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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第一章~模擬戦~
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第四話 ~入隊~

 フィオリス軍訓練兵舎。それは、フィオリス国南方、王都付近の山の麓に木々に囲まれるように建てられている。外見こそ石造りであるが、亀裂や罅などの修繕を繰り返している古い建築物で、市街地から離れていることから普段は物静かな場所である。

 そんな普段は人影のない建物の前に、この日はいくらかの若者が集まっている。剣や弓を担ぎ鎧を纏っており、戦闘姿の者ばかりだ。皆、この日軍に入隊するために戦う技術を磨いてきたもの達だ。

 その入隊希望者の集団の中に


「思ったより多いんだな、今期は……」


 かつて家族を奪われ、力を求めたセヴランの姿がそこにはあった。



 兵舎の一室にセヴランを含めた入隊希望者は全員集められた。上官であろう人物に部屋に案内され待機を命じられた。

 部屋は入り口側が教官の立つ台になっており、向かい合って机が横二列ならび、各机に椅子が二つずつという構成。部屋ではすでにいくつかのグループに分かれていた。皆、同じ地方の生まれや仲間などで様々なグループがあるがそんな中、セヴランは孤立していた。普通ならば村などから集団で入隊するものだが、知り合いもおらず一人というのは珍しく、セヴランは少しばかり注目されていた


 ……あんまし注目はされたくないんだがなぁ


 セヴランはあまり気にすることなく、周りも深くは関わる事なくちょっとした興味がある程度の雰囲気だった。

 待機を命じられてからすることもなく、徐々に緊張がとけ部屋がざわつき始めていたが


 ……ギイィィィィ……


 それまで話をしていた者も全員だまり、部屋の雰囲気が変わる。先程までの明るさはどこにもなく、扉へと注意が向けられる。

 音を出した入ってきた男は


「なんだ、やけに真面目な奴が多いな。もう少し楽にしても構わんぞ」


 どこか懐かしさを感じるような優しい笑みを浮かべた中年ほどの男、実の親のような笑顔に普通ならば気を緩めるのかもしれない。しかし、身に着けている鎧の数々の傷を見れば彼が歴戦の猛者であることが分かり、部屋にいた者は誰も緊張をとけずにいた。


「まず自己紹介だが、私はレギブス方面国境守備隊隊長カーリー・ローダスだ、以後よろしく頼む」


 僅かにざわつき始めるなか、セヴランは眉をひそめ


 ……なぜ方面部隊の隊長がこんなところに。新兵の教導には専門の教導官がいるはず、わざわざ新兵を鍛えに部隊を離れるとは考えにくい、この状況は何かあると考えておくべきか……


 セヴランの予想は的中し、カーリーから先程までの笑みが消え


「ここにいるものは皆、今日の入隊のために修行を積んできており、実力がある者たちで間違いはないな?」


 少し低く通る声での質問に全員は堂々と構え、カーリーへの答えとしては最適なものになった。


「よし、なら話は早い、すでに分かっているとは思うがレギブスとパラメキルはすでに開戦目前まで迫っている、その圧力は我フィオリスにも及び既に小規模な戦闘は繰り返されており、我々は早急に戦力を強化する必要がある」


 カーリーの言葉は誰もが理解できた、セヴランのように国境での小競り合いで家族を奪われた者も少なくなく、この時のために力を着けてきた者達も少なかれいた。しかし、カーリーの次の言葉は誰も想像出来なかった


「そこで君たちには、現在戦力が不足しているレギブス方面の戦力補強として遊撃を編成、守備隊に加わってもらう」


 誰も状況を理解出来なかった、訓練も受けずまだ十六や十七の子供の集まりに部隊を組むなどというのはどだい無理な話だ。誰しもがそう思い一人が手を挙げ


「カーリー教官どの!さすがに私達のような素人に守備隊は務まらないと思われます、まして今日顔を合わせた集まりなんですよ」


 皆同じことを思っているのだろう、彼と同じ意見と言わんばかりに同調する声が上がる。カーリーもそれは想定していたのだろう


「心配しなくていい、遊撃といっても君達の仕事は前衛部隊の後方で待機、前衛が交代する間の代わりや救護活動が主な仕事だ、そう心配しなくても問題ない」


 カーリーの言葉に全員が黙りこむ、もとより上官の意見に反対する権利などは誰も持っていない、命令されたら従うしかないのが軍隊だ。


 沈黙の中セヴランはおかれている状況を思考する。


 ……上官がいる場合の遊撃ならば、指示に従うだけで済むから練度の問題はある程度無視できる。更に前衛の先輩を見ることで学べることも多く新兵の教育も解決できるか……


 効率よく戦力補強と教育を行えるためいきなりの前線も納得ができる。訓練期間の省略は他の国でも行われていることだ。


 ……だが気がかりなのは、隊長はまだ我々の実力を量れていない。これらはすべて我々の実力がある程度あるのが前提、ならここで聞いておくべきか……。


 セヴランは静かに右手を上げ


「カーリー隊長、隊長はまだ私達の実力は量れてないと思うのですが、実力も分からずに部隊編成は無理でしょう、どうするのですか?」


 セヴランの質問にカーリーは感心した。


 ……普通、この状況なら前線にいくのを喜ぶか恐れるかで分かれるものだが、こいつはこの後の流れも分かっているな。単に感情で考えず先を見通すところは評価できるか……


 カーリーは己の中で評価をまとめ


「それに関しては、これより私と部下二人を相手に模擬戦で量るつもりだ、模擬戦とはいえ殺す気で挑んでもらいたい」


 そしてまた、ざわつきが広がる。手加減をされたとしても実力差がありすぎる相手に本気を出しても勝てる要素はない。それに殺す気で挑めと言われて戦いの素人が簡単にできるものでもない。

 不安が広まるところにカーリーはさらに不安要素を追加し


「束になって来ようが、個人で挑もうが自由だ、思う存分戦ってほしい、それではこの後広場に集まれ、集まりしだい始めたいと思っている、以上解散!」


 こうして入隊初の戦いである、隊長との模擬戦が決まったのであった。

どうも、作者の蒼月です。

やっと主人公がまともに出てきました。まだまだ主要なメンバーは出てきてないのでこれからですね。(※主要なメンバーはまだまだ出ません)

次はラノベものでよくある決闘みたいな流れですね、私は戦闘描写を書きたくて書くことになったわけですので次の回は特に頑張りたいですね。

次も読んでいただけると嬉しいです。

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