表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第八章~交錯する英雄達の想い~
270/560

第二百五十三話~英雄の誘い~

 壁に掛けられたろうそくの火は、決して明るいとは言えないだろう。しかし、薄暗い部屋で、机を囲む者達の視界を確保し、照らすには充分なものだろう。ただ、部屋の壁には幾つかの小さな窓があり、そこには漆黒を思わせる暗き夜空が見えている……。

 …………と、暗かったのはその時までであった。その窓からは、唐突に太陽でも覗いたのかというほどの、眩しい光線が射し込み始める。


 その光に、館の中はざわめき始める。その光が何を示すのか……それが分かっていても、理解をするには苦労する代物なのだから。だが少なくとも、同じものを一夜前にも見た慣れから、ある程度のざわめきで収まってゆく。

 そして…………この館で現在最も重圧を受けているであろうモースらのいる部屋では、その程度のことには反応は薄いものであった。


「レギブスの魔法か…………まぁ、あれがあれば夜も戦えるからな。便利なことに間違いはないが……夜ぐらいは休ませてもらいたいものだな」


「魔法、ですか……これだけの魔法の力を保有するとは、流石魔法に力を入れてきたレギブス、と言うべきですかね」


「……そうだな、魔法という分野においては、我々でさえ遅れをとっている。厄介なことこの上ない」


 窓から射し込む光が、前夜と同じ人口的な太陽が上がったことを告げる。その光のお陰で、これまでの若干暗かった部屋もある程度の光により、明るい場での会談となる。

 しかし、決して会議の重圧は飛ばず、モースは目の前の敵を睨む。


 ……一体、ヴァンセルトは何を考えている……何故、英雄とまで言われる人物が、我々の手助けをしてくる……。


 モースは決して、その懐疑の目を向けない。ただ自然に、目の前の者と目を合わせる。怪しまれないよう、その瞳の奥を覗かれないように。


「ヴァンセルト卿、この度は我々を窮地から救っていただき、誠に感謝致します。ですが、貴方は帝国の英雄。そんな方が敵国の部隊を助けるというのは、帝国としては問題があるのではないですか?」


 モースは先手を取る。この言葉は、事実は含まれている。が、戦う気がないのは現時点であり、ブラッドローズとしては最終的には戦闘になるだろうと踏んでいる。だからこそのブラッドローズであり、この武力である。

 そしてまずは、感謝を告げた上で、帝国かヴァンセルトの意思を確かめる必要がある。その回答次第で、今後の動きが変わることとなるが……


「別に気にする必要はない。我々は、君達との友好的な関係な為に、ここに来ているに過ぎない」


「……しかし、一軍の将が部隊を離れ、このような場所にいるのは問題ではないでしょうか。あのイクスの攻撃は、おそらくパラメキア軍にも襲い掛かっているでしょう。こちらではなく、戻った方がよろしいのではないでしょうか?」


「はぁ……その程度のことか……少なくとも、我々もレギブスもイクスの襲撃など想定済みだ。その上で、ロイヤルガードが二人もいれば、あれごときに負ける訳はないだろう」


「あのイクスの実力は見たことがありますが……失礼ですが、前にアイゼンファルツ基地で見た際は、ロイヤルガードである貴方方三人が揃っても、倒すことは出来なかった記憶しています。それが何故、今回は問題ないと?」


「あれはあくまで副体、イクス本体の魔力から作り出した駒にしか過ぎない。まあ、中身はイクスの精神で支配しているが……対した問題でもないだろう。確かに個としてはそれなりな強さかもしれんが、我々をコピーして更に分裂して、個の力は落ちた。あれならば、練度からして殲滅は用意だ」


 ヴァンセルトは腕を組んだ状態で目を閉じ、元々決まっている内容を語るように、淡々と告げてゆく。その内容はモースから求めたものであり、知れるのであればそれに越したことはないが


 ……何故ここまで情報を渡す……普通、これだけの情報は取引に使えるものだ。何故、こちらに対価を要求しない……。


 通常、これらの情報を一方的に流すというのは、交渉の席ではあり得ない。無論、相手がそれだけ信用できるか、あるいは後からより大きな情報を一つ引き出す為に、先に餌として出すことはあり得るが


 ……あり得ない。我々がそれに応じるとは限らない。そんなことをすれば、交渉の余地なしと切り捨てられる故にしないが……何を、何を考えているんだ、この化け物はッ!


 モースの中で様々な可能性がめぐるが、どれも根拠は無いと否定される。探りを入れたいが、これ以上施しを受ける側にはいれない。部隊を助けられた借りがある以上、ヴァンセルトの目的を聞くことは必要だ。これ以上、相手の目的が不明瞭なのは危険なのだから。

 モースは上がる呼吸を整え、ヴァンセルトの目を見て


「……ではヴァンセルト卿、貴方の我々に対する用件とは、一体何なのでしょうか」


 その瞬間、ヴァンセルトは待っていたと目を開き、前へせり出すように座りなおすと


「……私がここに来た目的は一つ。君達に、我々の軍の傘下に加わってほしい」


 告げられたのは、モースも、ギーブも、バウルでさえ驚愕し、理解出来ない目的であった。

どうも、作者の蒼月です。

さてさて、交渉シーンとか書くのも、なかなかに楽しいと気付いた今日この頃。

ヴァンセルトは、前にもほのめかしていた勧誘ですね。けれど、これはモース達からしたら考えれないことでしょう。なにせ、圧倒的上位者が自分達を欲しいと言うのですから。これが何を意味するか、また次回ですね。


では、次も読んで頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ