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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第七章~始まりの地へと収束する運命~
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第百七十五話~切り札の代償~

「英雄の……意思……」


 リーナは今一度理解するようにソフィアの言葉を復唱し、力抜けていたその手に力を取り戻す。へたり込んでいた腰を上げ、ようやく情緒不安定になっていた精神に落ち着きを取り戻す。

 リーナは立ち上がると目眩のような感覚を覚え少しふらつき、エメリィに支えられる形となる。


「スフィナ……英雄の意思……聞きたいことは沢山あるけど、まず聞きたいのは私のこの状態は……」


 リーナは頭を手で押さえつつ、自らがこうなった原因をソフィアへと聞く。少なくとも、こうなったのがソフィアでも想定外だったのは今の発言を信じるとして、その英雄の意思に当てられてこうなる理由を知りたかった。


「簡単に言うと、人の感情を少し共有したせいね」


「感情の共有?」


 微笑みが消え、いっそう真面目な表情になったソフィアは冷静に語る。話の内容だけで聞けばふざけているとも考えれるが、このソフィアの発言が嘘ではないとリーナは信じ、その続きを問う。


「……これは、貴方達全員に説明するわ。まず、スフィナと言うのはこの世界中に存在する力そのもの。全ての存在は、スフィナがあって初めて存在出来るの。それは、人間の命や、記憶なんていう概念そのものまでね」


「スフィナ……」


 語られるスフィナという存在。初めて聞くその名前に、リーナもバーンズもキルも、皆がどう反応していいかと黙り込む他なかった。ここまで、驚きの連続で慣れこそしたが、それと理解することは、また別の話なのだから。

 そして、次の説明をしようとソフィアが口を開ける際、その声よりも先に別の声が全員の耳に入った。


「英雄の記憶……竜の血を引く者……スフィナ……聞きたいことは山程あるな、ソフィアさん」


『――――!?』


 リーナ達でも、まして様子をただ眺めるディルムンクでもない。声がしたのは、足下であった。今の状況で、足下で声を出す人物……それは一人であり


「長い夢を見ていた気分だった…………だが、竜の血を引く者の意味、少しは理解分かった気がします」


 遂にセヴランが、目を覚ましたのであった。

 セヴランは目を覚ますなり即座に起き上がり、ソフィアへと向き直り会話をしようとした。だが、その会話が始まるより早く、リーナは涙目になりながらセヴランへと抱き付き


「セ、セヴランッ!」


「ってリーナ、いきなり抱き付かないでくれよ。てか、泣いちまってどしたんだ?」


 普段と様子の違うリーナに戸惑いを見せつつも、セヴランはリーナの頭を撫でて落ち着かせようとし


「ごめんなさいセヴラン、貴方だけをスフィナへ干渉させたつもりだったのだけれど、どうやらリーナさんもスフィナから感情が流れたみたいなの」


 ソフィアが状況を説明するが、他の面々は何を言っているのかと疑問符を浮かべる。だが、セヴランだけは成る程と頷き


「おそらく、過去の誰かの恐怖の感情が流れたんでしょう。暫くすれば、元に戻るかと」


「それなら良かったわ」


 セヴランの言葉に、安堵したようにソフィアは息を吐き、話の続きを始める。


「今言ったように、スフィナとはこの世界に満ちる力そのもの。分かりやすいものだったら、魔法の魔力もスフィナが形を成したものね。……そしてここからが重要なの。そのスフィナは常に廻り続け、人の中に存在する。だから、過去の英雄達の意思や記憶もその中にある。今回の二人の精神の揺らぎは、その他人の感情の影響を受けてのものね」


 二人の状態、そこに至った理由は全員が何となくだが把握し、ひとまずの安心感を得た。だが、ここまで来た理由を思い返し、バーンズの中には疑問が生まれ


「ソフィア殿、そしてディルムンク将軍、分からないことがあります。ここに我々が来ることを、貴方達は見越していた。ならば、そこには何か目的があった筈です。こうして、貴方達は我々に今後の道を示し、更にセヴランにはスフィナとやらで過去を見せた……これが、手紙にあった終焉に対する切り札とやらなのですか」


 バーンズの重い厚を感じさせる言葉に、セヴランとリーナは口を挟めずただ聞くしかなかった。

 そう、今まで特に気にしたことはなかったが、このフィオリスという小国が二大国に屈することなく耐えてきたのは、間違いなく少数精鋭の軍が持ちこたえてきたからであった。そんな軍の中心に存在すると聞く中央騎士団、その将軍だったのがバーンズだ。

 そんな国の英雄的存在が、表舞台から姿を消し、この特務部隊を設立させた。そんなことは、常識的に考えればあり得ないことだが、そこまでしてバーンズが得体の知れなかったソフィアの手紙を信じ、ここまで物事を裏で動かしてきた理由が何故なのか、それはセヴラン達の知るところではなかった。


「彼らが切り札になる……少なくとも、その可能性はあるわ」


 そんなソフィアの言葉は、力がない訳ではなかったが、それまでの確かな物言いとは違った。そしてそのソフィア発言に対し、バーンズはこれまでにない怒号で叫んだ。


「ふざけるなッ!これまで、貴方方の計画の為にどれだけの犠牲を出したと思っている!かも、などという不確定では駄目だ……彼らの死を、無駄には…………」


 バーンズの言葉には、怒りが込められていた。何故、バーンズが怒りを露にするのか、そこにどんな過去があったのか。

 そんなセヴランの疑問だったが、それの答えと一人の人物が立ち上がる。


「やはりバーンズ、お前は弱くなったのぉ……しかし、その背負う物がなければ、儂の二の舞なのもまた事実じゃ」


 バーンズに答えを向け、そして剣を抜いたのはディルムンクであった…………。

どうも、作者の蒼月です。

さてさて、そろそろ話が進むかと思ったらこれだよ!いや、いい加減進めますよ……

どうしてこう、余計な横路にそれてしまうのか。バーンズの話に関しては、おそらく今はしないと思います……(これ以上ここで話を続けても仕方ないですからね)

どうやったら、プロットとはできるのでしょうか(他の作者の方々はやはり凄いと思います)


では、次も読んで頂けると幸いです。

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