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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第二章~旧トワロ街道攻防戦~
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第十弐話 ~会談~

「は、冗談……ですよね?」


 石の壁に囲まれ踏むと軋む音がするほど古い部屋、フィオリス軍訓練兵舎の一室でカーリーは緊急の知らせを聞かされていた。


「冗談でここまで来るわけないだろ~さっきも言った通り、物質輸送の護衛に用意した兵は借りていくぞ」


 木の机に布を被せただけの簡素な物を挟み、カーリーと向かい合う白髪の初老の男は当たり前のことを言ったまでというように軽快に笑う。しかし、カーリーよりも鍛え上げられた体に、傷を何度も修復した後が見られる鎧から並の武人ではなく、その笑う姿はどこか威圧感をあたえるものだ。


「し、しかし、用意していた二十の兵でさえ、物質を護衛しきるのにぎりぎりの戦力です。今回の物資は配給が遅れているレギブス方面軍全ての食料ですよ。これにもしものことがあれば…………」


 カーリーの声は力んでおり、焦りに近いものだ。既にレギブス方面の兵は食料の配給が遅れ、士気は崩壊寸前である。レギブス方面を預かる司令官として、なんとしても防ぎたい状況が目の前に迫っているのだ。反発するカーリーに対し、初老の男の隣で無言で状況を眺めていた、輝くような白に近い銀の髪の少女が口を開き


「パラメキア方面の最前線、アイゼンファルツ基地が落ちたわ。なんでもヴァンセルトが現れたとか」


「お嬢、それはまだ言うなって言ったろうに……」


 男は子供をあやしつけるように叱るが、少女はつまらなそうな顔で口を再び紡ぐ。

 しかし少女の言葉に


「アイゼンファルツが落ちた!?それに、ロイヤルガードの一人が国境を超えて攻めて来たと……」


 カーリーの握りこぶしが机に叩きつけられる。カーリーの額には汗が浮かび、焦りの表情を隠しきれない。


「まあ、そういうことだ。これはまだ非公式なことだから公には出来んが、パラメキアとレギブスも遂に開戦したらしい。パラメキアはレギブスへの全線基地としてアイゼンファルツを使う気なんだろうな」


「そんな……守備隊の連中は……」


 男は腕を組み、明るさを放っていた表情から笑みが消える。


「守備隊の約二割が壊滅だ。」


「ロイヤルガードが攻めてきて二割の損害?それだけのはずは……」


 カーリーの疑問に男は間を入れず


「パラメキア方面軍司令官ナイル、あいつが一人でヴァンセルトの足止めをした功績だ。」


 男の言葉にカーリーは言葉が出なかった。しばらくの無言の後、視線を落とし


「一人でロイヤルガードの相手をするなんて、あいつは昔から無茶なことばかりする奴だった……最後の最後まで…………」


 カーリーの拳は強く握られ、血が流れ出している。視線は落ちているが涙を流すことはない。軍人ならば覚悟をしてきたことである。


「だが、あいつの無茶のお陰で被害をたった二割に押さえれた。感謝してもしきれんな……」


 男も目をつぶり、僅かに沈黙をつくる。男もカーリーと同じ心境であり、悔しさもあるのだろう。

 しかし、覚悟をしてきたとはいえど、人を失ってなにも思わない人間などそうはいない。二人とも覚悟で悔しさを押し殺していた。

 男は目を見開くと


「あいつの死を無駄にはしない。既に国境守備隊の再編は終らせた。あとは、アイゼンファルツ基地を取り返すだけだな」


 表情は真剣であり、単なる虚勢でないことは分かる。


「基地を取り返す?ロイヤルガードを相手にですか……」


 カーリーの疑問は当然である。パラメキア帝国最強とされるロイヤルガードの実力は人の域を超えている。そんな化け物相手に打って出るというのは、自殺行為でしかない。

 男は再び笑みを取り戻すと


「その為の俺達だ、ただなんせ頭数が足りなくてな。それで優秀な人材を各地から引っこ抜いてる最中だ」


 男の笑みは豪快なものでなく不適な笑みであり、 カーリーも僅かにひきつった笑いになっていた。カーリーは疑問への回答を得られず、次の疑問に


「護衛部隊をつれて行くのは了解しました。しかし、変わりの護衛はどうしろとおっしゃるのですか」


「ん?なに、今年は優秀な奴等が多いじゃないか、山賊やモンスター相手の護衛程度なら彼らで充分だろう。実戦経験としても丁度いいだろ?」


 男は少女と共に軋む音を出す椅子から立ち上がり、カーリーもまた席を立つ


「今年の新兵は確かに優秀ですからね、一人勘が鋭いのがいるので誤魔化すのに苦労しそうですが、こちらはなんとかしましょう」


「すまんねぇ、苦労かけさせて」


 男は申し訳ないと言わんばかりに軽く頭を下げ


「構いませんよ、私などよりロイヤルガードと刃を交える貴方の負担のほうが大きいですからね」


 男はそのまま部屋の扉を開け少女と部屋を出る、その背中に


「では、どうか後武運を。バーンズ将軍……」


「その呼び方はよしてくれ、今は、元将軍だからねぇ」


 バーンズが振り返ることなく、言葉の途切れとともに扉が閉まった。

どうも、作者の蒼月です。

戦闘がないというのは予定通りなのですが、プロットにない話がしばらくの間続きます。

各キャラの掘り下げや世界観の説明などがまだまだ必要と感じたため、元々のストーリーに付け加えるという形で書くことに決めました。

プロットはなくとも元々いずれ書くつもりではいたので、矛盾点などが生じないように気をつけていきます。

あと文字数が少なく申し訳ありませんm(__)m

まだまだ初心者で見辛い文章ではありますが、今後も見ていただけたら嬉しい限りです。

次もがんばりたいと思います。

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