誰も笑わない、そして誰もが思った


……こんなのを真似出来るか


 事実セヴランの魔法はまだ研究の進んでいない四属以外の魔法、これを使うだけでも命の危険があり、魔法を使える者さえ限られる。わざわざセヴランの魔法の真似をするというのは自殺行為と変わらない。


「セヴランは……」


 生まれた静寂を打ち破り、シンが声をあげる


「どうして、そんな魔法を使うんだ?」


 シンの疑問は誰もが理解できた。ここまで魔法を使いこなせるのであれば他の魔法を使う選択肢もあったであろう。セヴランは視線を窓の外に向け


「守りたい人の元に真っ先に駆けつけれる早さと敵を止める力……俺はそんな力がほしかったんだ……」


 視線は窓の外に向けたままで表情は周りから見えないが、その声には少し力弱い印象だった。


「何が、あったんだ?」


「おいっ、人の過去を簡単に詮索するな。」


 シンの軽率な質問に対しバウルが制止をかけるが


「まあ、いずれ気が向いたら話すよ」


 セヴランは一度シンに笑みを向け、再び窓の外に視線を移す。

 セヴランの見上げる空は青く、鳥達が飛んで行く。そんな光景にこんな平和がいつか訪れるようにと願い、窓から差し込む日差しに包まれセヴランはゆっくりと目を閉じた……。


どうも、作者の蒼月です。

日常パートが苦手なので今回の話はあまり自信がありません。今後も練習して、コツを掴んでいきたいところですね。

次もセヴラン視点の話です。

では、次も読んでいただけたら幸いです。

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