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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第八章~交錯する英雄達の想い~
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第二百三十七話~足りない経験~

 ロイヤルガードも七極聖天も戦い始め、残るはモース達。既に、ブラッドローズも無駄な被害を減らす為と、後ろの者から順次後退を開始し、その時間稼ぎをモース、バウル、ギーブ、その他モースが持つ小隊の残り九人。計十二人で、ブラッドローズを模した敵二百十三人を相手にしようとしていたのだ。


 あまりに無茶苦茶な判断。兵力差は単純に十倍。普通ならば勝てる訳もなく、そんな作戦を指揮官が認めてはならないだろう。だが、この場はあくまで時間稼ぎが目的であり、動きの遅い今の敵ならば、今の人数でも相手にできると判断したのだ。


「おっしゃ、まずは俺が先行するッ!援護は任せたぞ、ギーブッ!」


 バウルは視線を合わせることもなく、真っ直ぐに敵へと飛び込む。ギーブは、そんなバウルの行動に苦笑しながら


「まったく、面倒ばかり押し付けないでほしいですね」


 ギーブはその杖を敵へと差し向け


「火の精霊よ、火の塊となりて、敵を貫け!」


 紡がれる詠唱、その言の葉は魔法陣を展開させ、火球を生み出して敵へと放ってゆく。

 敵は、自分達の姿をしているとは言えど、所詮は作り物。その遅い動きでは回避も出来ず、火球にその肉を焦がされ灰とかしてゆく。また、ギーブの援護を受けたバウルも、もっさりとした動きで剣を振るおうとしてくる攻撃を容易に回避し、大剣を振るい簡単に敵を地面へと叩きつける。


「俺達もバウルに続くぞッ!」


『了解ッ!』


 モース率いるブラッドローズの第一小隊も、バウルの後に続いて、迫る敵を斬り伏せてゆく。身体強化を用いれる彼らだが、それを使わずにしても簡単に倒せる程、敵は弱いものであった。

 時間にして五分も経たない内に、モース達は五十人の敵を倒し、殲滅は時間の問題のように思えた。離れた場所では、ロイヤルガードと七極聖天も敵を圧倒し、イクスが生み出した存在ということもあって、相当の緊張をしていたバウルは気が抜け


「なんだ、結構余裕じゃねぇか……これぐらいのが相手なら、あいつらを撤退させなくても良かったかもな」


「ですが、警戒が過ぎるということもないでしょう」


 ギーブは少し前へと進み、バウルの援護可能な位置をキープしたままで、敵戦力についての判断を行う。バウルの考えは分からなくはないが、あくまで警戒は必要と釘は刺しておく。そして留意すべきは、この弱い兵士をイクスが用意した目的が不明な点である。


 ……あのイクスの力がどれぐらいなのか、それを私達は知らない。しかし、その力がロイヤルガードが三人係りで挑んでようやく対等なのは分かっている……でも、なら何故、イクスはあのまま挑んで来ない。ロイヤルガードをも圧倒出来る力を持つイクスがあれだけいたなら、それだけで我々を殲滅できる筈……。


 ギーブは、その脳内で今の状況を整理してゆく。そして、イクスの目的と、それへの対処方法を思考する。


 ……イクスがわざわざ、こんな手間を掛けてこの軍勢を用意した理由…………イクスがあのままじゃ戦えなかったとすれば……あるいは、あの増えていた奴らは、本来の力を発揮出来ない?そうだとしたら、私達よりもこの木偶人形が弱いのも頷けることではある…………だが……


 ギーブは考えを纏めようとはしていたが、この敵が脅威ではないという確証が持てなかった。もし、脅威じゃないとすれば、ロイヤルガードや七極聖天があそこまで本気で相手をし、部隊を下げた理由が分からない。様々な可能性は考えれるが、戦闘の指揮官としては素人のギーブ、敵の思考は想定しきれない。自分にも、セヴランのような素人でありながら指揮できる才能があればとも思うが、今はそんなことに意味はない。必死に考えを巡らせ、脳が焼ききれても構わないと思考し、巡らせ、加速し……


「な、なんだこいつら!?」


 ギーブをその無限に加速しかねない思考の渦から引き戻したのは、一人のブラッドローズの隊員の声であった。その兵は、敵の攻撃を受け止めた際に、違和感を感じていた。そしてそれは同時に、他の者達も感じたようで


「きゅ、急に、力が……ッ!」

「なんだよ、この力ッ!?」


 見れば、攻撃を受け止めている者達の腕が震えている。彼らは皆、身体強化の魔法で力も増強されている。なのに、その彼らをもってして焦らせる程の力を、唐突に敵が発揮し始めたのだ。


「バウルッ!モースッ!」


 ギーブは、詳しいことを知りたいと二人の名を叫び、戦線の後退を続けて促そうとしていた。しかし……


「ギーブ!こいつら、力だけじゃなくて、速度まで上がり始めてやがる!」


「だが、後退しようにも、こうも囲まれては……ッ!」


 既に、十二人を除いて他の部隊員は後退が完了している。このまま後退さえできれば、陣形を整えれた場所で敵を迎え撃てる。けれども、既に敵の弱さ故に早期殲滅を目指して前進したことがあだとなり、後退をしたくとも周囲を囲まれてしまっていた。


「くそッ!」


 この状況に、ギーブは杖を地面に力任せに突き立てて、その怒りを露にしていた。


 ……私なら、バウル達と違って一歩引いて部隊を把握出来ていた。ロイヤルガードや七極聖天が後退をしているのも、理解していた。あれだけ、イクスが恐ろしい存在だと分かっていながら、警戒が――想定が甘かったッ!私なら……私なら、ここまで囲まれるより先に、後退を指示出来た筈だッ!それが、こんな無様を…………ッ!


 悔やもうとも、既に刻は進んでいる。ギーブがこのミスを理解しても、現状の不利は変わらなかった。しかしそれでも、ギーブは自分が許せなかった。そんな甘さを、ここで露見さしたことを。自分のミスで、仲間を死に近づけた。そんな責任感は、ギーブから冷静さを失わせ


「ッ!――ギーブ避けろッ!!!」


「え…………」


 意識が戦場から離れていたことを、ギーブはバウルの叫びで理解した。そして、その視線の先に、敵が刃を向けて迫っていたことも…………

どうも、作者の蒼月です。

危険!ギーブ、絶体絶命のピンチッ!

さて、今回はギーブが指揮をすることの難しさに直面する回に最後はなってましたね。

何をしながら他のことに意識を向けるのは、中々難しいことです。まして、刻一刻と状況の移り変わる戦場では、それは尚更。さて、そんなピンチの中で彼らは、どうやって経験を補って戦っていくのか。そして、ギーブのピンチはどうなるのか、またのお楽しみです。


では、次も読んで頂けると幸いです。

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