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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第八章~交錯する英雄達の想い~
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第百九十七話~戦争の目的~

 モースが口にした疑問に、バウルとギーブは何を言っているんだと二人は顔を一度見合せ


「霧に飲まれて土地が狭くなって、しかもオータムが滅んで食料が足りなくなってるからだろうが」


「どれだけ多くの土地を獲得出来るか、パラメキアとレギブスの 領土拡大の競争……生き残る為の戦いに、このフィオリスも標的にされただけでしょう」


 二人は太陽の登った空を見上げ、冷静にこの国の現状を語る。どうにもならない、逃れることの出来ない現実。大国の都合に振り回され、小国が戦争に巻き込まれてゆく。この戦争で、望んだ国や望まなかった国は分かれるが、既にパラメキアとレギブスの一部となり、殆どの国は消えていった…………。今、モース達が移動しているパラメキアの領土も、元は一小国であった。それが、パラメキアの侵略で併合されて消えたのだ。最早、パラメキアとレギブスが広がるフィオリスより北に、小国が生き残っている場所は存在しない…………。

 こんな時代に、安心できる平和な場所などないのだ。フィオリスも他の小国と同じように中立を吟い、パラメキアにもレギブスにも属してはいない。しかし、それが今のフィオリスの現状を招いてもいるのだ。侵略を幾度と受け、誰もが何かを失ってきたのだ…………。


「戦う理由なんて、もうないのかもしれませんね…………」


 ギーブは、視線を沈ませつつ暗い表情で呟く。戦う理由、それは人それぞれだ。パラメキアにも、レギブスにも考えはあるだろう、しかしそれはモース達の知るところではない…………。




 だが、モースが疑問に感じたのは、ギーブが口にしたような誰もが思うことではなかった。モースは二人の言葉に首を振り


「いや、そう言うことじゃない…………パラメキアとレギブス、互いにあれだけの力も土地もある。オータムの滅亡は謎だが、それでも戦争をする必要があるのか?」


「ん、そりゃあどういうことだ?」


 バウルはモースが何を言っているのか分からず、ギーブへと首を傾げるが、ギーブも分からないと首を傾げている。モースは仕方ないと説明を続け


「この大陸の食料全てを賄える程の生産量を誇ったオータム。あの大地が使えなくなったから、食料が足りないと戦争をしているだろ?だが、おかしいんだ……フィオリスのように、土地がそもそも広くないなら食料が足りないのも分かる。今は、貿易を出来る相手国もないから、小国は自給自足を強いられるからな」


「それが、何かおかしいのですか?」


「……今これだけ領土を拡大し、多くの民を得たパラメキアとレギブスなら、土地を切り開けばまだまだ食料を生産出来る。霧に飲まれているのは確かだが、その進行速度はそこまで早くないと記録されている……なら、何故パラメキアとレギブスは、ここで消耗しかしない戦争を行う?」


「そりゃあ、残る大国を自分達のものにすれば、それで戦争も終わるじゃねぇか。それに食料の問題も、それで解決出来る訳だしな」


 バウルは普段はあまり考えない内容故に、そこまで考えての発言ではない。しかし、一般的な考え方ではあり、誰でもそう考えるだろう。だが、当たり前と話を終わらせてはいけないとモースは考え


「確かに、一度始めた戦争を終わらせるには、敵を全て倒すのは一つの手段だ。だが、今のパラメキアとレギブスに、その必要があると思うか?」


「「????」」


 投げ掛けられた質問に、バウルとギーブは疑問符は浮かぶが答えは出せない。


「本当に食料問題だけが原因で争うのなら、これ以上は無意味の筈だ。戦争は、無駄に消耗を大きくさせる。ここまで土地を増やせたのだから、後は食料を生産することに集中する方が絶対的に効率がいい。霧の問題も、協力をして解決の道を探すことも可能だ…………それが分からない程、パラメキア帝国もレギブスも馬鹿じゃないだろう。なら、一体何の為に戦争をする。ロイヤルガードの襲撃といい、レギブスの襲撃といい、この動きには何か意味がある筈だ」


 モースの立てる仮説に、バウルとギーブは一瞬困惑の表情を浮かべるが、それが決して無意味にも思えず


「まあ確かに、パラメキアの動きはおかしいのは分かる。竜の血、だったか?それを引く者がどうとか言ってたし……」


「そこに関しては、今セヴラン達が会いに向かってるセヴランの師匠に聞けるのでは?情報収集は、今は向こうの担当ですし」


 三人とも、それぞれ思考はしてみるが、それを考える為の情報が足りない。そもそも、こういった内容の話をするのはセヴラン達の役目である。本来自分達がするべきではない事に、バウルは考えることを止め


「止めだ止めだ!それに関しては、あいつらが戻ってきてからだ。それよりも先に、俺達は目の前の仕事だぜ」


 台車の上で一度立ち上がり、二人に向けて進行方向を親指で指した。そこには問題の一つである、音を一切出すことのない不気味な街が見え始め


「……そうだな。この話は、せめてここを乗り越えてからだな」


 この戦争そのものに対する疑問を持ちつつ、モース達は静寂に包まれた街へと向かっていった…………

どうも、作者の蒼月です。

思ったよりも、戦闘より解説パートが増えてます(どうしよどうしよ……)

まあ、平原にたどり着くまでの辛抱ではありますが……


さて、セヴランも誰も疑問に思わなかったことに、ここでモースが勘づき始めました。

ここの話は、セヴラン達が動いていた間のお話に当たる訳ですが、セヴラン達とは違う形でモース達も情報を手に入れている訳ですね。


では、次も読んで頂けると幸いです。

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