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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第一章~模擬戦~
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第六話 ~模擬戦~1

 広間にはセヴランとシンよりも先に、カーリーと二人の男が着いていた。三人はそれぞれ鎧を身に纏い腰に剣を携え、戦闘がいつでもできるという姿だ。セヴランとシンが近づくとカーリーは振り向かずに


「二人か、今年は来るのが早いな」


 カーリーは上げていた視線を落とし、セヴラン達を見ながら


「毎年は一人来るのにももっと時間がかかるものだが、お前達は期待出来そうだな」


「来ただけで誉めてもらえるとは、今年は優秀な人材が多いんですかね」


 セヴランは多少皮肉めいた言い方で応えるが


「まあ、これは個人的な評価だから、この後の評価には関係ないがな、この後も頑張ってくれ。」

カーリーはそれだけ言うと視線を上げ、再び沈黙する。セヴランとシンもカーリーらと他の仲間が来るのを待つ。



 カーリーらとの会話をしてから十五分ほどたった後、部屋での会議を終えた他のメンバーが少しずつ集まってくる。


「それで、お前言ってた仲間ってのは……」


「シン、お前のほうは上手くいったみたいだな」


 セヴランがシンにかけた声は新しい声に書き消された。新たな声の主にシンは


「アレイ、リョナ、遅かったじゃねえか」


 アレイと呼ばれた男は黒髪に同年代とは思えないほどの体格、背にしている大剣からも並の鍛え方でないことが分かる。一方、リョナと呼ばれた女は肩ほどまでに伸びた黒髪に細いラインの体、担いでいる弓を扱うための最低限の鍛え方なのだろう。セヴランは手を差し出す


「今回の模擬戦で勝つために協力することになったセヴランだ、今後よろしく頼む」


「私はリョナ、みての通り弓兵よ、よろしくお願いね」


「俺はアレイだ、シンの馬鹿が迷惑かけなかったか?」


「俺が迷惑かけるわけないだろ~お前はもっと俺のことを信用をだな~……」


 手を交わした後、話が長くなりそうだと判断しセヴランは


「そろそろ始まるからシンも静かにしろ」


 注意するとシンも黙り、皆がカーリーに視線を向ける。カーリーも全員が揃ったのを確認し


「よし、全員揃ったな。それではこれより模擬戦を行う!」


 広間の中央にカーリーが立ち、兵舎側に各グールプごとに集まる


「この模擬戦では実力をみることが目的だ、しかし本気で挑んでもらわないと意味がない。故に君達には殺す気で挑んでもらいたい」


 カーリーの言葉に皆僅かに動揺する、しかしカーリーは言葉を続け


「こちらは私と部下の二人で挑む、君達は何人で攻撃しようが構わない。一対一を望むというならそれも受け付けよう。攻撃手段も問わない、私達を戦闘不能にまですることが出来たら君達の勝ちだ、では早速始めよう」


 言い終えると同時に三人は腰の剣を抜き正面に構える。対して新兵のグールプは徐々に下がり距離を開けるが、誰も剣を構えれずにいた。



 皆、視線を交わしながら、突撃する機会をうかがっていた。しかし、皆集まったばかりの集団、連携を取ることは不可能に近くやみくもに突撃しても反撃を食らうだけである。動きがなかった集団の中で一人が声をあげる。


「お前らは下がれ!俺達が始めにやらせてもらうぜ」


 新兵の中で最も大柄な男、バウルも相当な鍛え方だったがこの男はそれをも超えている、同じ年代だというのに長年戦っていた戦士のような風格を出している。男の言葉に皆が後退する。全員が後退するのを横目で確認した後、男とその仲間であろう四人がカーリー達と対峙する。



 セヴランは後退を終え、


 ……この状況で始めに突撃する判断をとれたのは勝算があるのか、どちらにしろ相手の実力を計れる意味においてもこの状況は都合がいいな


 隣のシンや他の仲間も緊張をしているのか体が力んでいるが、対してセヴランは腕を組みすでに力を抜き、目の前の戦いに注目する。

 カーリー達に動きはなく、対する五人も動けずにいた。


「なあ、これいつまで続くんだ?」


 多少緊張が解けたのかシンが質問をしてくる。


「相手の実力が分からないのに懐に飛び込むのには実力に裏付けされた自信か、経験則がないとな」


「なら、こんなのがいつまでも続くっていうのか?」


「嫌、そろそろ動くんじゃないか?おそらくあの大男から」


 セヴランの言葉とほぼ同時に目の前に新たな動きが生まれる。



 カーリーと相対する大男、バウルは背の大剣を抜き正面に構える。


 ……かなり不安だが、こっちから攻めるしかねぇか……


 バウルは横目で左右の仲間に合図を送ると、剣先を落とし走り始める。合わせるように四人も駆け出す。四人は二人一組となりカーリーの部下を押さえるように左右から突撃する。カーリーと一対一の状況を疑似的に作り出し、真正面から突撃する。


「一対一か、受けて立つぞ!」


 カーリーも正面から戦う姿勢を見せ実力勝負になる。


 ……あれは相当強そうだな、持久戦に持ち込めばこちらが不利になるな。


 バウルは自分の背丈近くある巨大な大剣の剣先を地に擦りながら距離をつめる。カーリーよりも先に間合いに達し、バウルからの攻撃が始まる。


「うおぉぉぉぉ!!!!」


 バウルは大剣を横に振り切る。大剣は鉄の塊、走った助走に大剣の重さゆえの質量が生む破壊力は大きく、カーリーは回避のためバックステップで避ける。バウルは空振った大剣の流れを止めることなく体をねじり大剣を持ち上げ


「はあぁぁぁぁ!!!!」


 カーリーの頭上めがけて大剣が降り下ろされる。カーリーは回避を行ったために僅かに姿勢が崩れており、行動に遅れが生じる。故に回避ではなく剣を頭上に構え受けの姿勢を取る。


 ……そんな細い剣で受け止めれるかよ!!


 バウルは渾身の一撃を叩き込む。が、カーリーは大剣を斜めに受け、刃を滑らされて回避される。バウルの大剣の剣先は完全に地に落とされ態勢を崩される。一方カーリーは再びバックステップで距離を取り、態勢を整える。


 バウルは大剣を持ち上げ構え直すと周囲の状況を確認する。バウルの仲間である四人もカーリーの部下に歯が立たず、態勢を崩されていた。


 ……これで状況は振り出し――――嫌、実力が分かった以上こっちが不利か。


 バウルは次の手を考えつつ再び膠着状態が始まった。




 カーリーはバウル達の実力を評価していた。


 ……あの若さであの大剣を使いこなすとは、相当な鍛え方だな。それに身のこなしも悪くない。実践での経験を積めばまだまだ伸びるな。他の四人も充分な実力……、このぶんならこの五人は即実戦でもなんとかなるか…………


 五人の評価を終え、カーリーは再び剣を構える。同じく部下の二人も剣を構え


「その若さでその強さとは、称賛に値するな」


「世辞なんて要りませんよ、今の俺じゃああんたに一撃も加えることは出来ないだろうしな」


 バウルは気を緩めず、警戒を強めたまま軽口で応える。


「実力も、ある程度分かった。今度はこちらから行かせてもらうぞ」


 カーリーは剣先を下ろし走りだす。

 距離をつめ、先にバウルの間合いに入り


「でやぁぁぁ!!!」


 バウルが大剣を降り下ろす。

 カーリーはステップで横に回避し、大剣が地にぶつかる鈍い音が響く。

 音で回避したと判断し、カーリーは剣を振り抜く。

 バウルは体を回し大剣を盾にする。

 カーリーの剣とバウルの大剣がぶつかり高い金属音が響きわたる。

 カーリーな一撃を防いだバウルは崩れた態勢からの防御で姿勢を保てずにいた。剣を地面につき立てようやく立っている状態。

 カーリーは弾かれた反動を利用し、姿勢を落としつつ体を反対に回し追撃をかける。回りながら剣を持ち替え、反対方向からの追撃。

 バウルに防ぐ術はなく、動かなければ首が飛ぶ。故にバウルは動いた。

 回転し剣を振り抜く瞬間にカーリーは見た。バウルが剣を手放し、姿勢を落とすのを。


 ……言い判断だ、まず一番にすべき回避を選べた、だがっ…………!!


 左から振り抜いた剣が空を切るが、即座に右手で柄を抑え両手で剣を背から回し上から降り下ろす。

 バウルも大剣で防ごうと持ち上げようとするが


「終わりだ…………」


 大剣の重さゆえ、バウルが構えるより先にカーリーの剣先がバウルの目の前に突きつけられる。



 カーリーは剣を鞘に納め辺りを見渡す。すでに他の四人も部下に敗れていた。


「まずは五人終了だな、さて、次は誰がかかってくるのだ?」


 カーリーは笑みを浮かべる。まるで楽しんでいるかのような、

それは初めの優しさの笑みではなく、獲物をもてあそぶ猛獣のような強者の笑みであった。

どうも、作者の蒼月です。

ここからしばらくの戦闘は長くなります。戦闘描写を絵にするとかなり短いのですが、まだまだうまくまとめきれておりません。

次からもがんばりたいです。

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