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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第八章~交錯する英雄達の想い~
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第二百四十六話~先を見る者~

 当時に動く三人……その中でも、最も始めに動きを見せたのはヴァンセルトであった。


「はぁぁぁああぁぁぁ!!!」


 イクスの気を引く目的も含め、殺気も込めた咆哮をあげつつ一直線に迫る。そしてイクスも、最も厄介であると判断する標的のヴァンセルトを捉えつつ、その手に禍々しい黒い渦を出現させる。それは、ギーブ達もアイゼンファルツ基地での戦いで見たことがあるものであり、空間歪曲とされる魔法。それを前には、物理的なダメージはイクスに届かなず、ヴァンセルトからすれば面倒なことこの上無い。けれど、だからと言って攻撃手段がないのかと言われれば、そんなことはなく


 ……お前にも弱点はあるッ!


 ヴァンセルトはイクスの手から生み出される空間歪曲に、スレスレの位置を通り抜ける。それを用いて攻撃を防がれれば、ヴァンセルトと言えど手出しは出来ない。けれど、それを向けられるより先に懐に飛び込んでさえしまえば、イクスとて剣で戦わざるをえない。

 無論、それが出来るなら初めからすればいい話ではある。しかし……ヴァンセルトは、イクスが分裂して出来たブラッドローズを模した敵と戦っていた。故に、一対一ならば実力差はあろうとも、ヴァンセルトは敵の対処に手を焼いていた。けれど、それが唐突として元の一体に戻り、ヴァンセルトに奇襲の一撃を叩き込んでここまで押し込めたのだった。理由としては、どれだけブラッドローズの兵を模して人形を組み上げ、その実力を引き出そうともヴァンセルトを仕留めるには不安定な要素が多いと判断したのだろう。




 ただ、イクスからしても、この行動には問題があった。それは、これがイクスの本体ではないということであり、実力は完全なものではない。更に言えば、この一体のイクスから分裂して生まれた敵を数体は殺しており、このイクスの力は弱まっているのだ。普段ならば、副体のイクス一体でもヴァンセルト達相手にある程度は戦えるが、ここまで力が落ちては近接戦は不可能に近い。




 これらのことにより、イクスが一人に戻ったのならば、ヴァンセルトでも対処が可能となる。ヴァンセルトは消耗はさせられ、イクスはヴァンセルト相手に殺す力を確保する為に体を一つへと戻す。

 互いに全力、出せる力を出し惜しむことなく発揮し…………先に攻撃を届かせたのは、ヴァンセルトであった。


 ヴァンセルトは飛び込みつつ、宙を浮くようにしながら左へと一回転する。イクスの腕を下から、回転することによって振り上げられた剣で空間歪曲を作り上げていた右腕斬り落とし、その発動を阻止した。魔法も何も無しに、圧倒的な身体能力を駆使しての動き。それは、身体強化を用いるモース達に速度でこそ遅れを取るが、経験則と自身の力、敵の動きを把握しているからこその成せる技。

 これにより、イクスの腕からは血が噴き出し、魔法の発動も止め、完全な先制攻撃を――


「馬鹿が……」


「――ッ!」


 完全な先制攻撃。イクスの腕を斬り落とし、ヴァンセルトの動きに一切の隙は無かった…………筈であった。ヴァンセルトからしてみても、イクスが先に攻撃を仕掛け、空間歪曲で武器を破壊されることまでを想定して動き、これ以上の動きは考えれなかった。ただ、イクスはその想定の上を行くと、それまで体の影に隠していた左手を見せ


「貫け……」


 左手の掌には、氷が見えた。その氷は、イクスの言葉により瞬間的に鋭利な氷柱のように伸び、ヴァンセルトの顔面へと突き出る。それが命中すれば、当然ヴァンセルトも死は免れない。だが、それが見えた瞬間には、ヴァンセルトは内心笑い


 ……その程度、読めているッ!


 イクスがそう簡単に諦める敵な訳はなく、何かを仕掛けてくるのは想定済み。そして、わざわざヴァンセルトを仕留めようと元の姿にまで戻ったイクス。ここで、わざわざ致死性の低い攻撃を選ぶ筈もなく、狙う部位は自ずと理解出来る。そして、イクスにはそれだけの力があり、ここで攻撃を外すような敵でないことはヴァンセルトも理解している。実力の高さ故に、その動きはおおよそ想定出来るのだ。ヴァンセルトは氷の一撃が当たるかどうかという最低限の位置になるように、空中で仰向けになっている状態での回避の為、大剣を振り戻し、迫る氷に刃をぶつける。かなり無理のある動きだが、それでもイクス相手ならば最大の警戒はするべきと、この動きを選択したのだった。

 だが、問題は次である。あくまで、想定出来るのは動きの初動に過ぎない。敵がその次に隠している動きを見極めなければ、何の意味もない。もし、ここで敵の攻撃を見極めれたなどと満身するようであれば、戦場で戦う者としてそれ以上の成長はあり得ない。だからこそ、ヴァンセルトはイクスの次の動きを見極めようと――――


「残念……もう遅い……」


 イクスのその崩れるような笑み。到底、人のものでない表情で笑うと…………体の内側から、イクスは爆発したのだ。それ程大きい訳でも、威力が高いものでもない。しかし、肉薄した状態で、それも氷の一撃を避ける為に空中での回避行動を行ったヴァンセルトには、もう一度無理な回避は行えない。


 ……ここまで読まれたのか……これは、マズイな……。


 どうにもならない状況で、ヴァンセルトは先の読み合いで負けたのだと敗北を認め、爆発の炎に巻き込まれた…………

どうも、作者の蒼月です。

いやぁ、今回時間で言えば数秒間の出来事しか書いてない……(驚愕)

これは驚き、まさかここまで進行が遅いとは……(自分で書いておきながら何を言っているんだ)


と、今回は流石にスミマセンm(__)m次回はそれなりに進むので。とりあえず、イクスが弱い状態でもこれだけの強さということを、書いておく必要はあったので…………(はい、以降また気を付けます……)


では、次も読んで頂けると幸いです。

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