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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第一章~模擬戦~
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第九話 ~模擬戦~4

「は?…………な、なんだ!?」


 セヴランは無意識のうちに回避行動をとっていた。直後セヴランのいた大地が、カーリーの下から一直線に割られた。自分が何故回避行動をとり、何がおきたのか理解が追い付かなかったが目の前の割れた大地を目に


……まさか、剣圧で地面を割ったのか!?


 セヴランの考えは的中しており、カーリーはただ剣を振るっただけであった。カーリーは剣を正面に構え直すと


「さあ、いつまで避けられるかな」


 カーリーから新たに三撃が放たれる。セヴランに目掛けて、それぞれ横へ回避をすれば隣の剣圧に当たる正確な間隔。


 ……後ろに下がるしかっ!


「甘いなっ!」


 後ろへ跳躍すると同時に、眼前には既にカーリーが迫り剣を向けられていた。辛うじて剣で受けるが、セヴランは地面に叩きつけられる。


「ぐぅ……なんて……速さなんだ…………」


 セヴランは痛みをこらえながら体を引き起こす。カーリーの姿を探し見渡すが


……どこに行った?


 自分の正面にカーリーの姿は既になく、浮き上がった可能性を考えシンに視線をやると


「伏せろ!シン!!」


 シンが叫びに合わせ体を沈めると、それまで体のあった空間に一閃が走る。

 カーリーがシンの背後に回り、

 カーリーは続けざまに剣を降りおろし――――鈍い金属のぶつかり合う音に変化する。


「身を挺してまで仲間を守るか、嫌いではないな」


「それはどうもっ!」


 カーリーの二撃目はシンとの間に割って入ったセヴランに受けられる。刃の側面で受け、刃を手で支えることでなんとか姿勢を保つが


 ……力を抜いた?


 セヴランの疑問とともにカーリーの刃が遠退き、セヴランの目の前に足が迫る。同時にセヴランとシンが吹き飛ばされる。


「ま……回し蹴り……体術も込みか、大丈夫かシン」


「なんとか……な、それより退いてくれよ」


 セヴランは身を起こし、シンも重圧から解放され身を起こす。


「蹴り一つで二人とも吹き飛ばすとは、化け物だな」


 剣を地に突き立てようやく姿勢を維持しつつ、セヴランが立ちながら愚痴をこぼす


「それで、どうするんだ?カーリー隊長、本気でやる気みたいだぞ。もう模擬戦とかそういうのは関係なくなってる、打つ手はあるのか?」


 シンの言葉にセヴランは答えを探し――――一つの方法を考えていた。


 ……出来ればこの力は使いたくなかったが、ここまで来たら引くわけにはいかないよな。カーリー隊長に勝つことも出来ないようじゃ前線で戦い抜くことは無理だろうしな……


 セヴランは剣を地から引き抜き正面に構え、カーリーを見据える。


「シン、アレイとリョナの三人で少しだけ時間を稼ぐことは出来るか?」


 セヴランの言葉にシンはほくそ笑み


「無茶言ってくれるね、けどこのままじゃ俺達が負けてそれで終わりだからな……やってやろうじゃねえか!」


 シンは腰の短剣を引き抜き


「アレイ!リョナ!俺ら三人でやってやるぞ、突っ込めっ!!」


 掛け声と共に三人でカーリーへの突撃が行われる。

 セヴランは剣を両手で構え、足元に魔法陣が広がる。同時に言葉が紡がれる。


「魔法?やらせは……」


「おっと、隊長には俺達の相手をしてもらわねぇとな!」


「くっ……!」


 カーリーはセヴランへ迫ることを阻まれ、セヴランの詠唱はつづけられる。


「灼熱の炎は熱を奪われ、流るる水の時は止まり、旅する風は行き場を失い、大地の息吹はその灯火を潜めん、四属から解き放たれし氷結の精霊よ、我が呼び掛けに応えその氷結の力をもってして我が敵の時を奪え……」


 セヴランは剣を逆手で地に刺し


「凍れ、銀世界よ…………」


 言葉ともに周囲の景色が銀色に染め上げられた…………。



「な、なんだこれは!」


「地面が……凍ってる!?」


 セヴランの魔法陣を中心に大地が凍る。その範囲は瞬間的に広がり、広間の大地が一瞬で氷付けになった。


「シン!二人を引かせろ!」


「わ、分かった!二人ともこっちだ!」


 シンの掛け声でアレイとリョナがカーリーから離れ、カーリーとセヴランが真正面から対峙する。


「これほどの範囲を凍らせる魔法……初めて見たが、凍らせるだけで終わりなのか?」


 カーリーはセヴランに向け剣を構え直す。


「いえ、これだけではなんの意味もない魔法ですからね」


 セヴランは言葉とも共に地面に刺した剣を引き抜き、左手を腰のもう一つの剣に手をかける。


「ほお、多少気になってはいたが、双剣とは珍しいな」


「えぇ、退屈はさせませんよ」


 セヴランは左手で剣を抜き、正面で交差させる。カーリーも一歩踏み込み、距離をつめる姿勢を見せるが


「我は疾風、我は迅雷、止まりし時をも破り四属から解き放たれし雷の精霊よ、我が呼び掛けに応え神速の加護を与えたまえ……」


 セヴランの剣に冷気と雷が宿り


「駆けるぞ、雷神光…………」


 言葉を紡ぎ終えると同時、それまであったはずのセヴランの姿が――――消えていた。


どうも、作者の蒼月です。

想定以上にセヴランとカーリーの戦いが長くなったので分割したため今回の話は内容が短くなりました。



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