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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第八章~交錯する英雄達の想い~
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第二百五十二話~会談の始まり~

 火が灯され、危険な夜でも人間が安心して暮らせる館。ここ一日で、黒い姿で統一されていた者達の中に、この時は異質な存在が一つ。紅く戦闘に耐えうる最上の質を持ったコートで、所々を金の装飾で彩る服。しかし決して、それは王族が身を飾る為の、派手で身動きを制限するようなものでもない。あくまで、高い品を示すものであり、階級の高さを示しているものだ。そんな服に身を包み、大剣を横に掛け、廊下に用意された椅子に座る者……それは、帝国の英雄ロイヤルガードの一人、ヴァンセルト。

 あり得ない存在が、何故か館にいる。そんな状況は館の中に重い空気を生み出し、周囲から言葉を奪わせていた。ただ、その原因であるヴァンセルトは特に何も思う訳ではなく、目を閉じ、自身が呼ばれるその時を待っていた。




 ブラッドローズは、館内で負傷者達の手当てを行い、残る面子で外警戒の為の部隊、館内警備の部隊、食事や仮眠を行う者達とそれぞれ分かれ、指揮官が不在でも部隊として活動を継続出来ていた。館内を案内され、ヴァンセルトが抱いた取り敢えずの感想はそれであった。


 ……動きは悪くない……が、変わっているな。


 ヴァンセルトの中には、ブラッドローズという組織の軍がとても異質に見えていた。通常、一括りに軍と言えどもその役割は内部で分かれる。戦闘を行う者、指揮を行う者、兵站として食事や武具の用意等、それぞれをまとめるような人物がいることとなる。しかし、ヴァンセルトから見て、このブラッドローズという組織では、そういった指揮系統の構築が完成していないのか、はたまたそれが必要ない程に連携が取れるのか、どの者達も誰かの指示を絶対として動くような固さが感じられなかった。

 もし、これの示すところが、前者ならば問題はない。その程度の組織、潰すのは容易だろう。けれど、これがもし後者だとしたら厄介である。それは頭を潰そうと、場合によっては士気を下げれても部隊を降伏させられないかもしれないからだ。


 ……絶対的な数は少ないが、これをバーンズが指揮したとして、我々を抜きにして相手にできるのは一軍から五軍程度か。


 ヴァンセルトの脳内では、ブラッドローズ一人一人の実力を見極め、それを自身の軍と比較する。無論、軍全体で見れば負けることはないだろうが、パラメキア軍の一つの戦闘単位である一大隊で考えた時、このブラッドローズはそれの一つに匹敵すると見ていた。

 パラメキア大隊の一つの所属人数は五千、これに対し、ブラッドローズは隠密から魔導まで含めても、三百程しかいない。これを同等などと言えば、普通の人間ならば鼻で笑い飛ばすだろう。しかし、そう判断したのはヴァンセルトである。その目に狂いはなく、おそらくは事実である。となれば、ヴァンセルトはますますブラッドローズを手にいれる為、この場に来て正解だと判断する。


 ……いくら弱い存在とは言え、イクスの副体から生まれた存在と戦って、指揮官も無しに生き残った。それも、たった数人の迎撃で、多くを止める……悪くない。これが、あの竜の血を引く者が率いて戦えば、どれだけの力になるのか。


 ヴァンセルトの見立てでは、アイゼンファルツ基地で戦い、セヴランやリーナといった者が指揮官なのは分かっていた。だからこそ、この場に彼らがいないのは不思議であったが、それ故に指揮官不在での部隊の力を図ることができた。これは収穫だと、ヴァンセルトは内心ほくそ笑む。




 そんな様々なことを巡らせている内に、ヴァンセルトの待機していた廊下の端――奥の部屋への扉が開かれる。その扉から一人の少女が姿を見せ……


「ヴァンセルト卿、お待たせして申し訳ありません。準備が整いました」


 そこには、ここまでヴァンセルトを案内し、ここで待つように告げたリーシャであった。彼女はヴァンセルトに深々と頭を下げ、待たせているというこの状況で、更なる失礼の無いようにと緊張しているのが見える。肩はこわばり、その息にはヴァンセルトでしか分からない程の、ほんの僅かな乱れがあった。いや、ヴァンセルトにしか分からない程、息を整えれていると言った方がいいだろう。この状況で、ヴァンセルトの感覚の方がおかしいのだから……。

 ヴァンセルトは椅子から腰を上げ、横の大剣を手に取るとリーシャに振り向き


「では、入らさせてもらおうか」


 イクスはリーシャに続き、奥の部屋へと足を進めていった…………。




 その部屋は、大した広さはない。あくまで、元駐屯軍の使っていた部屋なだけであり、何か特別豪華な訳ではない。何処にでもあるような、単なる木製の机や椅子。決して状態が言いとは言えないが、短期間使用するには問題ない、そういった代物。そんな部屋の中央には、今のブラッドローズ指揮を任されている三人、モース、バウル、ギーブの三人が待っており、ヴァンセルトが入ってくるのを確認すると揃って礼をする。


「お待たせして申し訳ありません、ヴァンセルト卿。よろしければ、どうぞこちらへ」


 一歩前へと踏み出したモースが、ヴァンセルトに机と椅子を指し、これにヴァンセルトも頷く。


「これは、厳しい状況の中での歓迎、感謝する。では、共に座らさせてもらうとするか」


 部屋の中で、四人は納得したと椅子へと腰掛ける。部屋の入り口側から見て、右側にはヴァンセルトが一人。左側には、モースら三人が対面して座る。そして腰掛けたこの状況から、モースはこれまでにない程の窮地に立たされた。

 ここでの対応次第で、今後の戦争に関わることを話せるかもしれない。そして、一つ間違えれば、パラメキア帝国との会談、対話が不可能になり、泥沼の完全な戦争に繋がる。そんな、一兵士からしたら地獄のような会議が、これから行われるのだ。

どうも、作者の蒼月です。

なんか、この章がどんどん長くなる…………。いやまあ、これはガバガバなプロットを変更したからなんですけどね。本当は、後の章でやることを、先にこっちに回した結果ですね。(そのせいで、こんなに長くなるとは……)


ただ、ここでこれ書けたら、今後の動きを書くのも楽になるんで、必要なことではあるんですよね……仕方ない、これも一種のコラテラルダメージというやつだ……(違いますね、はい)

と、そんな訳で、めっちゃ重要なことを任されたモース。彼の胃は大丈夫なのだろうか!


では、次も読んで頂けると幸いです。

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