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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第七章~始まりの地へと収束する運命~
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第百八十五話~仲間のもとへ~

「ロイヤル、ガード……」


 想定など出来る筈のない、仲間からの報告。セヴラン……そして他の四人も揃って言葉を失い、思考が一瞬の停止を得る。だが、そんな事は通信相手の兵が知るわけもなく、途切れ途切れの音で構わず会話が続けられた。


『隊長らは――する――流するにし――今の状――――』


「……おい、おい!応答しろ!何が…………切れたか……」


 通信機からの声が完全に途切れ、キルは通信機を持つ腕の力が抜け、だらりと落ちる。仲間の位置を聞きたくとも、おおよその位置しか聞けず、確認出来たことは僅かであった。


「さっきの言葉からして、フィオリスの国境沿いにいる……バーンズ、ここらでフィオリス側の兵士が駐屯できる場所はあるか!」


 キルは諦めかけてはいたが、少なくともおおよその位置は分かったのだ。しかしセヴランは諦めず、即座に国の地理に関して最も詳しいであろうバーンズへと確認を取る。

 セヴランの考えを理解し、バーンズも即座に記憶から周辺地理を洗い出す。この周囲は元々、三つの国境が接し、しかしどこにも属さない地域であるラグナント平原。この平原内に本来はどこも基地を持たない。故に、フィオリスも駐屯地がある場所は限られ


「フィオリスの山脈に続く道……その麓に、確か小さい駐屯地があった筈だ。まあ、部隊がないから何年も前に破棄された場所だが」


 バーンズは過去の記憶から、フィオリス王国の北側駐屯地の場所を口にする。

 セヴラン達もその場を地図の記憶から照らし合わせ、目的地を把握する。


「あそこか……行ったことはないが、確かにあそこなら……」


「えぇ、現状の判断材料だけから考えれば、妥当な場所かしら。……どうしてか爆発も止んでることだし、早く移動をしましょう」


 セヴランとリーナは納得し、空を見上げた。リーナの言葉通り、何故か爆発は唐突に止み、移動をするには最適であった。移動の話には、疲れた表情のエメリィも頷き


「そうね、早くここを離れたいわ……これ以上、魔力を使うのはしんどいわ……」


 連続、同時、そして多重展開をした魔法の数々。魔法を同時に使用するだけでも一流の魔術師であり、更に魔力を行使するエメリィは異様であった。その魔法の連続使用によって助けられたことにセヴラン達は感謝しつつ、即座に移動を開始しようとするが


「待ちなさい」


 誰も考えていなかった人物の発言に、全員の視線が集められる。

 その言葉の人物とは、ここまでただ着いてきただけのソフィアであった。杖を掲げた彼女は、目的地の方向の空を見上げながら魔法陣を展開させ


「移動する場所は分かったわ。あそこなら、もう一度空間転移すればいけるわね」


 ソフィアの発言、それは常識では考えれないものだが、既に一度体験した五人は何を言っているかを理解している。しかし、それ故に……


「アレ、一体何なんだ……出来たら、落ち着いてから聞きたかったんだが、またするってのか?」


「……同意する。私も、アレの感覚はあまり好みではない……」


 バーンズとキルの二人は、ソフィアの空間転移についての疑問と反発を見せ、その表情は決して良いものではなかった。

 それは、ソフィア自身も理解していたのだろう。困った表情を見せながらも、何も無かった背の空間から空いた左手で二本目の杖を取り出し


「そうね……簡単に説明すれば、あれは場所と場所を直接繋ぐの。その間にある空間を無いことにして、場所を鏡合わせみたいにして反転させる…………って、これで分かるかしら?」


 ソフィアは簡単にと言ったが、その説明で理解出来たことは皆無であった。セヴランもリーナも、バーンズにキルも、一体何を言っているのかと眉をひそめる。


「今ので、何か分かったか?」


「……いや…………」


 バーンズとキルは互いに見合せ、そして首を横に振る。セヴランとリーナも話を理解しようと思考するが、それはあまりにも難解すぎるのだった………………。


 しかし、そこに唯一一人だけ、多少の理解を示す者がおり


「空間の反転……そんなの、一体どれだけの魔力を……いえ、技術の方も恐ろしいわね…………」


 エメリィはソフィアの発言に驚愕、そして畏怖を見せて表情に影をおとす。だが、同時にため息を吐きつつ


「でも、今は急ぐべきよ。もし、また爆発が始まりだしたら、私の力だけで守りきれる自信はないわ」


 エメリィはソフィアの空間転移での移動に賛成の意思を見せ、そしてその理由も伝えた。それには、誰も反論などする余地もなく、全員の考えは整ったとセヴランは判断し


「そうだ、どうせ次の移動先だってバウル達がいるとは限らない、賭けだ。でも、今は賭けだとしても移動する必要があるからな…………ソフィア、転移を頼む!」


 セヴランはソフィアに力強く頼み、ようやく移動を決定づけれた。それにより、ソフィアは両の杖を手の内で回しつつ、魔法陣の展開された大地へと突き立て


「さぁ……その空間を私に越えさせて……」


 誰でもない、何かに向けてソフィアは語り掛け…………次の瞬間には、全員の意識はこの日二度目の空間転移の闇へと誘われた…………

どうも、作者の蒼月です。

遂に仲間の下へと移動を行ったセヴラン達(その先に本当にいるかは別ですが)。

次の回で、この章も終わりです。本当に、様々な説明を詰め込んだ回でしたので、戦闘もほぼなく作者的にはしんどかったです……まあ、これを書かないという選択肢はないので、自分の文章を見直すいい章ではありましたが。


次章に入ってからは戦闘が中心になると思われるので、物語を楽しく書いていきたいと思います。


では、次も読んで頂けると幸いです。

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