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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第八章~交錯する英雄達の想い~
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第百九十話~若き戦士達~

 モースとギーブの口論などいざ知らず、ブラッドローズの面々は移動準備を矢継ぎ早に進めていた。全員、装備の確認を終え、移動の馬車も揃え終えた。後は、指揮官であるモース達の意見のみという状況だが…………


「あれ、大丈夫なのか?」

「さぁ?まあ、セヴラン隊長が任せたんだし、大丈夫なんじゃ」


 中々次の指示が来ないことに、暇を間て余した兵士達は雑談を始める。これも、まだまだ若い子供だからなのか、ブラッドローズはある程度の規律こそあれど、兵士一人一人はかなり自由であった。

 元々、彼らは身寄りのない子供達のである。更にその中でも、国や民を守りたいと力を求めた者達。故に、正規の軍隊ではあり得ない、所属するほぼ全ての者が子供という部隊である。勿論、皆が五年間、王都地下の基地にて今の力を得る訓練に励んできた。実戦経験こそこれまで無かったが、身体強化から得た力は並みの兵士の戦力を超える…………と、扱いも難しい特殊な組織であった。そんな彼ら故に、年も近い隊長相手でも、敬語を使う者もいれば使わない者もおり、これはそんな彼らを表す一面なのだ。

 そんな期待と不安をモースらは仲間に寄せられ、作戦の完成を急いでいた。




「……指示、作戦はこれでいいか。ギーブもバウルも、問題ないな?」


 モースは仲間へと告げる作戦概要をギーブとバウルに説明し、一人では決めきれない部分を仲間に判断を求めたのだ。ギーブとバウルも、自分達が何故この立場を任されているのかを分かっているため、モースの作戦に意見を出し


「パラメキア領内を突っ切るってだけでも肝が冷えるが……とりあえず、強行突破をする際の迎撃は不安が残るな。今のこの案だと、銃装隊からの射撃で障害物が全て排除出来るのが前提だ。だけど、そりゃあ流石に無理だろうな」


 バウルは、提案された作戦の内容の一つに難色を示していた。敵に襲撃されるのは前提の上で、それの対処に困っていた。その理由としては


「私も同意見です。銃装隊は、その破壊力こそ目を見張りますが、やはり連射は出来ない。これから突撃するのがパラメキアである以上、敵の迎撃は相当なものの筈…………やはり、銃装隊以外での攻撃を、何か考える必要がありますね」


 ギーブは、今の銃装隊の問題点を上げた。そして、それはモースも理解していたのだろう。「やはり」とその視線を落としながら、自身が示した作戦の問題を簡単に指摘されたことに力不足を感じさせられていた。


「ならば……銃装隊以外で使える戦力は二択か」


 モースは、この作戦の穴を解決する策も考えていない訳ではなかった。これまで、ブラッドローズの部隊長を務めていた経験から、そこまでは考えれる。けれども、モースにはそれが正しいかを個人では判断出来なかっただけなのだ。

 そしてモースの言葉に、バウルとギーブはそれぞれが答えを述べ


「身体強化による加速……剣士による一撃離脱での対処か」


「私の魔導部隊……魔法を用いての殲滅か」


 二人に上げられた答えは、モースが考えていた解決策そのもの。つまり、このどちらかの戦力を使うことで、この問題は解決するのだ…………だが、問題とはそう簡単にはいかず、これにも問題はつきまとう。

 バウルは腕を組みつつ、一を示すように人差し指を立て


「これは、近接攻撃による被害が増えやすい。中でも実力のあるモースの小隊に任せるしかないな」


 そしてバウルに続き、ギーブは杖で地面に何かを描きながら


「魔法による殲滅は、圧倒的に消耗しますね。魔導師エメリィ程、我々は才能がある訳ではないです。幾ら魔法が、精霊から力を借りるものとは言え、移動だけでも二日間持つ自信はないですね」


 上げられた問題は、部隊の消耗か、魔導部隊を完全消耗させるか。二つの問題は分かってはいるが、モースには決めきるには大きすぎる問題である。どちらにしても、仲間の命を天秤に賭けるしかない。それを、まだ二十になるかどうかの子供に判断させるというのが、どうかしているのだ。セヴランが、それを行っていることもまた、どうかしているのだ………………。


 しかし、判断は下さなければならない。それが、皆が納得し、モースに任された任務なのだから。バウルとギーブも副指揮官として、あくまでモースの補佐をする立場として、最後の判断をモースへと託す。


「モース、決めてくれ」


「どちらにしても、私達は貴方の指示に従います」


 二人に、最後の決断を迫られる。もう、ブラッドローズが作戦行動を開始するまでの時間の猶予は残されていない。これが、時間を掛けれる最後の時なのだ。


 そして、モースは判断を下し…………


「………………魔法の破壊は、向こうの戦線で必要になるだろう。ならば、道中の迎撃には、近接攻撃でいく」


 遂に、モースに最終決断が下された。これにより、ブラッドローズ全部隊へと指示が下せるようになり、バウルとギーブの二人は皆が並ぶ前の台車の上で立ち上がった。それまで座っていたモースも立ち上がり、これまで待機をしていた面々の前に視線を向けた。


 ……はぁ……セヴラン、私と同じ年齢で、方面軍で二個大隊を指揮したのか……考えれないな。これが、指揮官の責任ってやつなのだろう。


 モースは、当初こそセヴラン達を認めていなかったものの、模擬戦を経て実力を認めていなかった。そして、今では部隊を指揮することの実力も認めれた。故に、力を得た兵士として、モースもやれることは全力の覚悟を決めており


「全員聞け!これより、我々はパラメキア領内を移動し、北側での戦闘……始まるパラメキアとレギブスの戦争を止めに行く。ここで、両国が無駄に戦っても、この世界の状況は良くならない。無駄に民を傷付けるこの戦争を、我々は黙って見過ごす訳にはいかない!民を守る為に集ったブラッドローズ、我らの力を見せる時だッ!」


『うおぉぉおおぉぉぉ!!!!』


 モースの号令に合わせ、その兵士――いや、戦士達は剣を掲げ、その刃に月の輝きを映していた。戦士の咆哮は夜の闇へと轟き、彼らを繋ぎ止めていた時という鎖から放たれる。


「全軍、作戦行動開始!目標地、ラグナント平原ッ!」


 モースの叫びにより、アイゼンファルツ基地前に並んだいた全ての馬車が一斉に駆け始める。世界の戦争を終わらせる為に、背に紅き薔薇を背負いし者達は、その黒き姿を闇へと消えて行くのであった………………

どうも、作者の蒼月です。

遂に動き始めたブラッドローズ。この時の為に設立され、戦いに身を投じる若き戦士達。

こういう時代なので仕方がないというのはあるのですが、やはり若者が戦うというのはいい面と悪い面がありますね。自国のことを考えれるのはいいですが、戦いだけでは得るものより失うものの方が多いですから。(まあ、そんな偉そうに言える程、おまえは偉いのかと言われそうですが……)


こういう物語を書くとき、やはり命を無意味に扱わないようにだけは、常に心掛けてはいますが、戦争のお話を書くのは大変ですね


では、次も読んで頂けると幸いです。

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