表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第八章~交錯する英雄達の想い~
231/560

第二百十四話~魔法を扱う者達~

 徐々に後退を進めるパラメキア軍。そこに、包囲を仕掛け進行するレギブス軍第一陣。それを、一人のロイヤルガードと、五千人からなる第一大隊で抑え込み、パラメキア軍は呼び寄せた魔導部隊が前線にたどり着いた。そこには、他ロイヤルガードの二人以外にも姿があり


『………………』


 フードを被せられ、表情の全ては見えない人の列。ヴァンセルトとリノームを先頭に歩く二十二人の姿。その周囲を囲む魔導部隊は赤基調の揃った軍服。ただ、その二十二人は純白のローブで包まれ、そこから受ける印象は何かの儀式に参加するようであった。

 その彼らを戦場まで連れてきたヴァンセルトは、一度振り向くと魔導部隊に手の合図で何かを指示し、リノームと共に列から離れる。そして、魔導部隊は広く円を組むように広がり、その中心では小さな円を形作るように二十二人が並んだ。彼らは何かを紡ぎ、その場に魔法陣の構築を開始した…………。




 その頃、レギブス軍第二陣にて


「時間が掛かっているな……予定よりも遅れているぞ」


「文句言わないで。私はこうやって外から結界の維持しないといけないし、いくら彼らでも私抜きで純正魔法の発動なんて」


 陣地の中央で、計五十二人もの魔導師が揃った詠唱を行っていた。その周囲には魔力が溢れ、青白い光が宙を漂っていた。そこに遅いと文句を言うのはハインケルであり、この魔法の発動の指揮を行う魔導師マリーンはあきれ気味にハインケルの意見をはね除ける。


「間に合えば問題はない……急がせろ……」


 ハインケルはその場から離れてゆき、奥へと姿を消した。あまりにも勝手とも言える指示に、マリーンはため息を吐きつつも


「ごめんなさいね、ハインケルったら無理ばかり言って」


 マリーンに覗き込むように話し掛けてきたのは、ハインケルといつも共にいるタリシアで、七極聖天内で仲の良いマリーンの心配をよくしてくれる人物であった。七極聖天がどこか狂った人物の集まりと言えるため、ある程度まともな思考のタリシアとの会話は、マリーンにとって癒しの時間と言えた。


「貴方が謝る必要はないわ。それに、彼の言うとおり、こっちはこっちで急ぐ必要もあるからね」


「あらそう?それにしても、凄く綺麗な見た目ね~これで、人の命が簡単に幾つも消えるなんて思えないわね」


「……魔法なんて、人から見れば巨大過ぎる力なのよ。私とエメリィで編み出した術式魔法も、所詮は人が扱えるように無理やり力を押さえ込んでるに過ぎないもの……」


 二人は、目の前で進められる魔法の完成を眺め、魔法の危険さをしみじみと語る。

 今行われている魔法の構築、これも本来理論的には必要がないことだ。魔法とは、この世界に住む精霊に語り掛け、この世界の魔力を分けてもらい望んだ奇跡を起こす技。それは、望み、語り掛けるだけで奇跡を起こせるということ。だが、現実的には、この世界から分け与えられる魔力が膨大過ぎ、それが自身へと逆流し溢れた魔力が体を壊す。過去にはあった筈の力は失われ、人類に魔法は使えないものとして長年放置されることとなった。

 しかし、そこで二人の天才――マリーンとエメリィの二人が術式という概念を生み出し、術式魔法が完成することとなる。魔法が語り掛けるだけで全ての力が使えるなら、言語で力のやり取りが行われる。すなわち、言語の壁を作れば力は制御出来るという考えである。古代の言葉を違う魔法として並べ、今の言葉とは逆の意味を与える。そうすることにより、本来の言葉で力を引き出し、古代の言葉――つまり術式で反対に力を流させる。こうすることによって力をある程度だが、おおまかに制御することに成功し人でも使える力にしたのであった。

 この術式魔法の完成までに、多くの魔法に携わった者は命を落とし、少し前までは禁忌としている国さえあった。だが、それをレギブスという国は誰でも使えるような力に変えたのだ。これにより、レギブスは他国よりも圧倒的な力を得ることとなり、今はパラメキアと並ぶまでに成長を遂げる。


「でも、そんな危険な技をこうやって更に使おうって言うんですもの、私達はいつか神様に殺されますね」


 タリシアは、マリーンの隣で笑顔でそんな物騒なことを言い始める。だが、それはマリーンも納得する。そもそも、今発動させようというのは…………


「でも、この純正魔法は私が完成させた力。もう、あの子に遅れはとらないわ……」


 マリーンは、自身の内に一人の憎い顔を――エメリィの顔を浮かべる。浮かび上がる感情は憎しみ……それは顔にも表れていたのか、気が付けばタリシアに頬をつつかれ


「その顔は良くないわ。憎しみに刈られるだけでは、この先の地獄は生き残れないわよ」


 いつも、何かに囚われている七極聖天の面々。だが、それをタリシアは気に掛け、そして道が外れないように手を引いてきたのだ。何回目かも分からないそれに、マリーンは瞳を閉じ


「ありがとう……」


「いいえ、私も人のことはそう言えないから」


 七極聖天の切り札の一つである魔法は、そんな会話の隣で完成が急がれ、レギブス側の準備が終わろうとしていた…………

どうも、作者の蒼月です。

今回は魔法に関してのお話でした。

少しばかり、術式魔法に関してのことを書きましたが、これは書き始めた当初から幾らか設定が変更されているので、もしかしたら矛盾がおこるかもしれません……可能な限り、そんなことはないようにしますが、もし矛盾が生じた場合は開始当初のを変更する形になるかと(気を付けますが、もしそうなったらごめんなさいm(__)m)


マリーンの過去も少し見せたりしながら、次に繋がる形で書けたのでよかったかな?


では、次も読んで頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ