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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第七章~始まりの地へと収束する運命~
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第百七十二話~スフィナの欠片~

 いかに殺気を向けられようと、微動だにすることのないディルムンク。同様も見せず、その胸中を推し量ることは出来ない。キルは刃を僅かに抜きつつ、実力行使をしてでも話を聞き出そうとしているのが伝わる。セヴラン達も流石に、本当にキルが刃を向けそうだと徐々に焦りが募るが、それでもなおディルムンクは口を開けない。一体、何をそこまで隠す必要があるのが分からない。ただ、可能ならば戦うことは避けてほしいと願い、セヴランは心の中で師匠へと叫び


 ……師匠、お願いです、何か知っているのなら隠さないで下さいッ!


 募った焦りが、想いが伝わったのか、ようやく状況に変化が訪れた。

 だが、口を開いたのはディルムンクではなく、意外なソフィアの方であった。


「キル、と呼ばさせて貰って構わないかしら?」


「…………?」


 言葉を求めていたディルムンクではなく、ソフィアから言葉を掛けられたことにキルは驚き、一瞬の間をつくりつつも頷いてソフィアが言葉を続ける。


「まず勘違いしないで貰いたいのが、貴方の名前を彼――ディルムンクが知っているのは、私が教えたからよ。彼はあの組織については殆ど知らないわ」


「ッ!?――――お前、あの組織について知っているのかッ!」


 ソフィアはディルムンクが何も知らないと告げ、キルが怒りをぶつける矛先が違うと述べる。だが、それと同時にソフィアは何かを知っているという口振りで、ソフィアが望んだようにその矛先は向けられた。キルはそれまで耐えていた刃を抜き、今にも飛び掛かりそうな勢いで食いかかる。

 セヴラン達は常にキルを押さえることが出来るよう心の準備だけは行い、動ける体勢で構えていた。だが、そんな心配が無用だったかのように思える程、ソフィアは冷静に対応し


「確かに知ってはいるわ……けれど、それはあくまで貴方が知っていることだけよ。信じて貰えるかは分からないけれど」


 ソフィアはただ静かに、諭すようにキルに教える。キルはそんなの信じれるかと反発するが、ただ、それが単なる嘘には思えなかった。言葉に嘘は感じられない。

 キルは自身の勘が間違っているとは思えず、ソフィアの言葉にただ困惑する。自身の勘が正しいなら、目の前のソフィアの言葉から感じる感覚が何なのか。その疑問はキルの中で反響し


「……ならば、お前は何故知っている……何故、俺の知っていることを知れた……」


「……記憶が流れてくる。人の想いが、スフィナを通して伝わってくるの。貴方の記憶も、それで知っただけ……ただ、この事はおそらく理解はしてもらえないでしょうね。多分、この中じゃあセヴランしか感じたことはないでしょうから」


「………………?」




 ソフィアはどうしてキルの事を知っているのか、それについてを確かに答えた。だが、その言葉には意味の分からないことが幾つも散りばめられていた。しかも、それを理解出来るのはセヴランだけだと、唐突に話をセヴランにまで向けてきた。自然とセヴランに周囲の視線が集まり、状況が呑み込めずセヴランは唸り


 ……もう、このソフィアとかいう奴は謎が多すぎる。なんだよ、記憶が流れてくるって、スフィナ?訳が分からん……しかも、俺なら理解出来るって、それこそ理解出来ないんだが。


 セヴランには、ソフィアが言うような記憶が流れるなどという摩訶不思議な現象に心当たりはない。もし、人の記憶が流れてくるのであれば、少なくとも今、ソフィアがどういう人物なのかを知りたいぐらいである。だが、そんなことはあり得ず、セヴランは苦笑しながらソフィアに対し首を振り


「あの、ソフィアさん……流石に、からかうのは止して頂きたい。いくら貴方が師匠の知り合いで、計り知れない魔法の技術を持っている人物といえど、そこまで馬鹿にされるのは気分が良くはないです」


 セヴランは、目上の人間のおふざけを止める程度の感覚で、ソフィアに否定の言葉を送る。

 しかし、ソフィアは残念そうに俯き、そして小声で何かを呟くと杖を回してセヴランに掲げ


「……分かってる、でも仕方ないわ。もう猶予もない、少し強引でも見せるわ」


 ソフィアは誰かと話すように、虚空へ語り掛ける。その場にいる誰でもなく、見えない何かに向かって。そんな光景は、セヴラン達を警戒さすには充分であり、次は何をされるかと武器を構えようとするが


「安心しなさい、危険なことではないわ。ただ、ちょっとだけ夢を見てもらうだけよ」


 その瞬間、洞窟内の色とりどりに輝いていた結晶は青白く輝き始め、更には、セヴランは周囲に光の流れのようなものを見た


「ソフィアさん、これは一体――――ッ!?」


「心配しないで、悪いようにはしないから…………」


 ソフィアはどこか遠くを見るような瞳で、セヴランの瞳を見ていた。だが、それはセヴランとは視線が合わない。まるで、セヴランの瞳の奥を覗くかのように、これまたセヴランではない何かを見ていたのだった。

 セヴランの視界はあっという間にぼやけていき、周囲の音も聞こえずらくなっていた。


「――セヴ――ぇ、しっか――――てよ!」


「――い、セ――ン、いし――――もたん――」


「――っと、おき――――むった――よ――」


「――――い、ば――ろう――こんなと――――」


 辺りがどうなっているのか、それはもうセヴランには感じ取れなかった。白い光に視界が溶けていき、音も途切れ途切れに響くのみ。だが、不安はなかった。まるで母に抱かれるかのような安心を覚え、セヴランの意識は落ちてゆく。

 白き視界はやがて闇に飲まれ、セヴランの意識はこの世界から切り離された…………。

どうも、作者の蒼月です。

ここで話が進むとかほざいてた、無能作者です。いやまあ、進んではいるんですよ?スフィナとかね。

まあ、次の回で相当前に出していた伏線(とは呼べない代物)も回収できますし、ここからセヴランはどんどん変化していきそうです。

そろそろ、戦闘パートに帰りたいです…………


では、次も読んで頂けると幸いです。

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